プロローグ
プロローグ
午前六時 リビング
「ニュースをお伝えします。 明け方に病院の駐車場で発見された女性は、意識不明の重体で未だに……」
テレビの朝のニュース番組を見ながら、俺は朝食を食べていた。
メニューはご飯に味噌汁、目玉焼き、納豆と昨日の残りの煮物。
いつもと代わり映えしないが朝にはちょうどいい。
「ごちそうさまでした」
誰もいない部屋で俺の声だけが響いた。
アパートでの一人暮らしをして一ヶ月だいぶ暮らしに慣れてきた。
霧丘幸太 十八歳
日本生まれ。
中学卒業までは日本で過し、高校はアメリカへ留学。
そして日本に帰国して今日から大学生。
そう夢にまで見た薔薇色のキャンパスライフの始まりの日。
長くて苦しい受験生活を乗り越えて、見事に難関大学に合格した俺へのご褒美タイムと言っても過言じゃない。
新たな出会いで新たな友人を、そこから芽生える恋の花。
まさに青春、ハレルヤキャンパスライフ!
もちろん、勉学もおろそかにするつもりはない。
俺の夢のためにも首席卒業が目標だからな。
それでも帰国子女の秀才ってだけで目立つから、きっと俺のことをみんなほっとかないだろう。
休憩時間に質問しに来る女の子達、俺の席の周りを取り合う女の子達、サークルでは仲良くなった女の子と休日のデートの約束とかしてみちゃったり。
考えれば考えるほど素晴らしい妄想は広がっていく。
ニヤけた顔のままで洗い物と着替えを済ませ、玄関の扉の横にある姿見で最終チェックをした。
髪型良し。
身だしなみ良し。
持ち物は持った。
ガスの元栓も閉めた。
「よし、行ってきます」
先程のニヤけた顔は何処へやら、真面目な顔が姿見に映る。
気合を入れるかのように大声で言うと幸太は玄関の扉を開けた。