リリの消失
「あーあ、結局手掛かりはゼロかぁ…」
ミオはそう言うと、机に突っ伏して大きなため息をついた。
目の前には、冷めた料理たちが並んでいる。
「あんなに走り回ったのに、食欲わかないことって、あるんだね。」
颯真はさっきから、箸でつかんでは皿に戻すを繰り返している。
リリはというと、奥の部屋ですーすー寝息を立てている。
「けどさ、リリちゃんは見たんだろ?失踪する前のお父さんを。それは十分な手がかりじゃないか?」
「でも、今は何とも言えないよ…」
「そ、そうだけど…」
そこで、会話は途切れてしまった。
颯真は、冷めたスープを黙って一気に飲み干す。
「そろそろ、寝る?」
「寝るか。」
俺たちは机を動かし、寝る準備を開始した。
「ミオ、布団の場所わかるか?」
「うん、あの押し入れの中…」
すると、
「に、兄ちゃん!」
「ん?」
「リリちゃんが、いない!」
俺ははっと部屋の奥を見た。
布団はまくり上げられており、もぬけの殻だ。
「つい数分前には、いたぞ!」
「まだ近くにいるはず!」
「外、見てくる!」
俺は慌ててスニーカーを履くと、家を飛び出した。
しかし、辺りは森林。俺は自分の力を信じて、周りを見渡した。
すると、辺りの木たちがみるみる透き通っていく。
透視だ。
俺はその中から小さな人影を見つけ出した。
「リリ!」
俺は走った。そして、
「裕、さん?」
ぽけーっとした顔の、リリを見つけた。
「リリ、ここで何してたんだ?」
「あ、あれ?私、いったい何を…」
リリは首を傾げた。どうやら寝ぼけて、ここまで来たらしい。
俺はふと、リリの手元に目がいった。
紫色の布切れが、握りしめられている。
「リリ、それは?」
「え?」
リリは自分の手を見て、驚いたように目を大きく見開く。
「それ、とりあえず見せて。」
「は、はい。」
リリに手渡された布切れを、俺はまじまじと見つめた。
どこか怪しげな色。これ、どこかで…
「兄ちゃん!」
声がしてはっと上を向くと、颯真が木から飛び降りてきた。
「もう、勝手に行くなよ。二人して迷子になったら困る。」
「ごめんごめん。」
「?兄ちゃん、それは?」
颯真もこの布切れに興味を示したようだ。右手を広げ、貸せと無言で訴えてくる。
「ほい。」
「ありがと。……!!」
「なにか、知ってるのか?」
「これ、捕まった時に引きちぎった、あの男の服のすそだよ!」
「なんだって!?」
俺は颯真から布を返してもらうと、それに集中した。
「…サイコメトリーか。」
「あたり。」
俺はそっと手をかざす。
すると、俺の目の前に不思議な景色が飛び込んできた。
大きな屋敷、大量の紫の目の人間、地下牢に閉じ込められている魔法使いたち…。
「これは…」
俺は颯真とリリに向き直った。
「ありがとう。颯真、リリ。」
「え?」
「二人のおかげで、あの男のアジトが分かったかもしれない。」