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Loyal Tomboy  作者: EN
第十話「微笑みは闇の中で、闇の向こうで」
199/245

10-05:○錯綜する意思と視線[4]

第十話:「微笑みは闇の中で、闇の向こうで」

section05「錯綜する意思と視線」


(ペギィ)

「ちょっとあんた達!早く敵をあぶり出しなさいよ!全然撃てないじゃないの!」


(セニフ)

「そ・・・、そんな事言われても・・・。」


(ジルヴァ)

「あー!もう!いいからお前は黙って待っとけって!糞やかましいんだよ!この馬鹿女!」


(ペギィ)

「何よ!馬鹿女はそっちじゃないの!ポンスカポンスカ馬鹿みたいに撃たれちゃってさ!どうすんのよこっから!全然差が縮まらないじゃないの!絶対に作戦ミスよ!」


(ジルヴァ)

「ギャーギャーギャーギャー喚くな!そんな暇があるんだったら、援護の一つでもしてみやがれ!」


(ペギィ)

「それが出来ないから喚いているんでしょ!?やれるもんならもうとっくにやってるわよ!大体ね!盛りの付いた馬鹿うましかみたいに考えなしに暴走してくのが悪いんでしょ!?見なさいよ!あんた達!身動き一つ取れなくなってるじゃないの!」


(ジルヴァ)

「うるさい!お前の援護がもう少しマシなら、もっと良い場所まで行けたんだっつうの!人のせいにばっかしてんじゃねぇよ!」


(ペギィ)

「なんですってぇ!?」


(セニフ)

「ちょ・・・、ちょっとちょっと!二人とも喧嘩してる場合じゃないよ!もう時間ないって!」


(ジルヴァ)

「そんな事は解ってるんだよ!お前も少し黙ってろ!」


(セニフ)

「え?・・・えぇー?」


(ペギィ)

「・・・ふんっ。何が隊長よ。偉そうに。口先ばっかりの癖してさ。」


現時点における戦況は、赤チーム側にとって非常に不利な状況、最悪の状況であると言えた。


最北端部に居座るランスロットの存在により、余り大胆な行動に打って出る事が出来なかったジルヴァとセニフは、進む事も戻る事も容易には叶わぬ飛び島の様な死角地にはまり込み、只々無意味に時間が流れ進むのを待っている事しか出来なかった。


これはもはや、作戦ミスと言われても仕方がない状況であった。



だが、ジルヴァの頭の中に、この状況を上手く打開し遣る為の妙的みょうてき手立てが、全く無かったと言う訳では無く、逆転を目して打ち放てる作戦案が一つだけあった。


それは、決して詭計奇策きけいきさくに類するような特殊なものでは無く、近接戦闘を主とする者達であれば、最初から選択していて然るべき月並みな戦法・・・、「数的優位な状況を作りこしらえて徹底的に攻め続ける」と言う、極々ありふれたものだった。


・・・にも関わらず、ジルヴァがその戦法を中々選択しようとしなかったのは、なるべくなら他人の手は借りたくない・・・、自ら自身の能力のみを持って、この難局を打開したいと言う思いが強くあったからで、彼女は特に、最近その評価がうなぎ上りの状態にあるセニフに、助けをう様な真似だけは絶対にしたくないと考えていたのだ。


しかし、このまま何もせず手をこまねき続けていたのでは、自らが率いる小隊チーム側が「完全敗北」と言う情けない四文字に塗れかれて、ていの良い晒し者的笑い話を皆に提供してしまう事にもなり兼ねない・・・。


彼女はここで、ようやく自らが持つ非常に色濃い負けず嫌いなる思いを、無理矢理に別方向へと振り向かせ据え付けると、透き通る様に青い瞳の奥に、恐ろしく濃密でいて鋭い攻撃的意識の全てをごうごうと燃やし宿らせ入れた。


(ジルヴァ)

「・・・おいセニフ。今直ぐ私の所まで来い。全速力でだ。」


(セニフ)

「え・・・?でも、それじゃ・・・。」


(ジルヴァ)

「ランスロットの奴には撃たれても構わん。ペギィはフロルを牽制。私とセニフ、二機掛かりでデルパークを一気に攻め立てる。」


(ペギィ)

「それって、相手と点の取り合いをするって事?」


(ジルヴァ)

「そうだ。タルカナスの主砲はどうやったってリロードに時間がかかる。そこが狙い目だ。」


(ペギィ)

「要はその隙を突いて、相手以上のポイントを稼ぎ出そうって腹ね。非常にかっこ悪くてダサダサな作戦だけど、ま、この際仕方がないっか。」


(ジルヴァ)

「セニフ。私が一度デルパークに突っかける。それを合図に一気に前線を横断しろ。」


(セニフ)

「了解。」


青チーム側の狙撃手であるランスロットが、如何に自身の能力をフルに発揮し出して攻撃を敢行しようとも、全自動で執り行われる約10秒程の弾丸リロード時間を短縮する事は不可能である為、彼が一人で獲得し得るポイントの最大値は、10秒につき20ポイントと言う事になる。


・・・と言う事は、赤チーム側は、近接戦闘戦において、10秒の間に20ポイント分の点差を埋め得る戦果を上げ続ける事が出来れば、ランスロットの存在を完全に無視して掛かる事が出来ると言う事だ。


一対一と言う完全に意識を一点に注力出来る安易な状況下では、如何に上手く立ち回った所で、如何に攻撃の手数を増やした所で、詰め得る差は微々たるものにしかならないが、二人掛かりで相手一人に同時攻撃を敢行するのであれば、丸々一人分の攻撃ポイントを得失点差にそのまま加算し上げる事が出来る。


勿論、相手方チームのもう一人のアタッカーが、その戦いに強引に加わり入ってくる可能性は大いにあり、状況が二対二になった時点で、また再び不毛な籠城作戦に引き篭もられる恐れもあるが、そうなるよりも以前にポイント数でリードを奪い取る事さえ出来れば、青チーム側も攻撃的に攻めざるを得なくなる為、赤チーム側にとって有利な状況で戦闘を継続できる様になる。


後は、突貫攻撃を敢行するジルヴァ、セニフの腕次第、それを補佐するペギィの腕次第・・・、どれだけ青チーム側の攻撃手二人を混乱の渦中へと引きり落とす事が出来るか、青チーム側が体勢を立て直すまでの間、どれだけ多くのポイントを積み重ねられるかに、全てがかかっていると言えた。



やがて、程なくして、ジルヴァがジェフター3の機体を唐突に振り出して、デルパーク機へと猛然と襲い掛かる素振りを見せひけらかし、遮蔽物の裏陰に隠れ潜んだままの相手機と、無意味に一発づつ弾丸を食らわし入れ合う。


・・・と、次の瞬間、それに合わせ乗るかの様にフロル機へと突進を開始したセニフが、攻撃すると見せかけてトゥマルクを一気に東方側へと振り向けて、戦場を猛然と横断し始めた。(Red[+5*1][70])(Blue[+5*1][100])


(フロル)

「おや?」


(ランスロット)

「ふむふむ。やっぱり最後は二人で来るか。」


(デルパーク)

「当然だろ。フロル。」


(フロル)

「あいよ。」


だが、しかし、青チーム側は既にこれを読んでいた。


西方、東方、何れのサイドに寄り固まる事になろうとも、ジルヴァとセニフが二人掛かりで攻撃を仕掛けてくるであろうと、事前に予測し得ていた。


彼等もまた、自分達がやられて一番嫌な方法が何か、逆転される可能性が一番高い方法が何であるかを予測し、それしかないであろう結論をしっかりと導き出していたのだ。


当然、それに対する対応もぬかりなく練り上げ終えていた。


セニフが東方側へと突進を開始したと言う事は、赤チーム側が目論む主戦場は、東側端部に広がる疎らな岩石地帯と言う事になり、数的不利なる状況に陥る事を嫌った青チーム側のフロルが、直ぐさまセニフ機を追って猛追を開始する。・・・と赤チーム側は考えているであろう。


そして、それを早々に阻害し止める為に、虎視眈々とペギィがフロル機に狙いを定めているはず。


・・・と、すれば。



(ランスロット)

「まずは一発。嫌がらせ。」


バシャン!


(ペギィ)

「あっ!」


唐突に物陰の裏から飛び出させ、セニフ機の後を追い始めたフロル機の機影を確認して見取ったペギィは、徐に自らの機体をゆっくりと丘陵きゅうりょうの陰からもたげ上げると、アカイナンの右肩に装備された「120mmミドルレンジキャノン砲S型」の発射トリガーを引いた・・・が、その直前に敢行されたタルカナスの主砲攻撃により、右上腕部を見事に撃ち抜かれてしまい、僅かに狂った射線軸上に乗せてそのまま弾丸を発射してしまった。


・・・と、更にその直後、東方側で岩陰に隠れていたデルパーク機が、ジルヴァ機と対峙し合っていた側とは逆方向側に機体を振り出し、中央部へと向かってジェフター3を猛突進させ始めた。(Red[-][70])(Blue[+10*1][110])


(セニフ)

「なっ!?」


(ジルヴァ)

「やばい!」


(デルパーク)

「接近戦が不得意だからと言って、何時も何時も受け身に回るとは限らないぜ。」


(ペギィ)

「こぉのぉぉっ!」


まさか!?と一瞬、思いっきり虚を付かれた感じで凝り固まってしまったジルヴァは、飛び出し直後で無防備な体勢にあったデルパーク機の背後部に攻撃を加えるタイミングを見事にいっしてしまい、もう一つ中央寄りにあった岩陰の向こう側へと上手く逃れ込まれてしまった。


ペギィもまた、フロル機へとくくり付けていた「GRM-89スナイパーライフル」を、素早くデルパーク機へと振り替え、ジェフター3の左肩付近に見事に弾丸を命中させ遣ったのだが、その突進は一向に差し止まる様子を見せず、戦線の中央部へと単独で踊り出たセニフは、完全に青チーム側の攻撃手二人に前後から挟まれる格好になってしまった。


それはまさに、自分達が先に形成すべしと目論んでいた二対一なる状況を、青チーム側に先に作りこしらえられてしまうと言う最悪の展開・・・、追い付け、追い越せどころか、逆にポイント差を広げられてしまう由々しき事態に、追い込まれ遣ってしまった瞬間であった。(Red[+10*1][80])(Blue[-][110])


この時点で、赤チーム側が勝利し得る可能性の針は、限りなくゼロに振り付いた。


少なくとも、この戦いの一部始終を観戦していた者達はそう思った。




(フロル)

「ここで決める!」


(セニフ)

「!?」


だが、背後から迫り寄るフロル機の鋭い攻撃的意識の波動を何かしらで受けて感じ取ったセニフは、徐に奇妙な蛇行運転を小気味良く奏で遣ってこれをかわし、演習場のほぼど真ん中に立ちそびえていた、巨大な喬木きょうぼくの幹の向う側へとトゥマルクを掛け込ませた。


そして、真正面部より猛突進して来るデルパーク機と、お互いにかざし付けた「GAS97A」の弾丸を綺麗に三発づつ撃ち食らわせ合うと、そのままの勢いを上手く残し利用しながら、喬木きょうぼくの周囲を素早くぐるりと回り経遣り、後方から追走して来たフロル機へと唐突に取り付いた。(Red[+5*3][95])(Blue[+5*3][125])


(フロル)

「なにっ!?」


(デルパーク)

「フロル!」


・・・と同時に、フロルが右手に構え持っていた「ASR-RType45」の銃身に、自身が持つ「GAS97A」の銃身を当て付け上手く相手の射線を切り捨て遣り、トゥマルクの左肩を無理矢理にアカイナンの右肩に寄り付けて、120mmミドルレンジキャノン砲の死角へと入り込む。


・・・に加えて、アカイナンの左肩口に装備されたガトリングガンの銃身の先を右手で跳ね付け退けると、フロル機の動きを上手くいなし回しつつ、デルパーク機からの攻撃を体良ていよく防ぐ、盾的位置までアカイナンの機体を誘導し、トゥマルクの全機体重を駆使して、その動きを無理矢理に押さえ付けた。


(サルムザーク)

「おーおー。単なるテストだってのに、無茶しやがる。」


(カース)

「止めさせますか?」


(サルムザーク)

「いや。いい。」


そして、直ぐさまフロルの援護に駆け付けようと迫り来たデルパーク機に対して、アカイナンの右腕脇下からのぞかせ出した「GAS97A」の銃口をけたたましくうなり光らせ、ジェフター3の進路方向を南方側にあった窪地地帯へと折れ曲がらせ遣ると、巧みな機体さばきを持って盾となるフロル機を小気味良くいなし動かしながら、こう言った。


(セニフ)

「ジルヴァ!この隙にランスロットを・・・!」


(ジルヴァ)

「ああん!?」


(セニフ)

「今なら抜けられる!チャンスは今しかないよ!」


直後、ジルヴァは、窪地地帯へと落ち入ったデルパーク機との射線が、完全に途絶え切れている事に気が付いた。


続いて、ペギィ機から激しく浴びせ掛けられる弾丸を上手く避けながら、全速力で動きまくるデルパーク機3の動きを見遣り取り、セニフが言った言葉の全てを瞬時に理解して取ると、徐に視線を北方側へと振り向けた。



フロルからの攻撃は、セニフが完全に押さえ付けている。


デルパークからの攻撃は、ペギィからの攻撃を回避しながらのものである為、それ程精度は高くない。


デルパークが必死に動き回っているのは、ペギィからの攻撃を体良ていよしのぎかわす、遮蔽物が近くに無い為であり、再びセニフ機に取り付くにしても、ペギィ機に特攻するにしても、被弾をゼロで済ます事は出来ないはず・・・。


今後、ランスロットの攻撃が全て当たると仮定しても、近接戦闘において、リロード時間が長い狙撃機が、近接戦闘機よりも高い瞬発火力を叩き出す事は出来ない。・・・絶対に出来ない。


それは当然、ペギィにも同じ事が言えるが、アカイナンがそれなりに近接戦に対応し得るのに対し、タルカナスは完全に・・・。



ドウン!



その後のジルヴァの決断は早かった。


セニフ機の救出に向かおうと、ジェフター3の機体を猛然と駆り立て出した勢いを、そのままに北方側へと振り向けて、更に強くフットペダルを踏みしだき抜くと、目の前の坂丘をがむしゃらに駆け上がって行った。



(デルパーク)

「ちっ!仕方ない!俺はペギィに特攻を仕掛ける。」


(ペギィ)

「いい度胸っ!来るなら来なさい!返り討ちにしてやるわよ!」


この時、デルパークはセニフ機に取り付く事を早々に諦め、直ぐさまペギィ機へと向けてジェフターの進路方向を折れ曲がらせた。


勿論、彼は、卓越した機体操作技術を持つセニフの事を無為に恐れた訳では無いし、窪地地帯から再び坂上へと這い上がるのを面倒臭いと思った訳でもない。


ただ、荒々しく機体を揺らし動かしながら激しい鍔迫つばぜり合いを奏で出すセニフとフロルを前にして、正確にセニフ機だけを狙い撃ちする自信・・・、絶対に同士討ちをしないと言う自信が無かっただけだ。


言うまでも無く、彼は、味方機に弾丸をヒットさせれば、相手のポイントになると言う、この演習システムのお馬鹿な仕様をちゃんと知っていた。


その後、二人は、形振なりふり構わぬ壮絶な撃ち合いを至近戦にて繰り広げ合い、お互いに、それ程大差ないと言える、それなりのポイント数を順当に稼ぎ上げる事に成功した。(Red[+10*1+5*3][120])(Blue[+10*1+5*5][160])



(フロル)

「くっ・・・!なんつういやらしい動き・・・!これならどうだっ!」


(セニフ)

「駄目!そっちは駄目!・・・・・・っとっと、そのままそのまま。」


(フロル)

「ぐぐぐ・・・!」


フロルは必死にセニフ機を振り解く動きを何度も何度も繰り出し遣った。


だが、その度に小気味良く体をずり動かし、時に激しくも軽快なるステップを幾つも刻み並べながら、ねちっこくねちっこくへばり付いて来るトゥマルクの動きを完全にかわし放す事が出来なかった。


機格で上回るアカイナンの機体の全機体重を利用して、思いっきり突き飛ばし遣ろうとしても、トゥマルクの左腕を掴み取って無理矢理に引き倒そうとしても、全く上手く行く気配がなかった。


この二人が繰り広げた不毛なる戦いは、チーム演習が終わるその時まで延々と続けやられる事となったが、著しくすり減らされた体力と神経の損耗量に見合うだけの対価を、二人は全く得取り遣る事が出来なかった。(Red[-][120])(Blue[-][160])



演習場の中央部と南端部で繰り広げられた二つの戦いは、青チーム側が僅かにポイント差を広げる結果となったが、両チーム共に完全なる痛み分けと言うに相応ふさわしき状況で幕を閉じる事になった。


勿論、後になって、この二つの戦いをかえりみて取った時、痛み分けで済まし終える事が出来た・・・と言えたのが赤チーム側で、痛み分けで終わってしまった・・・と言う他無かったのが青チーム側だった事は言うまでもない。


それ程までに、演習場の北端部で繰り広げられた残る一つの戦いは一方的だった。



(ランスロット)

「うぎゃぁぁぁっ!駄目ぇぇぇっ!こないで~!まだパンツ履いてないって!お尻も拭いてないって!」


(ジルヴァ)

「散々好き放題してくれた恨みだ!しっかりと受け取りやがれ!この糞タレ野郎がっ!」


猛烈なスピードで一直線に北上し来るジェフター3へと目掛けて、タルカナスの主砲である「CCA35砲」の砲弾を発射し、再び正確に相手のコクピットハッチ部分へと命中させた所までは良かった。


・・・だが、試合終了となる30秒程前に、完全なるゼロ距離の位置まで、ジルヴァ機に肉迫されかれてしまった彼は、その後、逃げ出す事すら叶わぬ鈍足機の只中で、非常に動きが遅鈍おそのろい旋回砲塔を無意味に左右に振れつかせながら、情けない悲鳴を散々に喚き散らす事しか出来なくなってしまった。


結果・・・は言うまでも無く、彼は、ジルヴァ機から発せられた大量の弾丸を、全て綺麗に撃ち食らわされる羽目になる・・・。



(リスキーマ)

「終了時間まで残り5秒、3、2、1。」


(サルムザーク)

「しかし、何だな。次からは中央部に侵入不可のニュートラルエリアを作るべきだな。」


(カース)

「そうですね。」



ブーーーッ。



(シューマリアン)

「よし。チーム戦終了だ。各員共に機体の損傷具合をチェックしろ。」


(セニフ)

「・・・あ、終わった?」


(ペギィ)

「やった!勝った!勝ったよセニフ!」


(セニフ)

「え?・・・あっ、ほんとだ。」



(Red[+5*19][215])(Blue[+20*1][180])



(フロル)

「うーん。くっそ・・・。最後は良い様にやられてしまったな。まさかあそこで取り付いて来るとは・・・。」


(デルパーク)

「攻めに回って攻めきれず・・・か。すまん。完全に俺の作戦ミスだ。」


(フロル)

「いや、作戦ミスって言うより、技術の差がモロに出たって感じだな。私なんかの手に負える相手じゃなかった。」


(ランスロット)

「ま・・・まあ、俺としては、こうしてジルヴァちゃんと仲良くツーショットを決める事が出来た訳だし、大勝利にも等しい戦果を上げたって気分かな~。ねぇ~。ジルヴァちゃん~。」


(ジルヴァ)

「おい!こら!ランスロット!無闇に銃口をこっちに向けんな!ぶっ飛ばすぞ!」


(フロル)

「おめでたい奴。」


(デルパーク)

「まったくだ。」



最終的に、序盤に背負ったビハイン分を、最後の最後で一気に引っ繰り返したチーム側・・・、近接戦闘を得意とするパイロットを二人揃えた赤チーム側が、勝利を勝ち取る結果となった。


元々、単なる演習システムのテストとして開催されたチーム戦だけに、どちらのチームが勝とうと、どうでも良い話でしかなかったが、中々の本気度を持ってガッツリと遣り合われた今回の戦いは、演習システムの不備点を幾つか露呈させるのに一役かった様であり、それを見た多くの者達の心に、それなりの満足感を与え付ける事に成功した様子だった。


・・・だが、劇的な大逆転劇を演出し遣った赤チーム側にあって、そのリーダーであるジルヴァだけは、TRPスクリーン上に映し出された演習場の中央部へとじっと静かに視線をり付けやりながら、何故か一際厳しく真剣な表情をたずさえ浮かべ上げていた。


チーム戦に参加していた他のパイロット達が、順々に自分が乗る機体の被害状況を、首尾しゅび良く報告し上げて行く様を無意識の内に聞き取り流しながら、彼女はずっと、とある一点にだけ意識を集中して凝視し付けていた。


自らが思案した作戦が思う様に上手く運び行かなかった・・・、口喧しいだけの脳足りん男に好き放題良い様に撃たれまくってしまった・・・などと言う自身の失態を顧みて、悔しい、腹立たしいなる思いに強くさいなまれていた訳では無い。


彼女の意識は、もっと別の場所にあった様だった。



やがて、程なくして彼女は、次第次第に通常通りの演習状態へと移行し戻ろうとする、周囲の動きを静かに観察して見て取ると、徐に自らが搭乗するジェフター3の機体を急発進させ、元来た道を勢い良く降り下って行った。


そして、右手に装備した「GAS97A」の弾丸換装作業を、流れる様な所作を持ってさささと済まし終えると、演習場中央部に佇むトゥマルクの傍へと颯爽さっそうと駆け寄り、割と大人しめな口調でこう言った。


(ジルヴァ)

「おいセニフ。機体の損傷具合はどうだ?」


(セニフ)

「え?・・・・・・あ、大丈夫。特に問題はないよ。」


(ジルヴァ)

ASRアサルトライフルの弾丸はまだあるか?」


(セニフ)

「弾丸?・・・うん。まだあるよ。」


(ジルヴァ)

「そうか・・・。良し良し・・・。」


(セニフ)

「?」



するとその直後、勢い良く振り上げられたジェフター3の右腕が、その手に持たれた「GAS97A」の銃口の先が、セニフが搭乗するトゥマルクの機体へと、ビシリと突きかざし付けられた。



(ジルヴァ)

「セニフ。これから私とタイマンしろ。ASR縛り一本勝負だ。」



セニフは一瞬、自分が一体何を言われているのか良く解らず、「えっ?」と間の抜けた返答を吐き零して、しばしそのままの状態で凝り固まってしまった。


そして、TRPスクリーン上の右正面部に映し出されたジェフター3の機影をマジマジと見付けながら、今し方ジルヴァに云われた言葉を静かに脳裏に反芻はんすうさせてみる・・・。



タイマン?


勝負?


ジルヴァと??


私が???




ええーーーっ!??


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