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Loyal Tomboy  作者: EN
第十一話:「混流の源泉」
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11-12:○赤のエリアに蔓延る脅威[4]

第十一話:「混流の源泉」

section12「赤のエリアに蔓延る脅威」


まるで山界の急流を一気に上がれ落ちる鉄砲水が如く、物凄い勢いで漆黒の密林山岳地帯を疾走し行く帝国軍F型DQ部隊が、各々不規則な揺り動き様を奏で出しながらも、その最先頭部をひた走る青味がかった柔らかな黒髪が特徴的な青年「ランス・レッチェル」を頂点に、大体の感じで南向きのデルタ陣形を組み上げる。


そして、周囲に群生する低木や幼木、大きな岩や大量の土砂を荒々しく吹き飛ばし散らしながら機体を右に左にと激しく旋回させ、前方より断続的に撃ち放たれるネニファイン部隊からの攻撃を体良ていよくいなしかわしつつ、更なる加速をと後部スラスターバーニヤを大きく吹き上がらせた。


(ランス)

「フェリス、オーガストはラインD3より割り込んで敵部隊の左翼側を殲滅しろ。俺は目標の背後を狙う。」


(フェリス)

「解りました。」


(オーガスト)

「ご武運を。」


帝国軍に限らず一般的にF型DQ(飛行機型DQ)は、人型で例えるなら機体の上半身部を前方に90度程傾け倒した体勢を基本として運用されるため、水平方向への被弾面積が非常に小さく、また、それによって、搭載する装甲量をある程度削減できる事から機体が軽量で加速力、巡行速度に優れ、最前線では主に、敵陣に突撃を仕掛けるような場面で重用される。


一方、ネックとなるのが、上下方向の装甲が非常に薄く、特に、可動部位が数多く密集する機体腹部が地面から大きく離れてしまっているため、機体後部のテスラポット、スラスターバーニヤ部を含め、爆発を伴う炸裂系兵器に比較的弱いと言う側面があり、この機体を上手く運用できるかどうかは完全に搭乗するパイロットの腕次第と言った所なのだが、この時、猛烈なスピードで南下するF型DQ機「flgerフォル・レンサジア」及び「blcarlバル・レンサカールB」に搭乗するパイロット達は皆、卓越したDQ操舵技術を持つ凄腕の猛者達だった。


対するネニファイン部隊前列組は、汚いながらも横一列、北方へと向けてそれなりの防御陣を構築し終えており、接近し来る帝国軍F型DQ部隊を迎え撃つ態勢も万全、対象敵機が射程内へと足を踏み入れると同時に全機一斉に遠距離射撃を開始し、出来る事なら撃墜を狙って、最低でも接近されない事を前提に、各々が持てる火器武器を強力にフル回転させた。


だが、非常に起伏の激しい地形区域である事に加え、射線を遮る遮蔽物には全く事欠かない密林山岳地帯内部において、高速で移動しうねり動く相手の機体に正確に弾丸を狙い撃ち当てる事は非常に困難であり、まぐれ当たりに期待を寄せる他手だてが無かった訳だが、この時、ネニファイン部隊が装備していた遠距離武器は、単位時間当たりの攻撃回数が少ない物ばかりで、帝国軍の進撃速度を緩め落とさせる様な荒々しき威圧感を相手方に与え付けるには不十分であったと言えた。


(ベルガー)

「ちっ!少しも怯まねぇな。可愛気のねぇ。」


(ジルヴァ)

「レッドゾーン入り口で食い止めろ!絶対に抜かせるな!」


(カース)

「ネニファイン部隊各機へ!現在、基地格納庫前面に防衛守備隊を集結中だ!それまで何としても持ち堪えろ!」


(ノクターナル)

「簡単に言ってくれる。」


やがて、帝国軍F型DQ部隊8機の接近に伴い、使用武器を遠距離型から中近距離型へと手早く切り替え終えたネニファイン部隊前列組のメンバー達が、闇夜色に染まり切った密林地帯内部の様相に、けたたましき銃撃音と眩い閃光をド派手に吐き散らかせ、それまで低調気味だった弾幕濃度の強さを急激に増し上げ行った。


・・・と同時に、ネニファイン部隊前列組を射程内へと捉え入れた帝国軍F型DQ部隊の面々もまた、各々が装備する中近距離仕様の「HV192」シリーズアサルトライフルや「SVG101T」ショットガンを構えて激しく反撃弾を応射し始め、高速で南下移動する流れの中で素早く密集紡錘ぼうすい陣形を形成し、左右方向に広く伸ばした横陣を敷いて構えるネニファイン部隊の右翼側、ジョハダル率いるグラント隊が待機するエリア付近へと目掛けて雪崩込み入る動きを見せた。


(エルピコ)

「ん?何だ?右寄りだぞ?」


(セニフ)

「こっちに来る!」


(ジョハダル)

「ジェイ!イルマ!御指名だ!気合い入れろよ!」


(ジェイ)

「何でだよくっそ!!ふざけんなよ!!」


(イルマ)

「ジョハダル!・・・くっ!もう下がれないか!ジェイ!援護しろ!」


(ジルヴァ)

「全機!敵の前列に攻撃を集中しろ!」


厚みの無い防御陣を一気に一点突破し抜けて背面へと展開し、後続の部隊と連携して前後から挟み撃ちする腹積もりなのであろう事は、ネニファイン部隊の面々も直ぐに気付き解ったのだが、突撃し来る帝国軍F型DQ部隊に対して各々の待機位置から激しく銃弾を浴びせ掛けるも、帝国軍F型DQ部隊が辿る進撃ルートは、周囲からの射線が中々に通り辛い窪地地帯を上手く繋ぎ合わせた妙的代物だった事もあり、何一つ成果を得られないまま五体満足なる8機の敵機に接近を許してしまう事になる。


(ジョハダル)

「ジェフターの装甲がどれだけもつかだが・・・、やるしかない。」


横長ライン陣形を敷くネニファイン部隊前列組の中でも、突出して前方部に出張っていた面長おもながで垂れ目な顔貌がんぼうの中年男性ジョハダルは、自らが搭乗する新型機ジェフター3の機体装甲が他の機種よりもそれなりに厚めである事をかんがみて、相手の攻撃的意思を集め束ねる盾役、囮役を勤め上げようと画策していた訳だが、まさかこの時、帝国軍のF型DQ部隊が全機一斉に襲い掛かってくるとまでは予想していなかった様で、多少なりと怯み滅入る思いに苛まれてしまった。


だが、だからと言って戦う事を放棄するつもりなど毛頭無かったジョハダルは、サーチモニター上に映し出される8つの赤色光点に視線をチラリと一度宛がった後、徐に鋭く光る己の視線を闇色の外界へと力強く振り向けやると、遮蔽物として利用していた大岩の裏陰からジェフター3の機体半身を素早く晒し出し、右手に装備したASR-SType45で炸薬系の弾丸と、右の肩口装備である120mmミドルレンジキャノンTypeSの砲弾を、迫り来る帝国軍F型DQ部隊へと向けて激しく撃ち放った。


F型DQの装甲は基本的に前面が厚く、それ以外の部分は比較的脆い作りになっており、戦闘時はなるべく相手に正面を向けた状態で戦う、もしくは、その高い機動力を駆使して水平左右方向に揺さ振りをかけながら戦うのが一般的で、足を止めた状態での撃ち合いなどには全く向かない、まさに、陸上を駆け回る飛行機なる様相をていした特殊な機体である。


しかも、厚めに張り重ねられた前面装甲も、強力なスナイパーライフルやキャノン砲の弾丸を完全には防ぎ切る事ができず、相手から見て横方向への相対移動量が落ちた時などに狙われ易いと言う弱点もあり、旋回移動時は射線が丁度切れているタイミングを見計らって行うのが通例だ。


だがしかし、この時、ジョハダルが照準を突き向ける帝国軍F型DQ部隊の面々は、不意に、ジョハダルに対して横方向へのスライド移動の無い完全なる直進と言う無謀なる挙動に固まった。


一瞬、何故に?と言う疑念が意図せずもジョハダルの脳裏へと沸き浮かんだが、ジェフター3の右手に装備したASR-SType45で炸薬弾をバラ撒きながら、右肩口に装備した120mmミドルレンジキャノンTypeSの照準を、帝国軍F型DQ部隊の先頭を直走るフォル・レンサジアへと括り付ける作業は素晴らしく手早かった。


そして、120mmミドルレンジキャノンTypeSの砲弾を撃ち放つトリガーを引き放・・・。


(ジョハダル)

「!!」


次の瞬間、紡錘ぼうすい陣形を形作って一直線に突撃して来た帝国軍F型DQ部隊が、一斉に後部バーニヤを大きく吹き上がらせ、ジョハダルの眼前で左右方向へと不規則にばらけ散る動きに転じ行った。


一瞬、虚を突かれた感を表情に浮かび上がらせてしまったジョハダルは、それでもと即座に狙いを付けた120mmミドルレンジキャノンの発射トリガーを引き絞ったのだが、僅かな迷いが生じ混じり入った砲弾がF型DQ機を捉える事は無く、散開した敵機の合間を虚しく縫い飛んで行った後、大きな岩石を無意味に一つ破壊しただけで終わりを見た。


(ジルヴァ)

「ジョハダル!機体を引っ込めろ!無理に攻撃しなくていい!」


(ナッソス)

「各機!敵の動きに惑わされるな!背側面を見せた奴から優先的に潰せ!」


ジョハダルはここで一度、搭乗機であるジェフター3の機体を大岩の裏影へと戻し隠し、眼前にまで迫った帝国軍F型DQ部隊各機の揺り動き様をサーチモニター上で確認して取ると、至近戦闘を仕掛けてきそうな動きを見せる2機のDQと、それ以外の敵機でそれなりに長い間射線を確保し得そうなコースを辿る1機に意識を集中させつつ、残弾数が減ったASR-SType45の弾倉を交換する作業を手早く行った。


(ジョハダル)

「中段から二機・・・。ならば。」


そして、自らが隠れる大岩を基準とする横ライン上を次々に通過し行く幾つかの敵機を完全に無視し、こちら側を攻撃しようとドリフト状態へと移行した2機のバル・レンサカールBにほのかな注意力をチラチラと宛がい付けつつ、予め狙いを付けた1機が自らを追い抜き通り過ぎるタイミングに合わせて、ジェフター3の右手に持ったASR-SType45の照準を括り付け、トリガーを引き放った。


それは、ジェフター3の弱点部位である後部テスラポットを大岩側へと配し隠した状態で、迫り来る敵機の攻撃を前面装甲の厚さを持って耐え凌ぎながら、正面方向へと向かって移動し行く哀れな獲物の背面を狙い撃墜を目論むと言う、相打ち上等なる大胆な力技であり、自身に対して攻撃を仕掛けてくる敵DQ2機に関しては、完全に味方からの援護射撃に頼る腹積もりだった。


・・・ところが、ジョハダルが狙いを定め付けた帝国軍DQ機フォル・レンサジアは、ジョハダルが銃火器の発射トリガーを引き放つよりも前に、既に回避運動を始めていた。


密林山岳地帯と言う不整地上を高速で移動しながら、フォル・レンサジアの機体両翼部先端に取り付けられた旋回用小型スラスターバーニヤを2、3回細かに吹き上がらせ、一瞬にして機体を回転状態へと移行させると、回転軸を右足と左足とで不規則に切り替えながら捉え処のない水平方向のスライド移動を披露して見せ、ジョハダルが放つ銃火器の弾道を体良ていよく外しかわしいなして行く。


そして、2機の僚機がジョハダル機へと攻撃を開始したタイミングを見計らって、フォル・レンサジアの機体後部メインスラスターバーニヤを大きく吹き上がらせ遣ると、周囲に群生する樹木達の間を巧みに抜け行き、一気に射線外である土丘の向こう側へと逃れ出て行ってしまった。


(フェリス)

「囮役と言うのは、こう言う風にやるんですのよ。」


(ジョハダル)

「ちっ!!」


TRPスクリーンの左手側からドリフト状態で勢い良くスライドインして来たバル・レンサカールが、右手に装備したアサルトライフル「HV192-T64」の銃弾を激しく浴びせ掛け来る中、ジョハダルは、自分が狙わされていたのだと言う事に気が付き、思わず込み上げた焦燥しょうそう的思いを汚らしい舌打ちの上に乗せて吐き捨ててしまったのだが、即座にぎりりと奥歯を強く噛みしめて、目の前のバル・レンサカールへと鋭い眼光を移し宛がい付け遣ると、行き場を失った己の攻撃的意識に荒々しき鞭を打ち据え入れ直し、持てる火器武器の発射トリガーを引き放った。


だが、既に攻撃態勢に入っていた相手機に先手を取られた状態で、左手に装備し持っていたGMM32-グレネードガンを撃ち抜き弾き飛ばされ、右手に持つASR-SType45で応射仕返し付けるも、極至近で右手側に素早く横スライド移動し行くバル・レンサカールに対して、効果的な攻撃を加え入れる事が出来ず、挙句の果てに、狙いを済まして撃ち放った120mmミドルレンジキャノンTypeSの砲撃も僅かに外し逃してしまう。


(ジョハダル)

「くっ!!」


(カリメーラ)

「2周目は無しよ!」


(ロレンツォ)

「解ってるよ!」


そして、ジョハダルが搭乗するジェフター3の程近くをドリフト状態ですり抜け行き、機体の進行スピードが大きく落ち切る程手前付近で、機体の向きを進行方向側にくるりと軽快に回し向けたバル・レンサカールが、後方に向け付けられたスラスターバーニヤを全てフル全開に吹き上がらせ、ジョハダルが攻撃可能なレンジ範囲外へと一気に離脱する構えを見せる。


と、その直後、一も二もなく、逃がすかよ!と脳裏に思い上げたジョハダルは、激しく沸き立つ荒々しき殺意を篭り入れた鋭い視線を右側に寄せ付け、装備し持ったASR-SType45を最速で右方向へと振り向け遣ろうとするも、今度は反時計回りで接近して来た2機目のドリフターが容赦の無く襲い掛かり来た。


(セニフ)

「ジョハダル!!」


(ジルヴァ)

「出るなセニフ!!罠だ!!」


(セニフ)

「で、でも・・・!」


(キリル)

「ちっ!こっからじゃ狙えねぇ!」


バル・レンサカールが装備し持っていた武器は、中距離型のアサルトライフル「HV192-T64」と、近接戦闘用の「SVG101T」ショットガンで、どちら共に一撃で相手機をほふり倒せる程の威力はないが、幾ら機体前部の装甲圧にそれなりの重きを置いた新型機であっても、至近距離で立て続けに被弾を許し続けて良い武器ではない。


この時、新たに割り込み入って来たF型DQ機に対して、反撃の矛先を手早く切り替え付ける為の操作を必死に執り行っていたジョハダルであるが、コクピット内部に忙しく木霊し飛ぶ耳障りな被弾音と、狂った様に鳴り重なるけたたましい警告音の猛烈な狂騒劇を聞きながら、不意に、これは持たない・・・と、そう思った。


そして、何をどうこう足掻あがこうとも、やられる結末からは逃れられない自らの運命を瞬間的に感じ取ったジョハダルは、徐々に映像が乱れ消え行くTRPスクリーン越しに垣間見える、バル・レンサカールの機影をギロリと睨め付けた後で、僅かに口元を緩め歪め上げた。


(ジョハダル)

「男の生き様は前のめりだって、どっかの誰かが言ってたっけな!」


(ロレンツォ)

「!?」


次の瞬間、大量の弾丸を浴びせ掛けられた状態のまま、徐に右手に装備し持ったASR-SType45を放り投げ捨て去ったジョハダルが、ジェフター3の後方スラスターバーニヤを全力全開に吹き上がらせ、極至近を通り過ぎようとするバル・レンサカール目掛けて猛突進を開始した。


一瞬、まさか!?と虚を突かれた感に取りかれてしまったバル・レンサカールのパイロットは、このまま攻撃を続けるか、それとも回避離脱を優先するのかで一拍程悩み迷うも、即座に機体を強引にひねり回し、一気に離脱し離れ逃げる行動へと転じ行った。


・・・のだが、自分の攻撃手番でジョハダル機を完全撃墜する腹積もりだったバル・レンサカールのパイロットが、自らが繰り出す攻撃の正確性、攻撃回数を高める為に、ドリフト旋回移動時の機体速度をかなり大きく緩め落としていた事もあり、離脱に必要な十分な再加速を得るよりも前に、急接近し来たジェフター3に取り掴まえられる事になってしまう。


(ロレンツォ)

「なっ!こいつ!!」


(ジョハダル)

「イルマ!撃て!」


(イルマ)

「そいつから離れろジョハダル!十分だ!」


ジェフター3の左手によって機体左翼付け根付近を、右手によって後部テスラポット吸排気口付近をがっちりと掴み取られたバル・レンサカールは、機体の全スラスターバーニヤを幾度となくフル全開に吹き上がらせてジョハダル機を振り払おうと試みるのだが、機格で勝るジェフター3の力強い拘束から逃れる出る事が出来ず、やがて程なくしてその場に完全に足をくくり止められる事になった。


当然、これは、ネニファイン部隊側にとって、非常にわずらわしき動きを見せていた厄介な相手を、ある程度容易にほふり仕留められる絶好のチャンスであり、このバル・レンサカールに対して後方より射線を確保し得ていたイルマは、搭乗機であるTMDQ-09トゥマルクの左肩に装備した120mmミドルレンジキャノンの照準を、しっかと相手機に合わせ付けた状態にあったのだが、獲物に張り付くジョハダルを巻き込む可能性が非常に高かったため、彼は直ぐに発射トリガーを引く事が出来なかった。


ところがこの時、彼等にとっては幸運な事に、バル・レンサカールの激しい攻撃によって手酷い損傷を受け食らわされていたジェフター3の機体が程なくして限界を迎え、主に左半身を中心に各関節部のテンションが一気に下がり落ちると、再度脱出を試みて後部スラスターバーニヤを大きく吹き上がらせたバル・レンサカールの推進力に、耐え切れなくなったジェフター3の両手が拘束点より弾け飛び、拠り所を失った機体が力無く前のめり状態で大地へと崩れ倒れ行った。


(カリメーラ)

「急いで!ロレンツォ!」


(ロレンツォ)

「僕に構わず!行って!」


ジェフター3の拘束より逃れ出たバル・レンサカールのパイロットは、即座にその場から離れ逃れる為の行動へと手早く転じ行ったが、一度停止した状態からの再加速にはそれなりの時間が必要・・・、もはや、自らの命運が、敵対するDQパイロット達の射撃ミスに期待する他ない状況にある事を悟っていた。


搭乗する機体の全スラスターバーニヤを後方部へと向けて全力で吹き上がらせながら、然程可動域の無い両足を必死に前後に動かしながら、窮地に陥った自分の為に援護に入ろうと機体を翻した味方機の動きを制止する言葉を発したのもその為だ。


しかし、完全にターゲッティングの済んだ獲物に対し、ほぼ発射トリガーを引き放てばいいだけと言う、良的状態を保っていたネニファイン部隊の「イルマ・ヴィーチャ」なる人物は、それ程高い戦闘能力を持ち合わせていた訳では無いものの、ある程度なら何でも卒なくこなし得る十分な兵士たる素養を有したDQパイロットであり、大地に倒れ伏したジョハダル機をおもんばかって、ほんのしばし時を置き、彼によって撃ち放たれた120mmミドルレンジキャノンの砲弾は、見事に狙った獲物の機体本体へと綺麗にぶち当たった。

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