表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Loyal Tomboy  作者: EN
第四話「涙の理由+」
79/245

04-26:○流れ落ちる涙のバスルーム[2]

第四話:「涙の理由+」

setion26「流れ落ちる涙のバスルーム」


/GO.to Army Special Ground forces... ■

/The access is being approved... ■

/Black Point district Martial Possession Data ■

Approval ID:PressTerm8923

Pass: ******** ********

permission clear...

*******************************************************

Warnning !!

S_F_R Security system start...

*******************************************************

/Registered information list display

/Direct turning on /\1.Nyifine/Registration member list...


薄暗く沈んだ部屋の中に、只管ひたすら響き渡るキーボードを打ち付ける音。


パーソナルコンピューターのディスプレイが放つ、ほのかな光によって映し出された髭面の上に、不気味な笑みが浮かび上がる。


/Nyifine Parsonal list

01.Amaheru-dinge

02.Archan-Commune

03.Arimia-paw-shotrin

04.Balbarock-do-ly

05.Beltran-gustria

   :

40.Safork-moro

41.Salmzark-hifiliz

42.Senif-sonro

43.Shumarian-velnarl

44.Show-imura

   :


身分を偽り、高度なセキュリティシステムをさざむきつつ、たとえトゥアム共和国軍の高官であったとしても、簡単にアクセスする事が出来ない区域への最短ルートを歩んできた男が、何やら画面一杯に並べられた項目を食い入るように凝視していた。


そして、目的となる項目を選択し、照会コマンドを打ち込んだところで、テーブルの上へと置かれていたブランデーを手に取り、半分ほどを一気に喉の奥へと流し込んだ。


(ユァンラオ)

「さすがの共和国陸軍も、たいした情報を有していないな。まあ、準ランベルク市民権しか持たない流れ者では仕方が無いか。」


<セニフ・ソンロ>

▼ステータス

年齢:16歳 性別:女 血液型:B-AB

身長:145cm 体重:35kg

出身:セルブ・クロアート・スロベーヌ帝国

人種:セレアニア系

経歴:DQA大会参加:3回

所属:LNR社

適正:DQパイロット


ある程度事前に予測出来た事とは言え、余りに微量で鎮撫ちんぶな情報を前にして、ユァンラオは喉元へと込み上げる上気と一緒に、呆れたような溜め息を吐き出した。


勿論、彼が求めている情報とは、自分の疑念に対する真実へと近づくための、多角的方面から分析出来る情報であり、それが彼の見据えた標的へとより迫るための行為である事は明らかだ。


ユァンラオは、ゆっくりと灰皿の上に捨て置かれたままのタバコをつかみ上げると、真っ白な煙を引き寄せるように口元にくわえ、その大きな身体を力いっぱい椅子の背もたれへとし掛けた。


そして、タバコの先端部で赤々と火の元を光り上がらせながら両腕を組むと、彼は目の前に広がる灰色の壁に視線を向けて、何やら脳裏へと描き出したイメージへと意識を集中した。



お互いに軍隊と言う檻の中に身を置く以上、事をいて荒立てる必要も有るまいが、あれだけの結果を導き出した一人の小娘を放ったままにして、「ヤツ」は一体、何を目論むというのか。


処刑されたとされる帝国最後の皇帝血直系継承者「セファニティール皇女」の幻影を追い続け、居もしない偽者の登場を願って迷走する狂信者ともまた違う人種の人間だ。


帝国内でもそれなりの権力を有し、何かしらの派閥を形成する者の一人であるようにも見受けられるが、それでも実際に組織の黒幕たる人物とも少し違うようだ。


小娘の正体に逸早いちはやく気がついていながらにして尚、手をこまねいているように見せているのは、何か別に思惑があるからなのか。


もし、仮に皇女が生きていたと仮定し、本当にあのセニフ・ソンロと言う小娘が、セファニティール・マロワ・べフォンヌ本人であったとして、今後「ヤツ」が取りうる手段の道筋は二通り考えられる。


一つ目は、皇女の存在によって不利的状況へと追い込まれる輩として、人知れず小娘を抹殺してしまう事。


二つ目は、皇帝血の威光を借りて自らの権力を押し上げようと目論んで、自らの陣営に小娘を取り込もうとする事。


簡単に陣営を切り分けて見せるなら、前者がストラントーゼ家、後者がロイロマール家と言う構図になるのだろうが、その対立関係の中で「ヤツ」の立ち位置を定めるならば、まるっきりの中間地点ないし、傍観者たる観客席に陣取っているようにも見受けられる。


もし「ヤツ」が、どちらかの陣営に属していたとするならば、5大貴族と呼ばれる他の陣営の者達にまで、情報を公開するような指示を出す必要は無いからだ。


しかも「ヤツ」は、確証が取れるはずも無い「皇女生存の可能性」を歌った世迷言よまいごとのみで、帝国国内でも1、2を争う大貴族であるロイロマール家と、ストラントーゼ家が奔走ほんそうするで有ろうことを事前に知っていた。


知っていた上で、あえて小娘の情報を流すような指示を出したのだ。


3年前に処刑されているはずの皇女が、今も尚生き永らえているなどと、DNA鑑定を実際に行った自身でさえ、未だに半信半疑で有るというのに、大貴族共が態々(わざわざ)事を荒らげるような危険な行為を犯してまで、行動を起こした事からも、その情報が非常に高い信憑性を帯びている事が解る。


帝国史上最も愛された女帝ソヴェールの娘、「セファニティール皇女」が生きているのだと言う事実が。



ユァンラオは身動みじろぎもせずに、立ち上る白い煙の行く末を見据えながら、意識の中に疎らに点在した確実性の高い情報から順に繋ぎ合わせていく。


しかし、大半の情報が予測と言う不確実なもので塗り固めなければ、繋がる気配すら見いだせない状況に、面白くも無さそうな表情を浮かべて、大量の煙を吐き出すのだ。



ストラントーゼ派陣営として考察すると、現帝国最高権力者たる皇太后クロフティアを筆頭に、帝国最高評議会内でも最大勢力を誇る現状に、不満を抱いているわけではなかろうが、それでも皇帝血が断絶した今の幼少皇帝デュランシルヴァでは、帝国国民の心をつかむことは容易に成らず、同派閥内でくすぶる火種も有したままの状況にある。


辺境地域を統治する弱小貴族達との軋轢あつれきも深みを増し、何かしら帝国国民をまとめ上げるための思想的対象を求める可能性もあるが、それでも長きに渡り対立してきた相手の子孫を頭上にかかげるなど、当然望んで選択するはずも無い。


ストラントーゼが「ヤツ」の黒幕たる人物なのであれば、トゥアム共和国との間に戦線を開く前に事を処理してしまおうと考えるのが極自然な流れであり、現状において小娘の暗殺を要求してこない事からも、「ヤツ」がストラントーゼ派の人間では無いことがうかがえる。


一方、相対するロイロマール派陣営として考察すると、女帝の病死から狂いだした歯車に巻き込まれるように衰退した勢力と、対抗するストラントーゼ派陣営の急激な台等により、帝国国内での勢力バランスが著しく崩れ始めた事を懸念して、何かしらの対策を打ち出さなければならない状況下に有った事は確かだ。


離れ行く帝国国民の心を一手に引き付けるために、今は亡き女帝ソヴェールの娘であるセファニティール皇女を盟主として担ぎ上げようと、さらされた魅惑のカードを手に入れんと欲した心理は理解できる。


皇女が如何に父親殺しの大罪を背負った犯罪者であったのだとしても、帝国国民達の間では、未だに当時の事件に関して疑念を抱く輩が数多いからだ。


3年という月日が流れた今も尚、封印された当時の真実を追い求め、帝国憲兵隊に身柄を拘束される不穏分子が一向に後を絶たず、狂信的反乱者達の間では思想の象徴としてあがめられているとさえ言われている。


一見、帝国国民の生活は安定して豊かであるように見えるものの、実際にその恩恵にあずかる事ができている人間は、位の高い貴族達や都市部周辺に住まう特権を有した人間達のみだ。


特に辺境地域では激しい民族差別による虐殺や略奪が横行し、貴族間、部族間による大規模な戦闘へと発展する例が少なくない。


女帝ソヴェールが打ち出した身分格差緩和政策により、一時の好転を見せた辺境地域問題だが、それも彼女が生きている間だけにもたらされた僅かな効果に過ぎず、その後帝国最高評議会の採決によって、いとも簡単に破棄される始末となった。


ロイロマール派としては、こうしたストラントーゼ派による、都合の良い政策の狭間で苦しみもだえる国民達を取り込みたい狙いがあり、実際、彼らの支持母体となるのも、辺境地域を統括する弱小貴族達だ。


ロイロマール派の人間達が、皇女の汚名をそそぐ目星が付かないまでも、まず誰よりも先に皇女の身柄を確保しておきたい立ち位置にいることは確かで、秘密裏にブラックポイントを襲撃した軍人達の行動を見れば、明らかに彼らがその陣営に属している事が直ぐに解る。


となれば、ロイロマール派の陣営が皇女の身柄を確保する前段階で事を公にするような暴挙に出るはずも無く、「ヤツ」とはやはり異なる陣営に属していると言わざるを得ない。


つまり「ヤツ」は、事の主となる情報を握りつつも、事の大勢からは身を一歩離した立場にいる者であり、帝国国内には第三者的な勢力が存在しているのかもしれない。



ゆっくりと顎に生え揃った無精髭を擦りつつ、短くなったタバコを灰皿の上でひねり潰すと、ユァンラオはグラスの中に残されたブランデーを一気に飲み干して、無造作にテーブルの上へと強く叩きつけた。



仮に第三者的勢力が存在するとして、その筆頭候補に挙げられる奴等といえば、元々ストラントーゼ派であるブラシアック家と、ロイロマール派であるナイテラーデ家を除き、帝国領土の西方一帯を統治するロートアルアン家以外に思い浮かびはしないのだが、奴等に帝国全土を揺るがすほどの力が備わっているのかといえば決してそうではない。


奴等がロイロマール派、ストラントーゼ派どちらにも組しないのは、奴等の支持基盤がアルアンゴーニュ地方のみに存在する事を理解しているからであり、それ以上の野心を垣間見せないのは、帝国内での権力闘争に巻き込まれたくない意思があるからなのだろう。


とすれば「ヤツ」の居場所としてロートアルアン家が相応しいとも言い切れず、帝国国内には「ヤツ」が存在出来るほどの目ぼしい勢力は存在しないという事になる。


しかし、これほど帝国国内の内情に精通した人物が、事の本筋から乖離かいりした場所に居るはずも無く、「ヤツ」の居場所は少なからず何れかの陣営の中にある事は確かなのだ。


(ユァンラオ)

「ふっふっふ。中々に面白い構図だな。いずれの陣営をも否定しているように見せているのは、この俺を警戒しているからなのか。謎を解く鍵自体をこの俺の手の内に預けておきながら、解けるはずも無いと高をくくっているつもりか。」


ユアンラオは、空になったグラスの中に並々とブランデーを注ぎ入れると、軽い笑いを打ち付けて、再びディスプレイに表示される小娘の情報を凝視する。


そして、無意識の内にタバコを一本手に取ると、使い込んだ愛用のジッポに火を灯した。



こんな小娘が全ての謎を解く鍵を握っているなどと、軽々しくも信用することは出来ないのだが、この小娘を巡って勃発ぼっぱつした騒動から考察すれば、何かしらの情報を有していることは確実であり、小娘が皇女自身であるという可能性についても、完全に否定する証拠がある訳ではない。


ストラントーゼ派が主体となって推し進めた処刑劇から、皇女が逃げ延びる事など不可能な事だと言われているが、全くの非公開に、しかも突然に執行された皇女の処刑に、絶対の自信を持って彼女の死を確信できる者など、実際に処刑された彼女の死体を目の当たりにした者でもなければ出来やしないだろう。


勿論、一般庶民達にとってみれば、結局は伝え聞いた事実でしか、事の本質に触れることは出来ないだろうが、それでも当時執行された皇女の処刑に関する事実には、幾つもの不自然な点が見受けられ、その度に皇女がまだ生きているのではないかと言う憶測が飛び交ったのだ。


勿論、それが憶測の範疇はんちゅうを超えることは無く、そう言った皇女生存の可能性を望む人々の思いとは裏腹に、皇女が大衆の前に姿を現す事など無かったのだ。


しかし、今回に限って言えば、事態は異様な雰囲気を奏で出し、事もあろうか帝国二大勢力ともあろう、ストラントーゼ家とロイロマール家が同時に事を起こした。


まさかこれ程の力を有した両家が、何の確証も無いまま偽の情報に踊らされるはずも無く、そこに何かしらの確信を抱いたからなのであろう事は予測できるのだが、奴等は一体、この小娘に何を見出して、行動を起こしたのだろうか。


本当にこの小娘が、皇女本人で有るという確信を持ったのだろうか。


(ユァンラオ)

「元々提供されたDNA情報が皇女の物ではなく、小娘の物だったとすれば、一致するのは当たり前の事。しかし、そんな偽の情報によって行動を起こすほど、奴等も暇ではあるまい。もし本当に小娘が皇女だとするならば・・・。」


もし本当に、この小娘が皇女本人だとするならば、何の気無しに一般市民を装って周囲をうろつけるものなのだろうか。


確かに他の貴族達とは違い、一般的庶民の生活を好んで、しばしば姿をくらませていたとされる皇女であるが、それでも周囲の者が、そんな状況を放って置くはずがない。


少なからず皇女の身を守るための護衛は必要であり、決してたった一人で行動させるような事はしないはずだ。


とすれば、あの時小娘の周囲に居た者の誰かが、小娘を護衛する任務を負う者なのだろうか。


周囲から追われる立場を考慮して、ひっそりと身を隠す事を考慮すれば、四六時中行動を共に出来る同姓の方が都合が良いと言う事になるが、果たして・・・。


<アリミア・パウ・シュトロイン>

▼ステータス

年齢:22歳 性別:女 血液型:A-A

身長:173cm 体重:50kg

出身:セルブ・クロアート・スロベーヌ帝国

人種:南ムルア系

経歴:DQA大会参加:3回

所属:LNR社

適正:DQパイロット


見た感じから、相当戦闘能力に長けた女である事は間違いない。


候補として名を上げるとするならば、こいつ以外には考えられんな。


カルティナの話からすると、小娘の正体を知っていたような素振りを見せなかったようだが、正体を知り得なくても、小娘の身を守る程度の依頼をされていたと考えれば、別にその不自然さを勘ぐる必要も無い。


(ユァンラオ)

「少し注意深くこいつの動向を探るか。小娘の方に関しても、ヤツが次の手を打って出るまで、待つ必要もあるまい。ふっ。」


微かに込み上げた笑いをにじませるように、ユァンラオの口元が歪み上がる。


そして彼は、陸軍のシステム統括センターを経由して、外部へと抜け出るための経路を特定すると、多少強引な手段を講じて、張り巡らされた防壁への攻撃を開始した。



ビーーー。ビーーー。ビーーー。


っと・・・。


唐突に薄暗い部屋の中へと小うるさいブザー音が響き渡る。


ひっそりと身を隠して不正な手段を敢行していた者としては、まさに心臓が飛び出すほどの衝撃を感じてしまったに違いないが、このブザー音の正体は、何のことは無い、彼の部屋に来訪者が有った事を告げるものであった。


勿論、自分の不正行為に絶大な自信を持つユァンラオの表情は、怪訝けげんそうな心情を浮かび上がらせはしたものの、決して驚いた様子を感じさせ無かったが、それでも普段から彼の元を訪ねるような客人は皆無であったために、少なからず心の中で警戒心を強めたのだった。


彼はゆっくりと椅子から立ち上がると、部屋の入り口付近へと備え付けられたテレビドアホンのスイッチを入れ、扉の前に立つであろう人物の姿を確認する。


するとそこには、抹茶色の髪の毛が特徴的な可愛らしい女性が一人、不機嫌そうな表情を浮かべたまま立っていたのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ