魔法界へ
一週間後。
「来ねえ・・・。」
宮田公園のベンチで、俺は溜息をついていた。
俺は、受験勉強の合間を縫って、ここに来ている。なのに、呼んだ本人が遅刻するなんて。
それにしても、どうして待ち合わせ場所が宮田公園なんだ?空き地になる寸前の古い場所なのに。
すると入口の方に、二つの人影が見えた。やっと来たか。
「ごっめーん!」
「ごめんって、お前・・・。」
俺はなにか文句を言おうとしたが、後ろの奴を見て固まった。
こいつはきっとミオの言っていたもう一人なんだが・・・。
相手も俺に気づいたらしく、目を丸くした。
そして、二人同時に叫んだ。
「颯真!?」
「兄ちゃん!?」
そこにいたのは、俺の弟、颯真だったのだ。
「…ミオ。どういう事なのか、説明しろ。」
「どういう事って。もしかして知らないの?颯真くんが忍者だってこと」
「はあ!?」
そんなの初耳だぞ!?
「颯真。今の、本当か?」
「本当。幼稚園から、ずっと」
「ええ・・・。」
俺は頭を抱えた。そもそも、忍者っているんだ、今の世の中。
「じゃあ逆に聞くけど、なんで兄ちゃんここにいるの?」
「ミオ、よろしく。」
「実はお兄ちゃん、超能力者なの!」
「はあ!?兄ちゃん、今の本当?」
俺と全く同じリアクションで、尋ねてくる。
「うん、本当。」
「聞いてないよ!」
「言ってないからな。」
「まあまあ。お互いの正体を知ったところで、本題に入りましょー。」
「はいはい。」
俺は素直にミオの方を向いた。
「では説明。今から私がここに、魔法界への入口を開きます。人気のない場所を選んだのは、これが理由ね。で、そこに5秒以内に飛び込むの。シンプルでしょ?」
「まあ、ね。」
「ねえ澪さん。5秒を切ったらどうなるの?」
「人間界に置いてかれる。でも5秒は長いよ、想像以上に」
「なら、大丈夫かな。」
「覚悟はできた?でき次第行くよ。」
ミオは俺と颯真を交互に見た。
「いい?颯真」
「いいよ、兄ちゃん。」
「OK、ばっちり!」
ミオはそう言うと、砂場に木の棒で何か書き始めた。
これは、紋章?鳥が向き合ったようなマークだ。
書き終わると、ミオはその上に立った。
両手を天上に突き上げ、その後目の前で勢い良く合わせた。
「Two birds. Fly to my origin, and come. Open the way of light.」
流暢な英語を唱えたかと思うと、ミオの周りがまばゆく光った。
その時、ミオの前に大きな光る扉が現れた。
「なにぼーっとしてるの?早く!」
「あ、はいっ!」
最初に颯真が飛び込んだ。
ミオが続く。
「裕くん、ほら!」
「あっ」
差し伸べてくれたミオの手をとり、俺も扉にダイブした。