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Loyal Tomboy  作者: EN
第五話「平行線の彼方に」
91/245

05-10:○ブリーフィングルーム#2[1]

<トゥアム共和国陸軍 首都ランベルク基地 B3-C-302>


作戦名「パレ・ロワイヤル攻略作戦」


我が共和国軍と帝国軍の戦線が膠着こうちゃく状態に入ってから約2週間が経つ。


依然、帝国軍の支配下にあるリトバリエジ都市だが、帝国軍の厳しい監視下に置かれていると言う事もあり、現在のところ大きな混乱は発生していないとの事だ。


しかし、トゥアム共和国最大の経済都市にまで発展を遂げたリトバリエジ都市は、今や東スロベーヌ地方全体の経済流通を担う重要拠点であり、このまま同都市を帝国の手に委ねて置くことは、トゥアム共和国の国益を損なうだけでなく、東スロベーヌ地方全体の経済に大きな打撃を与えかねない、非常に逼迫ひっぱくした状況が差し迫っていると言える。


そのため、リトバリエジ都市の早期奪還を望む声は、国内外を問わず日に日に強さを増してきており、これまで同都市内の巨大な工業地域や都市中心部を含め、取り残された一般市民達が数多く暮らすコロニー群に配慮した形で、首都ランベルクを防衛する事のみに注力してきた軍上層部だが、今回新たに帝国軍の動きに先んじて攻勢に転じる事を決定した。



現在、リトバリエジ都市に駐留している帝国軍の総兵力は、スーノースーシ川対岸に陣取る重戦車部隊が2個連隊と中距離支援砲撃部隊が2個大隊、そして、同都市周域に展開する地対空車両が2個大隊と大部隊であるが、今まさに、我々にとって最も大きな脅威となりえるのが、帝国軍の航空部隊である。


リトバリエジ都市失陥時にネミッサ空港を完全に破壊する事で、今のところその脅威を軽減する事に成功してはいるものの、同都市内の高規格幹線道路の多くは、航空機の離発着を想定して建設されており、帝国軍の補給物資輸送用に利用されているのが現状だ。


しかも現在、帝国軍は長い直線ラインを形成するR03-22とR05-13付近で、大型輸送機や戦闘航空機の離発着を可能とする為の補強工事に着手しており、この簡易滑走路が完成する事になれば、ランベルク地方における航空優勢度が、局所的なものに限定されてしまう恐れがある。


そのため、リトバリエジ都市が完全に帝国軍の駐留基地として機能する前に、これを殲滅する事が最重要目標となる訳だが、同都市近辺での戦闘は極力避けたいという共和国政府の強い要望から、今回全く違った視点からの作戦目標を設定するに至った。


それが「オクラホマ攻略作戦」である。



諸君等も知っての通り、帝国トポリ領南東部に位置する大都市「オクラホマ」は、帝国軍東方戦線における重要な補給物資輸送中継点としての役割を担っており、その防衛部隊の総数もリトバリエジ駐留軍を遥かに上回っている。


保有する航空兵器も戦闘機だけで100機を越えると見られ、都市周辺部に設置された対空高射砲要塞の威力も驚異的だ。


これは1都市を防衛するための兵力としては、余りに過剰な軍事力であり、まさに最強の対空防御力を備えた強固な軍事都市であると言えるが、それだけ帝国軍にとって、東方戦線における重要な動脈部を担う都市である事は間違いない。


言い変えれば、このオクラホマ軍事基地さえ攻略してしまえば、トゥアム共和国内に侵攻する帝国軍の脅威を、著しく減衰させることが出来るだろう。


現在、ランベルク地方に飛来する帝国軍航空部隊のほとんどは、このオクラホマ軍事空港を経由しているものと見られ、我が軍がリトバリエジ都市への帝国軍物資輸送経路を、完全に断ち切る事が出来ないのもそのためだ。


リトバリエジ都市付近での戦闘を制限されている我が軍にとって、同都市に駐留する帝国軍に効果的な打撃を与えるためには、この物資補給路を断ち切った上で孤立させる以外に有効な手立てが無い事も事実である。


我が軍がランベルク地方において、絶対的航空優先権を獲得する為には、避けて通る事が出来ない軍事基地なのだ。


勿論、ランベルク地方西部レイナート山脈を越えたふもと付近に位置しているとは言え、この軍事基地を攻略する事は決して容易な事ではない。


大量の航空兵器を投入しての直線的侵攻によって降下作戦を展開したところで、オクラホマ軍事基地の圧倒的対空防御の前に激しい消耗戦におちいる事は、火を見るより明らかな事である。


しかも、陸路を辿った侵攻ルートに至っては、ディップ・メイサ渓谷が完全に帝国軍の勢力下に置かれているために、レイナート山脈を北方か南方に大きく迂回せざるを得えない。


オクラホマ軍事基地攻略という最終目標を見据えた場合、陸路ルートを選ばざるを得ないのが現状だが、如何に地上からの対空攻撃性能が飛躍的に進歩したからと言え、今だ戦線の優位性を左右するのは航空兵力である事に変わりは無く、帝国軍の航空兵器の目を如何にあざむくかが、勝敗の行方を左右すると言っても過言ではないだろう。



このような状況下において、何の対策も無しに大規模な地上部隊を派兵するなど、まさに愚劣な自殺行為のようにも思えるが、今回、諜報部が新たに入手した情報によれば、数日以内にこのオクラホマ都市で、大規模な武装決起が勃発ぼっぱつする可能性が極めて高いとの事だ。


この情報に関して、まだ詳しい内容までは明らかにされていないのだが、それなりに信憑性しんぴょうせいの高い情報である確証が得られているようで、この混乱に乗じて諜報部の工作員がオクラホマ軍事空港へと潜入し、警戒索敵レーダー機能や航空機管制システムへの破壊工作を敢行する手はずとなっている。


外部からの攻撃に対しては強固な対空防衛能力を誇るオクラホマ軍事基地だが、内部からこれを無力化してやる事で、同地域における我が軍の不利的状況を打開しようという作戦だ。


しかし、如何にオクラホマ都市内部の警戒警備体制が、他の都市と同レベル程度のものだとしても、この破壊工作任務は非常に成功確立の低い困難な任務である事に変わりは無く、その任務成功如何に依存しきる様な作戦を立てることは出来ない。


そこで、今回のオクラホマ攻略作戦は、航空兵器能力が最も低下する、夜間を狙って発動される事となった。



作戦の発動時期については今だ未定であり、オクラホマ武装決起軍の動向によって、作戦プラン自体が大幅に見直される可能性もあるのだが、我が軍の主力部隊は、オクラホマ軍事基地への侵攻ルートを南方迂回路一つに定め、共和国南西部の「サルフマルティア基地」に集結する予定だ。


このオクラホマ攻略軍主力部隊の総兵力を大まかに説明すると、高速戦車で編成された先行部隊が2個連隊。軍事基地制圧部隊が2個連隊。戦闘ヘリ部隊が2個中隊。そして、共和国空軍の夜間戦闘飛行隊4個飛行中隊となっているが、それでもオクラホマ軍事基地に駐留する帝国軍地上部隊の兵力をしのぐ数なのかと言えばそうではない。


今回、主力部隊をこの兵力数に抑えるに至ったのは、肥大化した軍団の中で細かに指揮統制が取れなくなることを避ける為であり、それだけ不確定要素の強い情報の揺れ動きに対して、迅速な対応を求められると言う事だ。


勿論、後続となる追加兵員については、逐次戦線に投入する事を計画しているが、如何にオクラホマ軍事空港への破壊工作が成功したとしても、この強固な帝国軍陸上部隊を殲滅せんめつする事は決して容易な事ではないだろう。


そこで今回、オクラホマ攻略作戦に先立ち、帝国軍兵力を少しでも北方へと引き付けるために、カルッツァ地方に対して大規模な陽動作戦を展開する事を決定した。


この陽動作戦に参加する兵員は、ムルア岬海軍基地に停泊中の共和国艦隊を含め、オクラホマ攻略軍主力部隊に勝るほど大規模なものとなるが、まさに今回のオクラホマ攻略作戦は、トゥアム共和国の今後を左右する重要な一戦となるだけに、軍上層部も出し惜しみなどするつもりも無いようだ。



さて、以上がオクラホマ攻略作戦の全体概要となるのだが、この作戦を成功させるための重要なポイントは、如何に我が軍の主力部隊を無傷でオクラホマ軍事都市まで到達させる事が出来るかである。


サルフマルティア基地からのレイナート山脈迂回コースとなると、必然的に主力部隊はRN-319を北上する事になるが、侵攻ルート上ナルタリア湖付近には、帝国軍の秘密基地「パレ・ロワイヤルミサイル基地」が存在していると言われている。


このパレ・ロワイヤルミサイル基地は、その存在こそ明らかにされてはいるものの、グリーンクラッド作戦によって形成された濃密な樹海内に存在しており、詳しい位置を特定するまでに至っていない。


恐らく中距離弾道ミサイル発射台を複数保有していると見られ、この基地に対して何ら対策を取らないまま主力部隊を北上させるのは、非常に危険な事であると言うのが軍上層部の見解だ。


そこで今回、我々ネニファイン部隊に下された指令が、このパレ・ロワイヤルミサイル基地を攻略する事である。


セレナ山、カノンズル山の谷間に当たるこの地域は、車両兵器の投入が困難なほど険しい山岳地帯に加え、多数のフィールド防壁の存在が確認されており、恐らくは森林戦、山岳戦に有効なタイプのDQ部隊が多数配備されていると予想される。


我々ネニファイン部隊のようなDQ専門部隊に取っては、まさに打って付けの作戦任務となるのだが、それでも守備軍が圧倒的に有利とされる高濃度フィールド下での戦闘を余儀なくされる可能性が高いため、諸君等もそのつもりで気を引き締めて作戦に望んで欲しい。



パレ・ロワイヤル攻略作戦の目的は、オクラホマ攻略軍主力部隊に脅威きょういを成す、ミサイル発射台を全て破壊する事にあるのだが、このミサイル発射台は地中への稼動格納式である事が予想される上、今後諜報部から得られる詳細情報についても、何処まで正確な情報をなのか不確定要素が強い。


そこで今回のパレ・ロワイヤル攻略作戦は、ミサイル発射台の破壊を第一目標に据え置きながらも、同基地を完全に制圧する事を最終目標に定める事となった。


勿論、ミサイル発射台は発見次第即破壊する事を義務付けるが、特に保有火器による破壊が困難な場合、後方支援部隊リプトンサムへの支援砲撃要請を小隊長権限で許可する。


パレ・ロワイヤルミサイル基地の制圧には、第七機械化歩兵部隊の投入が予定されており、出来る限り早い段階において、この基地周辺部の帝国軍防衛守備隊を殲滅せんめつする事が、我々ネニファイン部隊に課せられる任務となるのだが、今回このパレ・ロワイヤル攻略作戦においては、隣国であるリバルザイナ共和国軍の夜間航空支援が受けられる事になっている。


この航空部隊は、主に同地域の制空権を確保する事を目的とした兵員であるが、高い対地攻撃能力をも有しており、適宜てきぎ戦況にあわせて柔軟に対応してくれるようだ。


ただし、言うまでも無くこの航空部隊はあくまで他国の兵力であり、当作戦における多大な責務を負わせる事は出来ない。


そのため、この航空部隊に対する要請の全ては一旦ネニファイン司令部を通して判断する事とする。


以上が、我々ネニファイン部隊に与えられた任務の概要である。



次に我がネニファイン部隊の編成を説明する。


<配布資料一部内容>


<Nyifine order>


No.1 attacker L-front [fror]

 a Johadal-moze (twmalc)

 b Frol-croche (twmalc)

 c Senif-sonro (twmalc)


No.2 attacker L-center [glant]

 a Bernce-Schumacher (twmalc)

 b Sodom-spirits (twmalc)

 c Show-imura (twmalc)


No.3 attacker R-center [apach]

 a Mediace-elzac (twmalc)

 b Agri-short (twmalc)

 c Balbarock-do-ly (twmalc)


No.4 attacker R-front [carion]

 a Marce-chereas (twmalc)

 b Beltran-gustria (twmalc)

 c Urara-akui (twmalc)



今回の作戦に参加するメンバーは、配布した資料に記載した通りだが、現時点の作戦詳細プラン3種類全てを網羅する編成とした。


使用する機体については高機動軽量型のトゥマルクを使用する事とし、1小隊3機編成4個小隊を投入する予定だ。


装備火器については、ミサイル発射台の破壊する事を想定して、各小隊毎に必ず高威力キャノン系兵器、またはグレネードランチャーを装備する事を義務付けるが、それ以外については各小隊長、バックアップ担当者とよく協議した上で、自由に選定することを許可する。


また今回は、帝国軍防衛守備隊の多くがDQであろう事から、近接格闘戦用新兵器「バーナーランチャー」の装備を認めるが、勿論、初めから近接格闘戦を想定した火器選定は硬く禁止する。


今回の作戦詳細プランは、今後諜報部から得られる情報によって、大幅に見直される可能性があり、確実にこの作戦プランが実行される保証はないが、それでも様々な戦局に素早く対応できるように、作戦内容をしっかりと頭に叩き込んだ上で、当作戦に望んで欲しい。


それと、戦況の優劣如何によって、追加兵力の投入しなければならないケースも有りうるため、先発隊から外れたメンバーも、常時出撃体勢を整えておくように。



私からは以上だ。

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