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2変わらない貴方も好き
短編で書いていたものを纏めました。
数字は時系列順です。
彼が死んでしまった。
眠るように死んでしまった。
病室のベッドに横たわる冷たい身体。
つい、魔が刺して連れ帰ってしまった。
大きめの服を着せ、車椅子に乗せて入り口から。
声を掛けても、彼は返事をしてくれない。
身体に触れても、目を覚ますことは無い。
髪は、編み込んで御守りに。
内臓は、ホルマリン漬けで瓶の中へ。
骨は、コーティングして標本に。
こそぎ落とした肉は、灰にして御守りの中身に。
皮は、鞣なめしてからクッションに。
お気に入りの服を着せ、
お気に入りの香水をかけてソファに座らせる。
貴方が私の横に座っている。
貴方が私の目の前にいる。
貴方が私の胸元にいる。
貴方が私の前に立っている。
貴方が私を見守ってくれている。
魂の無い、空っぽの身体だけれど
貴方の匂いがして、貴方の重みがあって、貴方に触れられる。
それだけで良い。
冷たい身体を温めて、自分一人ではないとため息を吐く。
私は幸せなんだよ。
ただ、貴方が側に居てくれてさえいれば。
それだけで、私は幸せ。