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Loyal Tomboy  作者: EN
第十話「微笑みは闇の中で、闇の向こうで」
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10-27:○悪趣味な舞台、三下俳優等の光る踊り[2]

第十話:「微笑みは闇の中で、闇の向こうで」

section27「悪趣味な舞台、三下俳優等の光る踊り」


セニフ達がシーフォをこのパレ・ロワイヤル基地まで連れて帰って来たのは、ほぼ半裸状態にあった彼女の事を無下むげに放っておく事が出来なかったから・・・、彼女が自身の家まで一人で帰る足を確保できそうに無かったからであるが、それ以上にセニフ達が問題視していたのは、彼女が既に、ユァンラオ陣営側の人間達に目を付けられてしまっていると言う事実にあり、彼女が無事に元居た場所へと戻り帰る事が出来たとしても、また再び同じ様に悪漢共に襲われたりするのではないか、また人質として利用される事態に見舞われかれる事になるのではないかと危惧していた為だ。


勿論、彼女自身、ある日突然元居た街から連れ去られるめになった事の経緯から、直ぐにでも心配する家族の元に帰りたい、帰って自分が無事である事を他の皆に伝えたい、早く安心させたいなる思いがあった事は確かだが、今自分が一体どんな事態に巻き込まれているのか、どのような状況に落ち陥ってしまっているのかを全く理解し取れていなかった訳ではなく、四年程前に父親殺しの容疑で処刑されたはずの帝国の皇女が今も尚生きていると言う事実を知ってしまった自分が、そうそう簡単に元の生活に戻れようはずが無い事をちゃんと解っていた。


ただ、戻れないからと言って、全く先の見えない逃亡生活に身を投じる勇気や覚悟があったかと言えばそうではなく、そもそも、自分で自分の身を守れるだけの能力や知識があった訳でもなく、彼女には、セニフ達に付いて行く以外に他の選択肢が全く無かっただけだ。


とどのつまり彼女は、現状、帝国に帰りたいけど帰れない的な悲しき境遇にある事を強く強く主張し、パレ・ロワイヤル基地に置いてもらう形に話を上手く持って行かねばならない・・・、しばらくの間この基地に留まる事をゆるしてもらわなければならない立場にあった。


(サルムザーク)

「こんな部屋じゃ落ち着かないかもしれないが、取り敢えず座ってくれ。疲れてるだろう?」


(シーフォ)

「いえ、どうかお気遣いなさいませんように、私なら大丈夫です。」


(サルムザーク)

「そうか。・・・お前は?」


(チャンペル)

「あ・・・、わ、私も・・・、大丈夫です・・・。」


(サルムザーク)

「ふむ。・・・で、彼女は?」


(ギャロップ)

「彼女は、今回の一件とは全く別の件で助けた帝国の人間です。」


(サルムザーク)

「別の件?」


(ギャロップ)

「はい。我々はセニフを救出した後、スーリン西部の渓谷路を辿って南方側へと抜け出たのですが、その道中で偶然、複数人の男達に追われる彼女の事を発見しまして、見るからに看過かんかし得ない逼迫ひっぱくした状況だった事もあり、取り敢えず彼女を助ける事にしたのです。」


(サルムザーク)

「その・・・男達と言うのは?」


(シーフォ)

「はい・・・、大変お恥ずかしい話なのですが、実は私、借金取りに追われていまして・・・。」


(サルムザーク)

「借金取り?」


(シーフォ)

「帝国国内に蔓延はびこるギャングみたいな連中です。・・・私、騙されたんです。騙されて、それで・・・、無理矢理連れ去られて・・・。」


(サルムザーク)

「ああ、いい。それ以上詳しく話さなくていい。・・・それで?一体何処から連れ去られて来たんだ?」


(シーフォ)

「テルアムントです。」


(サルムザーク)

「テルアムントか。これまた随分と遠い所だな。・・・うーん。帰してやる手立てが全く無い訳ではないが・・・。」


(カース)

「帰った後に、また同じ様な目に遭わされる可能性が高いですね。」


(サルムザーク)

「そうだな。・・・誰か帝国国内に頼れる者とか居ないのか?家族とか親族とか。」


(シーフォ)

「・・・居ません。」


(サルムザーク)

「そうか。ふーむ・・・。」


シーフォに関する嘘話を構築し作る上で注意しなければならない点は、彼女が今回の件に全く関わりの無いただの一般市民である事、セニフを含めた全員と初対面である事を強くうたい示した上で、彼女がしばらくの間この基地に留まれる様に話の流れを仕向ける事だけであり、特にこれと言って小難しい壮大なストーリーが必要だった訳でもなく、嘘話の内容を考えるのも説明し示すのも比較的容易簡単で、会話の流れもほとんど淀み無く当初目論んだ落ち所へと向かって進み行っている感じだった。


ただ、一つだけ小面倒臭い問題があったとすれば、それは、彼女が完全に他国の人間であった事、そうそう簡単に入国、滞在が赦されないであろう流れ者的存在である事が上げられるが、それもまた、諜報部に属するギャロップと言う心強い味方が居てくれたおかげで、それなりに体良ていよく言い包められるであろう妙的道筋をしっかりと見出し切れており、彼女達の間でも、それ程大きな問題として認識されていなかった。


(サルムザーク)

「それで?君はこれからどうするつもりなんだ?帝国に帰りたくないと言う訳ではないんだろ?」


(シーフォ)

「それは、そうですが・・・。」


(サルムザーク)

「テルアムントまで帰る足がないと言うのであれば、こちらで特別に用意してやってもいい。帝国、トゥアム共和国、両国公認の定期便だ。比較的安全に帝都まで帰れるぞ。」


(カース)

「二佐。」


(サルムザーク)

「大丈夫だ。その程度の根回しぐらい何とでもできる。・・・で?どうする?」


(シーフォ)

「・・・あ、あの、大変不躾ぶしつけなお願いがあるのですが、しばらく私をこの基地に置いてもらえないでしょうか。」


(サルムザーク)

「この基地に?」


(シーフォ)

「はい。掃除、洗濯、炊事、何でもいたします。ですから、お願いします。」


(サルムザーク)

「いや・・・、申し訳ないが、全く関係の無い他国の一般市民を基地内に留まらせておく事は出来ない。確かに現状、この基地には数多くの帝国人が日常的に出入りしたりしているが、それはあくまで特別な認可をしっかりと受けた者達に限られているし、滞在時間も長くて半日程度、基本的にはそれぞれの用事が済んだ時点で即刻退去してもらう事にしている。勿論、基地周辺部の戦闘状況が著しく激化した場合などは、特例的に滞在時間を延長する事もあるがな。ただ、こう言った状況下ではあるし、難民居住区にならば特別な申請がなくとも早々に滞在が認められるだろうと思う。・・・そうだな。ランベルク近辺は難しいかもしれないが、サルフマルティアの難民居住区ならば確実だ。」


(シーフォ)

「難民居住区ですか・・・。」


(サルムザーク)

「後は、情勢的にやや不安定だが、オクラホマ都市と言う手もある。あそこなら帝国の人間も数多く居るし、生活するにも然程困らないんじゃないか?」


(シーフォ)

「いえ、えーと・・・、その・・・、どうしてもこの基地に置いてもらう事はできないのでしょうか?」


(サルムザーク)

「・・・と言うと君は、帝国に帰れないからこの国に居たい・・・とかそう言う事ではなく、この基地自体に居たい・・・と、そう言う事なのか?」


(シーフォ)

「はい・・・。」


(サルムザーク)

「何故だ?何か理由があるのか?我々は別に、助けてもらったお礼になんてものを期待したりしていないぞ。」


(シーフォ)

「いえ、実は私・・・・・・、幼い頃から姉妹の様に育った非常に仲の良い『セシル』と言う大親友が居たのですが、3年程前に、不幸な事故で、突然にお亡くなりになられてしまって・・・、非常に元気の良い、誰からも愛される優しい御方でしたのに・・・。」


(セニフ)

「・・・。」


(サルムザーク)

「・・・それで?」


(シーフォ)

「似ているんです。その御方に。容姿といい、話し方といい、とても他人とは思えない程に似ているのです。こちらにられる、セニフ様が・・・。」


(サルムザーク)

「セニフ様?」


(シーフォ)

「あ、いえ・・・、私、元々が非常に低い身分の家格の出身なもので、他者様をお呼びする際には、必ず敬称を御付けする様に心掛けているのです。どうか余り御気になさいません様に、サルムザーク様。」


(サルムザーク)

「サルムザーク様??」


(シーフォ)

「先程、こちらにられるチャンペル様に教えていただいたのです。」


(チャンペル)

「チャ、チャンペル様・・・。」


(シーフォ)

「奥にられるもう一人の方は、カース様ですよね?」


(カース)

「・・・。」


(サルムザーク)

「・・・・・・えーと、つまり君は、事故で亡くなったその友人と非常に良く似た人物であるセニフと一緒に居たい・・・、だからこの基地に居たいと、そう言う事なのか?」


(シーフォ)

「はい。全く持って私事なのは解っています。ですが、どうかお願いします。私をこの基地に置いてください。本当に・・・、本当に・・・、他人とは思えなくて・・・、セニフ様と一緒に居たいんです。どうかお願いします。」


(サルムザーク)

「うーん・・・・・・。いや、理由は解った・・・。解ったがな・・・・・・。」


シーフォがこの基地に留まり住まえる様にする為には、まず、シーフォ自身がこの基地に居たいのだという自らの意思をはっきりと示し、それなりに筋の通った納得の行く理由を持って、サルム等の理解をある程度取り付け遣る必要がある。


そしてその上で、ギャロップが彼女の願いを汲み取り叶える体良ていよき解決策をサルムに提示し出し、彼の了承を無理無くさくりと得取り付けに掛かる・・・と言う流れになるが、この時の彼等は、更に抜け目無くもう一段階先を見据えた妙的目論みをしっかりとそこに含め入れていた。


それは最終的に、シーフォがこの基地に留まり住まう事を許された後に、より良く利いて来る妙的な布石と言える代物で、表向きに初対面であるはずのセニフとシーフォが、急激に親密な関係に発展し行っても不自然ではない様に見せかける為の、シーフォが思わずセニフの事を間違えて「セシル様」と呼んでしまっても、周囲の者達に怪しまれない様にする為の非常に効果的な予防線だった。


とどのつまり彼等は、この基地に留まりたいと言うシーフォの希望が通り叶わぬなどとは微塵も考えていなかった。


(ギャロップ)

「二佐。こう言うのはどうでしょう。彼女は我々に味方する現地協力員の一人と言う事にするんです。」


(サルムザーク)

「現地協力員?」


(ギャロップ)

「はい。今現在、諜報部では、帝国国内における活動の幅を広げる為、現地の内情に詳しい協力者なる人物を数多く欲しています。そして、その中でも特に、我々にとって有益であると判断し得る人物に限っては、現地責任者の権限を持って、諜報部付きの現地協力員と言う特別な肩書きを付与する事が可能です。」


(サルムザーク)

「・・・その、諜報部付きと言う特別な肩書きを、彼女に与えると?」


(ギャロップ)

「そうです。それによって彼女は、表立って堂々と我々と行動を共にする事が出来る様になり、多少の行動の制限は付きますが、我々と同様にこの基地を自分の根拠地として使用する事が可能となります。」


(サルムザーク)

「ふーむ・・・。確かに、諜報部内で完結し切る話になるのであれば、我々には挟む口も無いが・・・。ただ・・・、本当に良いのか?彼女は何をどうひっくり返して見ても只の一般市民だぞ。」


(ギャロップ)

「帝都周辺部の現状を知る人物と言うだけでも、我々にとっては貴重な存在です。特にこれと言って大きな問題になる事はないでしょう。それに・・・。」


(サルムザーク)

「それに?」


(ギャロップ)

「元々は自分が撒いた種・・・、いや、拾ってきた種ですから、出来れば自分自身の手で、しっかりと責任を持って対処したいと思っていたのです。なるべく二佐の手をわずらわせずに済む様にと。」


(カース)

「・・・。」


(サルムザーク)

「うーむ・・・。」


ちなみに、ギャロップは、このシーフォと言う女性が一体何者であるのかと言う事を知らない。


彼女が今回の一件にどう関わっていて、セニフと一体どんな関係にあるのか、何故セニフの事を「セシル」と呼ぶのかと言う事を全く知らない。


全く知らないながらにして、今回、彼女の事をパレ・ロワイヤル基地内にかくまうと言うセニフ達の案に、二つ返事で賛成する意思を示した。


パレ・ロワイヤル基地へと戻り帰る道中、車の後部座席で取り敢えず三人だけの秘密の会議を開きたいと言うシルの提案を快く受け入れ、自分だけが蚊帳の外に捨て置かれると言う不遇なる立場に、何一つ文句を吐き零そうとしなかったし、シーフォの基地滞在が認められたあかつきには、彼女に対してもセニフと同様、それなりの護衛を付けなければならないと言う小面倒臭い状況をも、簡単に甘受し取る構えを見せた。


勿論、彼の本心としては、シーフォと言う人物が一体何者であるのかと言う事を知りたかっただろうし、セニフを取り巻く酷く謎めいた境遇に関しても色々と情報を集めたかったに違いないが、「如何に親密な者であっても、信用にたる者であっても、そう簡単に情報を開示する訳にはいかない」と言う、セニフ達の思いを非常に強く尊重し取ってくれていた彼は、今回も余り多くの事を詮索せずに済まし、今後をどうすべきかと言う事だけについて思案を巡らす態度を突き通してくれたのだった。


(サルムザーク)

「・・・一応、軍上層部には諜報部の方からそう言う要望があったと言う事を伝えておく。彼女の処遇に関しても、諜報部に解放してやった権限の範囲内でなら自由に設定してもらって構わない。」


(ギャロップ)

「解りました。」


(サルムザーク)

「・・・と、言う訳で、君は今日からトゥアム共和国の諜報部付き現地協力員と言う扱いになる。今後は彼の指示に従ってくれ。」


(シーフォ)

「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます。」


(ギャロップ)

「それと二佐、今後の彼女の処遇に関してですが、我々としては、彼女に諜報部の作戦会議に出席する『フリ』をしてもらうだけで十分ですので、普段は何か、基地内の雑用でも手伝ってもらおうかと思っています。彼女も手持ち無沙汰ぶさたでは何かと暇を持て余すでしょうし、如何でしょうか?」


(サルムザーク)

「うーん・・・、暇を持て余した諜報部の人間が自ら進んで雑用を買って出た・・・とすれば、我々には特に拒否する理由もないか・・・。基地の人員も十分に足りてるとは言えないし・・・、よし、良いだろう。詳細についてはチャンペルと相談して決めてくれ。いいな?」


(チャンペル)

「え?・・・あ、はい。解りました。」


ギャロップと言う人間が真に信用に足る人物なのかどうかは、未だによく解らない。


見るからに温厚で人当たりが良く、素晴らしく協力的で思慮深くもある彼の人となりが、決して私利私欲の為に突き走る様な身勝手な人間でないと言う事を如実にょじつに物語ってはいるが、処刑されたはずの帝国の皇女である・・・などと言う、非現実的且つ激烈的なセニフの素性を知り得て尚、絶対に100%心変わりしない保証など何処にもない。


勿論、セニフもシルも、では、一体何をどうすれば信用し切る事が出来るのか・・・と言う問いに対するより良き回答をしっかりと用意できていたかと言えばそうではなく、彼女達自身も、「実際にその事実を明かし告げてみるまでは解らない」のだと言う事を暗に理解して取っていた訳だが、自ら達の命運をそのまま左右する事になる大博打的一手を打ち放つ勇気が、この時の彼女達にはまだ足りていなかった。


だが、もはや自分達の安泰が彼の存在無しでは成り立たない、彼が形作る加護の中で過ごし暮らす以外に無いのだと言う事も、既に理解して取っていた彼女達二人は、余りそう遠く無い近い将来に、その日を迎えなければならない様な予感がしていた。


特に、シーフォと言うセニフの過去をじかに良く知る幼馴染的人物が、目の前に現れてからは・・・。


(サルムザーク)

「では最後に、我々の今後の身の振り方についてだが、サフォークの件に関しては戦闘中に行方不明になったと言う事で押し通す。奴が実際に基地内で不穏な動きを見せていたと言う事については、絶対に他言無用だ。」


(ギャロップ)

「解りました。」


(サルムザーク)

「彼女の件に関しては、先程話した通りで良いだろう。諜報部付きの現地協力員と言う事で、基地内に通達を出しておく。」


(シルジーク)

「セニフの件は?」


(サルムザーク)

「今更取り繕っても仕方あるまい。実際に昨日から今朝方にかけて基地内に居なかった事は、既に多くの者が知っているんだからな。基地内に侵入した帝国軍の工作員に人質として捕らえられ、基地外へと連れ去られた。そしてその後、諜報部の方々とお前とで、何とかセニフを救出する事に成功した。それ以外に何かあるか?」


(シルジーク)

「いや・・・、別に・・・。」


(サルムザーク)

「それと・・・、ええと・・・、まだ名前を聞いていなかったな。」


(シーフォ)

「ドリュ・ル・シーフォと言います。サルムザーク様。シーフォとお呼びください。」


(サルムザーク)

「ああ・・・、シーフォ。取り敢えず、今後の詳細についてはギャロップの方から説明があるだろうから良いとして、私の方から一つ、君に言っておかねばならない事がある。」


(シーフォ)

「はい。何でしょう。」


(サルムザーク)

「ここは戦場だ。基地内外を問わず、何事が起きても全く不思議ではない非常に危険な殺し合いの場所だ。我々もこの基地を守る為に全力を尽くすが、だからと言って、君の安全を絶対的に保証してやる事は出来ない。解っているな?」


(シーフォ)

「・・・覚悟は出来ています。」


(サルムザーク)

「そうか・・・。それならばいい。私からは以上だ。お前達の方から他に何かあるか?」


(ギャロップ)

「特にありません。」


(シルジーク)

「右に同じく。」


(セニフ)

「私もありません。」


(サルムザーク)

「よし。では話はこれで終わりだ。これにて解散とする。長い時間拘束してすまなかったな。シルもセニフも、今日の所は軍務を免除してやるから、自室に引き取ってゆっくり休め。チャンペル。調整を頼む。」


(チャンペル)

「解りました。」


(サルムザーク)

「ギャロップ。彼女の事は任せたぞ。」


(ギャロップ)

「任されましょう。」


(サルムザーク)

「カース。先程話していた件だが、昨日カフカス砂漠南端部で全滅したと言う護衛部隊の・・・。」


やがて、その場の長たるサルムザークがソファーよりその身をのそりと立ち上げ、それまでの会話を締めくくる言葉を順々に周囲に投げ掛け始めると、それまで一同を暗に包み込んでいた妙にピリ付いた刺々しい空気感が一気に緩み散り飛び、参加者達の安堵の溜息を次々に誘い出した。


セニフも、シルも、ギャロップも、シーフォも、絶対に他の者にそれと悟り取られないように注意しながら、解散後の揺り動き様を静かに奏で出し見せていたが、ほぼほぼ目論み通りなる大勝利的成果を獲得し得ると言う素晴らしき結末に、思わず漏れ零れる小さな笑みと、お互いの健闘を称え合う視線の遣り取りを食い止める事ができなかった。


確かに、それは彼女達にとって、前進を意味するものでも、好転を意味するものでもなく、ただ単に後退しなかった、然程悪化しなかっただけと言う話でしかなかったかもしれない。


この基地に住まう事を許されたシーフォに関しても、彼女達にとっては今後のマイナス的要因にしかならないかもしれない。


だが、唐突に降って沸いた非常に困難な状況を何とか打開、乗り切ったと言う充足感を、それなりに感じ得ていた彼女達の表情は比較的明るく、自室へと引き取り戻るその足取りも、思った以上に軽い様子だった。



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