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Loyal Tomboy  作者: EN
第十話「微笑みは闇の中で、闇の向こうで」
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10-26:○悪趣味な舞台、三下俳優等の光る踊り[1]

第十話:「微笑みは闇の中で、闇の向こうで」

section26「悪趣味な舞台、三下俳優等の光る踊り」


奥深い山岳密林地帯より脱し出て程なくして、彼女達はようやく安全圏と言えるL19-P36ルート沿い・・・、「パレ・ロワイヤル基地」と「スーリン」とを結ぶ街道路付近へと合流し入る事に成功し、その後、約一時間半程の時をかけて、自身達の拠点基地であるパレ・ロワイヤル基地へと戻り帰った。


時刻的には朝の五時半を回ろうかと言う時頃を過ぎ、パレ・ロワイヤル基地内では、周辺部の哨戒任務をまかない担う深夜組みと早朝組みとの入れ替え作業が、ひっきりなしに執り行われる繁忙期の真っ只中に突入し入っている様子だったが、どうやら昨日勃発した山賊野党軍との戦闘による影響などはほとんど無さそうで、ぴりぴりと張り詰めた色濃い緊張感も、異様に殺気めいた重苦しい空気感も全く感じ得なかった。


だが、今し方この基地へと舞い戻り帰って来た彼女達四人は、未だに昨日の騒動事のしがらみに深く色濃く取りかれたままで、ようやく訪れた安息の一時にホッとなる溜息を付き放ち遣ったのも束の間、直ぐに次なる障壁の前へと誘われ進み行かねばならなかった。


(サルムザーク)

「確かに報告は全て事後で良いとは言ったがな。これ程までに時間がかかるのであれば、定期的に経過報告を入れるぐらいして欲しいものだ。」


(ギャロップ)

「それについては申し訳ありません。こちらも色々と面倒事を抱え込んでいたもので・・・。」


(サルムザーク)

「まあいい。で?敵の工作員を追って基地外へと飛び出して行ったと言う話だが?」


(ギャロップ)

「はい。我々はあの後、直ぐに第四格納庫の裏手付近に潜んでいた敵の工作員を発見する事に成功したのですが、拘束を試みるよりも前に人質を取られてしまいまして・・・、恥ずかしながら、工作員の逃走を許容せざるを得ない状況に陥ってしまいました。」


(サルムザーク)

「その人質と言うのがセニフ・・・と言う事なんだな?それで突然、基地内から姿を消したと。」


(ギャロップ)

「はい。幸いにも、逃走する工作員の車に発信弾を打ち込む事には成功しましたので、その後の追跡は特に支障なく遂行できたのですが、何分、彼女の救出を第一優先に考える必要がありましたので、工作員の身柄を拘束する事までは出来ませんでした。」


(サルムザーク)

「ふーむ。」


非常に豪華、意味もなくきらびやかな数々の装飾品に囲まれた基地内の一室において、彼女達は、来客用に据え置かれていた風変わりな長ソファーの上に座っていた。


対面側の長ソファーの中央部には、パレ・ロワイヤル基地の防衛司令官たるサルムザーク二等陸佐が、やや踏ん反り返り気味の体勢でででんと座り、その後ろに、ネニファイン部隊の副隊長であるカース作戦曹長が、何処となく疑わしげな視線をあからさまにたずさえ光らせながら直立しており、それなりに納得の行く説明をと強く求める鬱々(うつうつ)しき空気感を色濃く形作っていた。


そう。彼女達の目の前に最後に立ちはだかったのは、彼女達の上司であるサルムザーク二等陸佐とカース作戦曹長の両名であり、彼女達は、パレ・ロワイヤル基地へと帰還し着く成りすぐさま基地司令官室へと呼び出され、昨日から今現在へと至るまでに生じ起きた出来事の詳細報告を求められたのだった。


勿論、予めそうなるであろう事を既に予測し上げていた彼女達は、基地へと帰り戻る長い道中内において、しっかりと妙味の利いた信憑性の高い嘘話を作りこしらえ上げており、それなりにつじつまを合わせて上手く説明し付ければ、然程もなく直ぐに解放されるであろうと安易に考えていた。


(サルムザーク)

「第四格納庫裏に潜んでいたと言う敵の工作員は、確かに帝国軍の手の者で間違いないんだな?」


(ギャロップ)

「はい。恐らくはその線で合っていると思います。私達は最終的に、連れ去られたセニフの後を追って、敵の根拠地とおぼしき小規模な軍事施設内へと潜入する嵌めになったのですが、そこに居た兵士達の多くが帝国軍の軍服を着用していましたし、施設周辺部に配備されたDQや軍事車両も皆、帝国製のものばかりでした。」


(サルムザーク)

「規模はどのぐらいだ?」


(ギャロップ)

「兵士の数自体は施設内に4、5人、施設外に2、3人と言った所でしょうか。DQに関しても1小隊分が野ざらしに並べ立てられていただけで、大規模部隊が駐屯できる様な施設ではありません。」


(カース)

「物資補給用の中継基地か何かでしょうか?」


(サルムザーク)

「恐らくな。で、その敵の工作員についてだが、トゥアム共和国軍の軍服を着て紛れ込んでいたのか?」


(ギャロップ)

「はい。輸送部隊の作業着を着込んでいました。見た感じから言って、30代か40代の小柄な男のようでした。」


(サルムザーク)

「基地内で見かけた事のある顔か?」


(ギャロップ)

「いいえ。見た事のない顔でした。少なくとも私の知る限りでは。」


(サルムザーク)

「他の二人はどうだ?」


(シルジーク)

「俺も見た事は無いな。」


(セニフ)

「私も見た事はありません。」


(サルムザーク)

「ふーむ。・・・では次に、セニフが敵の工作員に捕まった時の状況についてだが、その場に居合わせたのはお前達三人だけか?それ以外に誰か居合わせた者が居るのか?」


(ギャロップ)

「いいえ。我々だけです。」


(サルムザーク)

「捕まったのは第四格納庫裏のハンガー内部と言う事でいいんだな。」


(ギャロップ)

「はい。」


(サルムザーク)

「セニフ。何故一人で格納庫裏に行った。第一種戦闘配備中だったと思うが。」


(セニフ)

「それは・・・、その・・・、私、その前の演習で、ちょっと馬鹿げた勝負をしでかしちゃって、それでその後、シルに物凄く怒られちゃって、・・・ちょっと一人で、反省しようかなぁなんて、そう思って・・・。」


(カース)

「反省する為に軍規を破るなんて、本末転倒もいいところです。私が先日あなたに言って聞かせた話は一体なんだったのかしら?あなたには何か、特別な罰を与える必要がありそうですね。」


(セニフ)

「う・・・、ご、ごめんなさい・・・。」


(サルムザーク)

「まあ、それは一旦別に置いておくとして、整備班のサフォークと一緒ではなかったのか?聞いた話によると、二人で格納庫裏の方へと歩いて行くのを見たと言う者が居るんだが?」


(セニフ)

「え?・・・いや、えっと・・・、サフォークとは事前に別れたんです。売店の前付近で。」


(サルムザーク)

「と言う事は、それまでは奴と一緒に行動していたんだな?」


(セニフ)

「はい・・・。」


(サルムザーク)

「奴と一緒になったのは何時いつ頃だ?最初から格納庫内に居たって訳じゃないんだろ?」


(セニフ)

「え?・・・、ええと・・・、それは・・・。」


(シルジーク)

「奴が格納庫内に顔を出したのは、誤報が鳴り響いた後、しばらくしてからの事だ。その前はいつも通り、何処ぞかでのんびりと楽しく油を売っていやがったんだとさ。全く・・・。」


(サルムザーク)

「では、それ以前に奴の行動で何か気になった点はあるか?」


(セニフ)

「気になった点?・・・うーん、何かあったかな・・・。」


(シルジーク)

「そりゃもう、気になる点の方が多過ぎて、一体何処から指摘すれば良いのか困るってレベルだよ。逆に、急に真面目に仕事するようになったとかなら、気持ち悪くて直ぐに違和感を感じたんだろうけどな。特にこれと言って何も無し、至って普段通りだったよ。」


(サルムザーク)

「そうか。ふーむ・・・。」


この時、セニフ達が用意した対サルムザーク用の作り話の内容は、その場をてい良く切り抜け行ける様にと非常に簡素簡潔にまとめ上げたこじんまりとした代物で、帝国軍の工作員なる架空の登場人物を上手く利用して、自分達にとって都合の悪い物事を全て其奴そやつの仕業となすり付け遣ろう、事の結末部を有耶無耶うやむやのままに終わらせ済まそうと言う、無理矢理ながらも非常に防御力の高いそれらしきストーリー構成となっていた。


当然、今回の一件に関わっていると知れると非常に面倒臭い事態に陥ってしまうサフォークやユァンラオらの名前は一切出さないつもりだったし、セニフが連れ去られたのも、偶々そこに居たからと言う突発的な偶然性を非常に色濃く強調した傍流ぼうりゅう的な扱いにしてあったし、どのような質問を投げ掛けられても、ある程度は簡単に受け答えできるよう万全の体勢を築き整えてきたつもりだった。


ところが、今し方遣り取りされた会話の内容と、目の前で深く考え込む様な仕草を見せるサルムの表情から察し取るに、どうやら彼は既に、サフォークに対して何かしらの色濃い懐疑的な思いを抱き持っている様子であり、サフォークとの関係性を非常に強く疑い勘繰り突いて来ている風であり、明らかに話の流れがかんばしくない悪不味い方向へと向かって行き進んでいる感じだった。


セニフ達三人が、サフォークの事を完全なる無関係者であると言う扱いにして、事態の蚊帳の外に置き放とうと試みていたのは、実際に、彼が犯した犯行の一部始終を隠匿いんとくし、誤魔化ごまかし通し終わらせてやろうと画策していたからではあるが、別に、昔のよしみで何とか体裁ていさいを取り繕ってやろうとか、彼の事をかばってやろう、守ってやろうとか思っていた訳ではない。


単に、そんな危険なスパイ的人物と長らく仲間をやっていましたなどと言う、非常にバツの悪い事実を周囲に知られたくなかったから・・・、それを知られる事によって、自分達に無用な疑いの目を向けられるのではないかと危惧していたからだ。


だが、サフォークの事に関して完全に素知らぬ風を決め込み突き通し行くにしても、既に周知の事実として捉え得られている部分に関しては、彼女達も素直に認める態度を示し出さねばならず、彼女達はその後、一体何処までを認めて何処から虚偽ればいいのか全く解らないと言った非常に悶々とした不安定な状況のまま、五月雨式さみだれしきに投げ掛けられるサルムの質問攻撃に耐え忍ばねばならなくなってしまう。


(サルムザーク)

「セニフ。サフォークと別れた時、どこに行くとか、何をするとか言っていなかったか?」


(セニフ)

「え?・・・いえ、特に何も・・・。」


(サルムザーク)

「格納庫方面ではなく、中央区方面に向かったと言う認識でいいんだな?」


(セニフ)

「えっと・・・・・・、はい・・・。」


(サルムザーク)

「奴は第一通路をそのまま真っ直ぐ進んで行ったか?それともE2通路方面に曲がったか?」


(セニフ)

「・・・うーん、・・・ちょっと覚えていません。」


(カース)

「東部エリアに戻ったのであれば、もう一度映っていてもいいはずですが。」


(サルムザーク)

「中を使ったとは限らんさ。外から回って東側に抜け出る手もある。」


(シルジーク)「・・・。」


(サルムザーク)

「そう言えば確か、お前等は以前、奴と同じDQAチームに所属していたよな。」


(シルジーク)

「していたけど・・・、それがどうかしたのか?」


(サルムザーク)

「奴がそれ以前に何をしていたか解るか?」


(シルジーク)

「何をって、チームTomboyに所属する前って話か?・・・うーん、何処かの専門学校に行っていたとか聞いた事はあるが・・・。」


(サルムザーク)

「いや、そこまでは解っている。それ以前の話だ。」


(シルジーク)

「・・・いや。全く。」


(セニフ)

「私も知りません。」


(サルムザーク)

「実は帝国からの流れ者だったとか、そう言う事は無いか?」


(シルジーク)

「無い。・・・と、断言はできないが、恐らくそれは無いと思う。」


(セニフ)

「私も、そう思いますけど・・・。」


(サルムザーク)

「ふーむ・・・。」


(シルジーク)

「・・・ってか、何でそこまでサフォークの事について聞くんだ?あいつ、また何かやらかしたのか?」


(サルムザーク)

「・・・お前達、本当に何も知らないのか?」


(シルジーク)

「何をだよ。」


(サルムザーク)

「・・・まあいい。やらかしたかやらかしてないかで言えば、解らないとしか答える事が出来ないが、やらかした可能性が非常に高いだろうと思っている。」


(シルジーク)

「やらかした可能性が非常に高い?」


(サルムザーク)

「カース。」


(カース)

「はい。」


だが、サルム自身、セニフ達から彼是あれこれと根掘り葉掘り話を聞いた所で、事の詳細が全て明らかになるとは考えていなかった様子で、これ以上会話を続けても無駄、有益な情報は得られないであろうと判断するや否や、直ぐに前掛かり的になっていた尋問体制を緩め解き、静かに上体を仰け反らせ倒して、ドッカとソファーに背をもたれ掛けさせた。


そして、全く他意無き極々自然な感じで白々しき問い返しを投げ掛けて来たシルと徐に視線をかち合わせると、自らが発した小さな合図に合わせて背後部より差し出された一枚の写真を手に取り、ゆっくりとそれを三人の目の前に提示し出した。


(サルムザーク)

「これは東部エリアの閉鎖区画入り口付近に設置された監視カメラの映像だ。誰が写っているか解るか?」


(セニフ)

「・・・・・・サフォーク、・・・っぽいね。」


(シルジーク)

「どう見たって奴だろ。」


(サルムザーク)

「その映像が撮られたのは昨日の午後1時13分頃。右下にある数字がそれだ。」


(シルジーク)

「午後1時13分?」


(サルムザーク)

「誤報が鳴る約20分程前の話だな。」


(シルジーク)

「は?」


(ギャロップ)

「・・・まさか、誤報の原因となったサーチシステムを起動させたのが彼であると?」


(セニフ)

「え?」


(サルムザーク)

「そうでなかったとしても、敵の工作員を手引きしていた可能性はある。」


(シルジーク)

「ちょっと待てよ。サフォークが敵の工作員を手引きしていた?一体何の為に?何の得があってそんな事をするって言うんだよ。ただ単に、その辺を適当にぶらついていただけって事もあるじゃないか。」


(サルムザーク)

「確かにそれもある。だが、然したる理由も無くこんな所をうろついているのは明らかに不自然だし、誤報が鳴るこの直前のタイミングで、東部エリアに進入しようとした奴の行動も、非常に怪しいと言わざるを得ない。」


(シルジーク)

「・・・。」


(サルムザーク)

「奴自身に何らやましい所がないと言うのであれば、素直にこちら側の召喚に応じて事の次第を正直に説明してくれればいい。だが、今現在の奴は、何処いずこかへと姿をくらませたまま、完全に行方不明の状態だ。」


(ギャロップ)

「行方不明?・・・彼がですか?」


(サルムザーク)

「ああ。昨日の午後2時頃にセニフと一緒に行動している所を目撃されたのを最後にな。」


(セニフ)

「・・・。」


(シルジーク)

「・・・昨日の戦闘に巻き込まれて・・・とか、そういう事は無いのか?」


(サルムザーク)

「昨日の戦闘で基地周辺部に被害が及んだと言う報告は受けていないし、それは無いだろう。恐らく、基地外に逃亡した可能性が一番高い。」


(シルジーク)

「逃亡って・・・、まさかそんな・・・。」


(サルムザーク)

「逃亡するからにはそれなりの理由がある。それが何にせよ、逃亡せざるを得ない程のものだったと言う事だ。俺の見立てでは恐らく、昨日この基地を襲った山賊連中共々、帝国軍の思惑に何かしら関係したものなのだろうと思っている。」


(ギャロップ)

「山賊・・・と言いますと?・・・昨日この基地を襲った連中がですか?」


(サルムザーク)

「ああ、実際にこの基地を襲った連中は帝国軍では無い。ほぼ間違いなく、魔境の森に住まう山賊と呼ばれる野党集団だ。ただ、帝国軍が山賊連中の動きに呼応して攻撃を仕掛けてくる様な気配は全く無かったし、山賊連中も、端からこの基地を攻め落とす気が無い様な消極的な立ち振る舞いに固執し切っていたし、一体何を目論んで今回の騒動を引き起こしたのかは不明のままだ。その思惑が成功したのか、失敗したのかと言う事も含めてな。」


サルムがサフォークに対して抱いていた疑念の正体は、実際にセニフの拉致を敢行した彼の悪的行為そのものに対してではなく、昨日の誤報を生じさせる原因ともなった、第三作戦司令室内での索敵システム無理矢理起動事件に、深く関わっているのではないかと言う憶測から来るものだった。


これまで彼が獲得し得た真実なる情報の駒も然程多くは無く、セニフ達三人が作り上げた嘘話の内容を怪しいと疑って掛かるだけの量と質に満ち足り切っていなかった様子で、白々しきすっ呆け様を持って積極的に会話に参戦し行こうとするシルの違和感無き態度や、無言なれども適宜状況に応じた驚き様、うつき様を極々自然な感じで形作って見せるセニフの妙的演技が著しく光り輝いた事も相俟あいまって、サルムの意識の只中に「こいつらは偶発的な関係性以外には何もなさそうだな」と言う、狙い通り思いを色濃く植え付ける事には成功した様子だった。


確かに現状、彼女達三人が当初目論んでいた「サフォークの事を完全に蚊帳の外に置いておく」と言う目的を果たす事は難しそうだが、それでも、何とか事の結末部を有耶無耶うやむやのままにして遣り過ごす事は出来そうな感じで、やがてその場の雰囲気は、それまでの話をまとめ終わらせる方向へと流れ進んで行く事になる。


(サルムザーク)

「まあ、何も解らない者同士が幾ら雁首がんくびそろえたところで、真実味のある結論を得られる訳じゃないし、当の本人を抜きにして考え込むのもここまでだな。これ以降の話は、諜報部の方に任せる事にしよう。」


(ギャロップ)

「解りました。取り敢えず、逃走した彼の行方を追う作業に平行して、彼の過去の経歴と交友関係についても洗ってみます。」


(カース)

「・・・それと二佐。今後、基地内の警備をもう少し強化する方向で検討した方がいいのではないでしょうか。」


(サルムザーク)

「当然だ。幾ら不慣れな敵の基地とは言え、これ以上知らない所で好き勝手をされるのは困るからな。」


(カース)

「では、本日中に人員の手配書を上層部の方に提出しておきます。それで、今回の件についてですが・・・。」


(サルムザーク)

「サフォークの件については黙っておいた方が良いだろうな。ただ単純に、敵の工作員に潜入された。それでいい。」


(カース)

「解りました。」


(サルムザーク)

「それともう一つ、お前達が連れて来た・・・。」



ピンコーン。



(サルムザーク)

「ん?・・・ああ。丁度良い。入れ。」


(チャンペル)

「失礼します。」


・・・だが、今し方ようやく収まり終わろうとしていたそれまでの話は、セニフ達にとっては一つ目の障壁でしかなかった。


勿論、それまで遣り取りされていた小面倒臭い問題に比べれば、それ程大きな問題に発展しそうにない些細なるものだったが、彼女達にとっては決して軽視し得るものではなく、サルムの促しによって司令官室へと連なって入室して来た二人の若い女性の姿を目の当たりにするなり、彼女達三人は僅かに身を仰け反らせ丸めながら一様にして心の面持ち様を色濃く身構えさせた。


深緑色の長い髪に優しげな釣り目が特徴的な女性、ネニファイン部隊の通信オペレーター兼秘書官たるチャンペル・シィの後に続き歩き入ってきたのは、恐らくはチャンペルの私服であろう萌葱もえぎ色のブルゾンとへき色のタイトスカートに身を包んだ、綺麗な薄墨色のボブカットの少女、ドリュ・ル・シーフォだった。



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