魔女が訪ねてきた
・・・ピーンポーン・・・
チャイムがなった。お客だ。
俺、成田裕也は正直、今は誰であろうと訪ねてきてほしくない。こっちは大学の受験勉強で手一杯なんだ。
かといって無視する訳にはいかないから、俺は渋々立ち上がった。
「はい。」
『あ、裕くん?私。あなたの幼馴染、一ノ瀬澪』
ちぇ、なんでよりによってこいつがこのタイミングで。
「なんで来たんだ。今の時期は…」
『分かってる。でも、やむを得ず来たの。頼むから開けて。』
「はあ?」ミオは何を言っているんだ?
『ねえ、お願い。話はすぐ終わるから』
「話は?」
『あっ。と、とりあえず大事な話なの!』
「はあーっ、はいはい。」
俺は玄関の扉を開けた。そこには懐かしい女の姿があった。
「やっほ、久しぶりい。」
「…お前、見た目全く変わってないな。年だけ取った?」
「なっ、開口一番それ?」
ミオは頬を膨らませた。童顔のせいか、その姿はもはや少女だ。
「ま、とにかく用件をどうぞ。」
「あ、そうだったね。じゃあ言うよ。実は・・・」
ミオは俺に顔をグイっと近づけ、言った。
「私、魔法使い一家の娘なの。」
「・・・?」
不意打ち。俺は一瞬混乱状態に陥った。マホー使い?ミオが、魔法使い?
「あれ、あっさり信じてくれるんだね。」
「ま、まあ。自分の立場上、ありえなくはないし。」
「そっか。裕くん、超能力者だったね。」
そうだ。俺は別に血を引いているとかではないのに、何故か超能力が使える。
多分知っているのは、自身とミオだけだろう。家族には言ってないし。
「で、それがどうした?」
「その件で、助けてほしいの。」
「助ける?」
俺は自分でもわからない何かを悟った。
「まあ、入って。ちょっとなら聞いてやるから。」
「え、いいの?」
「気分転換にはもってこい。」
「やたっ」
俺はミオを部屋に招き、リビングの机に座らせた。
「じゃ、聞かせて。手短にお願い。」
「りょーかいです。えーと、私の家族は今、魔法界ってとこに住んでるの。私が一人暮らし始めるまでは、人間界に住んでたんだけど。見たことあるでしょ?」
「うん。」
「今、その家族全員と連絡がとれない状態なの。」
「え、どうして。」
「それがね、わからんのよ。」
「・・・。」
「は、話はまだ終わってないよ。でね、私おかしいなーって思って、訪ねてみたの、魔法界。」
「で?」
「そしたら家にだーれも居ないの。もぬけの殻ってヤツ。辺りを探したんだけどね、見つからない。
そこでお願いなんだけど、私の家族を一緒に探してくれない?」
「お前の家族、かあ・・・。」
俺は少し迷った。受験勉強は、大事だ。しかし、ミオの家族には世話になってるし。
「ねえ、裕くんお願い。お礼ならする。」
「・・・受験落ちたら、お前の責任だからな。」
「え、マジ!?いいの?」
「頼んだのお前だろ。」
「やったー!」
ミオは飛び跳ねて喜んだ。
「たださ、ミオ。それ、俺じゃなくてもできるんじゃない?魔法界の人とか。」
「それが無理なの。私育ちは人間界だから、顔見知りがいなくて。」
「なるほど。」
「でもね。もし断られた時の為に、もう一人頼んでおいたの。」
「じゃあ、そいつでいいんじゃないの?」
「まあ、いいじゃない。三人寄れば文殊の知恵って言うし。」
「うーん、なんかうまく誤魔化された気がする。」
「まあまあ。じゃあ、一週間後の昼過ぎに、宮田公園集合。OK?」
「わかったよ・・・。」
俺は渋々、頷いた。