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Loyal Tomboy  作者: EN
第一話「ルーキー」
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01-08:○黒いお抱え衛兵[2]

第一話:「ルーキー」

section08「黒いお抱え衛兵」


シルジーク達バックアップ部隊が待機するニュートラルエリアより、北北西に10kmlisほど離れた山奥にエリア55と呼ばれるポイントがある。


ここは戦時中、帝国軍が建設中だった中距離ミサイル地下基地の建設跡が存在する。


位置的には、トゥアム共和国首都「ランベルク」の喉元にあたるというほどの場所であり、トゥアム共和国側は、基地始動1ヶ月前までこの存在に気づかず、下手をすれば、現在の「トゥアム共和国」は存在しなかったのである。


3000メートル級の死山に囲まれたこの地域は、地上部隊からは完全に敬遠され、レーダーをも狂わす黒砂地帯であったため、トゥアム共和国側にとって、完全に「死角」となっていたのだ。


これが、この地方の名前「ブラックポイント」の所以である。


トゥアム共和国軍は、この事実を確認後、すぐさま重爆撃機「Str-29ガーゴイル」を三機派遣し、地形が変わってしまうほどの爆撃を、3時間に渡って行ったと言われている。


この地の至る所で目にする事が出来る「円形の不思議な湖」は、かつての爆撃跡の成れの果てであり、その時の爆撃が如何に凄まじいものだったのかを、暗に示していた。


(ランスロット)

「なあ、ボスの話だと相当な新人って言うぜ。ビギナー2機、レジスター5機、ハンター2機だろ?軽く3チーム始末してるってこったぜ。」


(メイルマン)

「そんなことは関係ねぇ。まさか怖気づいてしまったのかよ先輩?」


(ランスロット)

「ほっ!!お前さんも生きのいい新人だこと。」


そんなクレータ湖の畔付近に鬱蒼と生い茂った、木々達の枝葉の中に身を隠したまま、じっと何かを観察している男達がいた。


それは、先ほどチームTomboyの近くに姿を現した、カーネルチーム「Black's」のパイロット達である。


彼らは皆が噂する通りの、DQA大会主催者に雇われた傭兵であり、話す内容からして「ボス」とはおそらく「DQA主催者」を指すと予想される。


アタッカーチームリーダーの「ユァンラオ・ジャンワン」を筆頭に、「ランスロット・アバンテ」、「メイルマン・イン・ニネヴェ」共に、かなりのやり手とされるDQパイロットだ。


(メイルマン)

「ユァンラオ。俺にやらせろ。テメエにポイントをやりたくねえ。」


チームBlack'sとしては、最近入った新人で有るメイルマンだが、もうすでに、チームリーダーの「ユァンラオ」にタメ口をかましている。


少しばかり勝気の過ぎる青年この青年は、気に入らない事があるとすぐに顔に出るタイプだ。


年齢は24歳で、実戦経験は特に無いのだが、DQ操舵技術には卓越した物を持っており、過去に、トゥアム共和国南部に位置する「セロコヤーン」地方で開催されたDQA大会で、自分のチーム以外のDQをすべて撃破し、莫大な賞金を手に入れたと言う、凄腕の傭兵である。


本来なら、もうすでに一生遊んで暮らせる程の大金を得ながらにして、何故また、危険なDQA大会等に参加するのか。


彼の周囲では、そういった疑問を抱く者も後を絶たないが、彼にして見れば、答えは簡単だ。


それは、単に、彼が弱者を痛めつけて優越感に浸る事を好み、言ってしまえば、単なるサディストであるからだ。


特に、やられる寸前に抵抗する事もできなくなった弱者に対し、「最後の銃弾」を撃ち込むのが最高の一瞬だと彼は語る。


(ユァンラオ)

「ふっ、好きにしろ。」


(ランスロット)

「おいおい!マジかよ、いいのか?こんな馬の骨一人にまかせてよ。」


馬の骨?・・・と言う言葉に対して、メイルマンは激しい怒りを感じたが、それでも彼としては珍しく、その感情を押し殺した。


口を開けば「女」と「酒」の話しか出てこないような、お調子者のランスロットに対しては、口で言うより、実際に自分の実力を見せつけた方がいい。


DQパイロットとしての腕は、絶対に俺の方がいいに決まってる。


こんなひょろひょろで、覇気の欠片すら見つけることの出来ない金髪チリチリ頭が、何故、DQA大会で最上級に位置するカーネルチームに所属しているのか・・・。


そして、そんなランスロットが何故、自分と同列の立場として存在しているのか・・・。


彼としては、絶対認めたくない事実であったのだ。


(ユァンラオ)

「ランスロット、先にFEまで行くぞ。メイルマン、ボケをかますなよ。」


(メイルマン)

「ふん!!ボケようがないぜ。」


厳つい強面の割れた顎にまばらに生えた武将髭を、ゆっくりと擦りながら指示を出すユァンラオに向けて、思いっきり不満げな言葉を吐き付けたメイルマンは、内に籠もる苛立ちをDQに体現させるように、駆動システム出力を100%にまで吹き上がらせる。


すると、それまで彼等の搭乗するDQを覆い隠していた木々達が、「リベーダー2」のバーニヤから吹き荒れる大量の熱波に煽られ、大きな爆音と共に踊り狂い始めた。


彼らの搭乗する黒い機体リベーダー2は、マムナレス社製の最新型DQで、まだ市場にも出回っていない、貴重な試作品の一つである。


数あるDQの中でも、大型に分類されるであろうこの機体は、最近の流行である小型軽量化に反して、かなりの機体総重量となっているが、それでも、高機動兵器を歌っている点は、決して伊達ではない。


後部テスラポット付近に取り付けられた、標準バーニヤ2機の他に、両肩から付き伸びる肩当て裏に左右合計6機、両足脹脛に計4機、太腿裏部分に計4機と、総数16個ものジェットバーニヤを取り付けた、モンスターマシーンとなっている。


例に上げれば、最大出力でセニフの搭乗するパングラードの、5倍以上ものパワーを発揮できる計算で、全てのバーニヤをフル稼働させると、空を飛ぶことが出来るという噂まで流れた程だ。


しかし、噂はあくまで噂。


その機体性能の如何を知るのは、DQ開発に携わった開発メンバーと、実際にこのDQを操舵するパイロット。


そして、このDQを敵に回して戦闘する、相手パイロットだけであろう。

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