08-29:○飲み会[2]
第八話:「懐かしき新転地」
section29「飲み会」
何処も彼処も煩わしい程の活気に満ち溢れていた店内の様相は、如何にも今風と言った流線的フォルムに凝り固まった景観で、思ったよりも明るめの照明をふんだんに塗し彩った、清潔感溢れる見てくれをしていた。
見るからに屈強そうな厳つい兵士達によって、完全に占拠された感は確かにあったものの、不思議とむさ苦しさを感じ得ない爽やかな雰囲気に包み込まれていたのは、恐らく店の作りが非常に良かったと言う事なのだろう。
それに、所々に見て取れる女性兵士達の姿が、程良い緩衝剤、中和剤となっていた事も事実で、唐突に吐き上げられる男性達のけたたましき高笑いも、女性達が奏で上げる甲高い笑い声が混じり入ると、不思議と少しも耳障りな感がしない、楽しげなものに挿げ変わって聞こえてしまうのだ。
・・・と、ここで、セニフはふと、周囲に屯していた輩達の中に、全く見知らぬ人物達の姿がチラホラと混じり入っている事に気が付き、徐に小首を傾げた。
そして、確かネニファイン部隊で貸し切るとか言ってなかったけ?・・・と、サフォークに言われた言葉を静かに思い返しながら、再び周囲へと散り巡り出した視線の先を、正体不明なる人物達の姿に括り付ける。備に見遣る。その間を思い付くがままに順々に飛び回る。
勿論、彼女自身、ネニファイン部隊のメンバー達全員の顔を覚えていたと言う訳では無いのだが、見るからに別部隊、あからさまに別人種たる輩達が数多く見受けられる様だった。
(サフォーク)
「おう。セニフ。こっちだこっち。」
(シルジーク)
「遅かったじゃないか。何やってたんだよ。」
(セニフ)
「うん。・・・ちょっとね。」
(メディアス)
「セニフ。あんた何を飲むんだい?オレンジジュースかい?」
(セニフ)
「え?オレンジジュース?」
(フロル)
「あっはっは。こいつは飲むんだぞー。馬鹿みたいに飲むんだぞー。この歳で天然の笊・・・、いや、枠ってレベルなんだよ。」
(セニフ)
「そんな事無いよ。私だって二日酔いの一つや二つ・・・。」
(サフォーク)
「おーい。おねぇちゃーん。ヴィーナスロックを一つ追加でー。」
(セニフ)
「ちょっとサフォーク。私、今日は軽くで良いんだから。軽くで。」
(フロル)
「何言ってるんだセニフ。お前にとっては軽い方だろ?ボトルで頼んだ方が良いんじゃないか?」
(メディアス)
「・・・そんなに飲むのかい?この子は・・・。」
(サフォーク)
「それはもう、それはもう、化け物染みた飲みっぷりよ。もうね。飲むって感じじゃねぇんだ。喉の奥に消えて行くんだよ。酒が。」
(セニフ)
「そんな訳あるかい。」
(シルジーク)
「まあ、取り敢えず座れよ。サフォーク。もう少し奥側に詰めてくれ。」
(セニフ)
「あ、うん。ありがと。」
店の玄関口を抜け出て、右手側方向へと伸びる通路をしばし歩み進んで行ったセニフは、程なくして、お目当てとなる人物達が座り屯す小さなテーブル席の前まで辿り着く事になるのだが、もう既にかなり酔っぱらっています的な感を如実に漂わせて、楽しげに飲み入っていた四人組の男女の姿を見遣り回して取るなり、多少、入り辛いな・・・と言う正直な所感を、心の中に零し撒けてしまった。
通路に面してU字型に並べ置かれた黒いソファーの上に座り控えていたのは、チームTomboy時代からの付き合いであるシルとサフォーク、そして、ネニファイン部隊入隊当初、非常に良く行動を共にしていたフロルに加え、比較的誰にでも好意的態度を示し出すメディアス・・・と言う編成で、メンバー的見ても、特に彼女の気分を著しく害する様な組み合わせでは無かった。
・・・にもかかわらず、彼女がそう言った雰囲気的温度差を感じてしまったのは、やはり、3時間半と言う大きなビハインドを背負っていたからに他ならなかった。
(フロル)
「・・・しかしまあ、入れ替わり立ち代わりで良く人が集まって来るもんだ。」
(サフォーク)
「それは単に、主催者たる私目の人徳が成せる業・・・と言う事で?」
(シルジーク)
「何言ってるんだ。お前、言いだしっぺの癖に、ほとんど何もしてないらしいじゃないか。」
(サフォーク)
「そんな事ねぇよ。俺はちゃ~んと、お前と、セニフと、ジャネットに声を掛けたぞ。なぁ。セニフ。」
(セニフ)
「え?うん。・・・そう言えば、ジャネットは?」
(シルジーク)
「たったそれだけの事だろ?後は全部ランスロットの奴が段取りを組んだって。この店を予約したのも奴。これだけ人を集めたのも奴って話じゃないか。」
(セニフ)
「・・・。」
(サフォーク)
「お~。良く見ればお前の胸。かなりの代物だな。ちょっと触っていいか?」
(フロル)
「あん?・・・まあ、別に構いやしないけどさ。触った途端に手が出ても許してくれよな。多分、酔っ払ってて上手く加減出来ないと思うからさ。」
(シルジーク)
「おいこら!ちゃんと人の話を聞け!」
(メディアス)
「やだねぇ。ちょっとぐらい胸が大きいからって、見境なくがっつくその根性。こんな物の何処が良いんだい?こんな物のさぁ。」
(フロル)
「・・・おばちゃん。おばちゃん。子供が見てる。子供がみてるって。」
(セニフ)
「・・・あは・・・は・・・。」
(女性店員)
「お待たせ致しました。ヴィーナスロックになります。」
(サフォーク)
「おー。来た来た。ほら。また乾杯するとしようぜ。へーい。かんぱーい。」
(シルジーク)
「待て馬鹿。一人で乾杯するな。」
(メディアス)
「子供って言えばさ。いつもあんたに引っ付いて回ってるあの子はどうしたんだい?」
(フロル)
「ルーサの事か?あの子なら多分、今頃はもう寝てると思うよ。全然夜更かししない子だからさ。」
(メディアス)
「ふーん。」
(シルジーク)
「ほら、お前等。もう一度ちゃんと乾杯するぞ。セニフもグラスを持って。」
(セニフ)
「・・・うん。」
(サフォーク)
「えーそれでは。今日と言う日を無事に生き残れた事に感謝してー。明日と言う日を無事に迎え入れられる事に感謝してー。乾杯ー。」
(フロル)
「お。珍しくまともな事を言ったな。乾杯ー。」
(メディアス)
「こりゃ明日はきっと雨だね。乾杯ー。」
(シルジーク)
「この世の終りかも。乾杯ー。」
(セニフ)
「えっと・・・。乾杯ー。」
やがて、ようやく持ち運ばれて来た自分用のグラスを片手に、和気藹々(わきあいあい)とかわされ行く乾杯の音頭の列に小さく加わり入って見せたセニフは、何処となく噛み合わない周囲とのズレをヒシヒシと肌身で感じて取りながら、口元へと運び付けたグラスを静かにゆっくりと傾けて行った。
・・・のだが、同時に、これじゃ駄目だ・・・的な思いに強く苛まれ始めていた彼女は、無理矢理に沸き起こした色濃い気概を強く奮い立たせて、一気にグラスの中の酒を空け放つ勢いをひけらかして見せると、次第に上気立つ心と身体の火照りに合わせて、自らのテンションを強引に高め、昇らせ上げて行った。
(メディアス)
「お・・・。おおー。」
そして、あっという間に中身を飲み干して空としたグラスをテーブルの上へと強く置き放ち、深々と吐き付けた大きな溜息の後に続けて、「やっぱり飲む。おかわり。」と力強く言い放って見せた。
(サフォーク)
「おー。良いねー。セニフ。良い飲みっぷりよー。おねぇちゃーん。ヴィーナスロックを一つ・・・いや、二つ追加でー。」
(フロル)
「うーん。いつ見ても豪快。惚れ惚れしちゃう。凄いなお前。」
(シルジーク)
「おい。余り無理に飲ますなって。後が大変なんだぞ。」
(セニフ)
「大丈夫だよ。私、こんな程度で潰れたりしないから。」
(シルジーク)
「ほうー。ついこないだ馬鹿飲みブッかましてブッ潰れてた奴は、何処のどいつだっけ?」
(セニフ)
「むー・・・。あの時はそう言う気分だったんだよ。シルだって解ってるでしょ?」
(シルジーク)
「・・・あ、いや・・・。・・・うん。ごめん。」
(サフォーク)
「何だお前等。俺の知らない所で勝手に飲み会開いてたのか?全く薄情な奴等だねぇ。」
(シルジーク)
「いや・・・。そう言う訳じゃないんだけどさ・・・。うん・・・。」
(セニフ)
「・・・あーっ!もう!違う違う!そう言うの駄目!駄目駄目!・・・うん。楽しく行こう。楽しく。そう。楽しくね。はーいシル。笑って笑ってー。」
(メディアス)
「何だい?いきなり。おかしな子だねぇ。」
(サフォーク)
「ま、おかしいのは今に始まった事じゃないんだけどさ。」
(セニフ)
「ほーらシル。笑ってって言ってるじゃない。聞こえないの?笑って笑ってー。無理にでも笑ってー。シールー!」
(シルジーク)
「あーあーもう解った。笑う。笑うから。ほら。ニカッ。」
(セニフ)
「えっへっへー。よしよし・・・。うん、馬鹿みたい。」
(シルジーク)
「おい・・・。」
(フロル)
「あっはっはっは。何やってるんだこの二人は。」
(サフォーク)
「類は友を呼ぶってか?」
(メディアス)
「あんたも含めてね。」
他人と会話する事によって気持ちが紛れてくれる感は確かにあった。
少なくとも、たった一人で内なる世界に引き篭っているよりは良い・・・、黒々しき思いを積み重ねるだけの不毛なる時間を、無為に過ごし経るよりは良いと、セニフは思った。
そして、程なくして、新たに持ち運ばれてきた酒グラスを、一つ、二つと女性店員の手から受け取り、二つ目のグラスに軽く口を宛がい付けて見せると、不意にチラリと一瞬だけシルの方に視線を当て流しながら、大きく口元を緩め歪め、笑顔を浮かべ上げて見せる・・・。
笑えば笑う程に心地良かった。
目の前に立ちはだかっていた真っ黒な靄が、次第に晴れ散って行く様な感覚を覚えた。
自分の中で、何かが大きく変わったのかと言えば、恐らくそうでは無いのだろう。
大した出来事があった訳でも、大きな衝撃を受け食らわされた訳でも、何かに強い感銘を受けた訳でもない。
・・・だが、この時、彼女の心は、確実に前掛かり的な様相を匂わせ始めていた。
要は、心の持ち様なんだ・・・。
考え方一つなんだ・・・。
・・・と言う事に、彼女はようやく気が付いた様子だった。
やがて、再び一気飲みたるや勢いを振り付けて、二つ目のグラスを豪快に空け放って見せたセニフは、次第に自分自身の存在がその場の雰囲気の中に、違和感なく馴染み入って行く感を不意に感じて取り、徐に途切れ飛んだ会話の間隙を突いて、先程の質問を再度投げかけてみる事にした。
(セニフ)
「ねぇねぇ。そう言えばさ。ジャネットは来てないの?」
(フロル)
「あれ?そう言えば何処に行ったんだっけ?さっきまで一緒に飲んでたんだよな。」
(セニフ)
「そうなの?」
(メディアス)
「確かトイレに行くって言って席を立ったはずだけど、まさかあれからずっとトイレの中に篭りっぱなしって訳じゃないだろうね。」
(サフォーク)
「よし。俺が見てきてやるよ。」
(メディアス)
「やめときなって。冗談にしても面白くないよ。」
(フロル)
「セニフが来るのをずっと待っていた様な感じだったんだけどな。もしかして、待ちくたびれて帰ってしまったのかな。」
(セニフ)
「えーっ?そんなぁ・・・。」
(シルジーク)
「いや。何処かに引っかかってるって可能性も無くは無いと思うぞ。その辺に居るんじゃないのか?」
セニフは一瞬、待ちくたびれて帰ってしまったのかも・・・と言う、フロルの言葉を聞いて取るや、直ぐに激しく落胆する素振りと声色を大々的に吐き上げてしまう事になるのだが、それは遅刻して来た自分が悪い・・・のだと言う事を、不意に脳裏へと思い至らせてしまった彼女は、それ以上、何を言う事も出来なくなってしまった。
そして、何処かに引っかかっているかも・・・と言う、シルの言葉を新たに聞いて取るや、直ぐに店内の至る箇所へと視線を流し巡らせ、見慣れた彼女の姿を彼方此方探し回って見た。
すると、そんな時、同じ様にして店内の様相を見渡していたサフォークが、突然、訳の解らぬ譫言を並べ立て始めた。
(サフォーク)
「あーっとぉ。居た居たー。居ました。ジャネット選手。あんな所に居ましたー。コーナーポストの最上段に陣取って、虎視眈々(こしたんたん)と獲物に狙いを定めていたー。」
(セニフ)
「えっ?何処何処?」
(シルジーク)
「何だよ。コーナーポストって。」
(サフォーク)
「これはもう、早くも勝負を決めにかかる態勢ですね。見るからに目の色が違って見えます。解説のセニフさん。今後の展開をどう予想されますか?」
(セニフ)
「だから何処いるんだって!」
(サフォーク)
「あーっと!ここで小憎らしい程の無邪気な笑顔を見せたー!そしてほのかに体を摺り寄せてのー、出たー!甘い囁き攻撃ー!これは利いたー!チャンピオン蒼然ー!チャンピオン大の字ー!」
(メディアス)
「解説のシルジークさん。この状況をどう思われますか?」
(シルジーク)
「諦めは心の養生。黙殺して済ますのが一番でしょう。」
(メディアス)
「ありがとうございました。」
(セニフ)
「・・・。」
ジャネットを見付けた。・・・と言うサフォークの言葉に嘘は無かった。
全く持ってお馬鹿らしい回りくどい言い回しを持って、備に解説し出されたジャネットの行動も、それなりに的確であると、そう称すべき見事な揶揄であると言えた。
だが、一体何を意図してそうしたのか全く解らないが、サフォークが意識的に視線を振り向けていた方向は、実際に彼女が居た場所とは全く異なる別の方向で、セニフは、しばらくの間、彼が仕掛け出した些細なる罠の中で、無駄に足掻き彷徨い歩く羽目となる・・・。
言うまでも無くそれは、その場の話しを、より面倒臭い方向へと導き入れて楽しむ・・・と言う彼の趣味が、意味無くも綺麗に咲き乱れた瞬間であった。
(フロル)
「セニフ。セニフ。あっちだよ。あっち。カウンター席の一番奥側。」
(セニフ)
「え?・・・あ。」
勿論、ざっと見積もっても、五十人に満たない程度の客人達しかいなかった小狭い店内空間の中において、彼の目論見がいつまでも功を奏し続けるかと言えばそうでは無く、程無くしてそれと悟り取ったフロルが、カウンター席の一番奥側に座っていた彼女の姿を見つけ出す事になる。
そして、それは直ぐに、セニフへと伝え知らされる事になるのだが、不意に振り向けた視線の先で、ジャネットの姿を捉え見たセニフは、その隣に座っていた男性の顔を窺い見るなり、思わず驚いた表情を浮かべ上げてしまった。
(セニフ)
「バーンスと飲んでる・・・。」
(シルジーク)
「へー。珍しい組み合わせもあるもんだな。」
(メディアス)
「もしかして昼間の作戦で意気投合したとか?」
(フロル)
「どうだろうね。・・・でもまあ、別にいいじゃないか。色恋沙汰の一つや二つぐらい。軍隊の中だからって、特に無理して自重する必要も無いと思うぞ。私は。やりたい奴等は自由にやればいいのさ。」
(サフォーク)
「おやおや?妙に棘のある言い方で。もしかして羨ましい・・・とかですかい?」
(フロル)
「当たり前だろ?私だってやりたい時はやりたいんだ。馬鹿にするんじゃないよ。」
(サフォーク)
「ほほうー。それはそれは。不躾ながら、この私目がお相手を務めましょうか?」
(フロル)
「勿論、誰でも良いって訳じゃない。私はそこまで節操無しじゃないからな。」
(メディアス)
「・・・ちょいとあんた達。子供が聞いてる。子供が聞いてるって。」
(サフォーク)
「子供子供ってな。あんまりそう邪険に扱ってやるなよ。こいつだって、もう一人前の立派な大人の女性なんだ。ちゃんと混ぜてやらないと可哀想だろ?なー。セニフ。」
(セニフ)
「・・・え?・・・あ、うん。・・・何?」
(サフォーク)
「・・・。かーっ。これだよ。ほんともう、お前ときたら・・・。人の話はちゃんと聞きなさいって。」
(シルジーク)
「お前に言えたセリフかよ。」
(フロル)
「お~。中々見事なはぐらかしっ振りだな。セニフ。可愛いよ~。」
明らかに酔っぱらった風体の大人達によって繰り広げられる品位無き露骨な会話を、そう言って上手く適当にあしらいかわして見せたセニフだが、彼女は特に意識してそれを誤魔化し倒そうとした訳でも、すっ呆けてやろうなどと変に画策した訳でもなかった。
彼女は単に、視線の先で捉え見たジャネットの姿・・・、見るからに楽しげな雰囲気を形作ってバーンスと話し込んでいたその姿を見て、瞬間的に沸き起こった驚きと言う閉塞的世界観の中に、完全に捕われ入ってしまっていただけなのだ。
最愛の弟であるマリオが死んで以来、あからさまに人との接触を強く拒み払う様な態度に終始してきたジャネットの変貌振りを目にして、意外たるや感情を色濃く滲みだしてしまっただけなのだ。
彼等の会話を上手く聞き取り得る事が出来ていなかっただけなのだ。
やがて、不思議と込み上げて来る嬉しい気持ちを顔中一面へと広げ浮かべ上げて見せたセニフは、徐に持ち上げたグラスにチョビリと口を付けながら、小さく笑った。
(セニフ)
「よし。飲もう。うん。飲もう。・・・おねぇさーん。同じ物を二つ追加でー。」
(シルジーク)
「お前な。ある物を全部飲み終えてから注文しろよな。」
(フロル)
「ジャネットは良いのか?放って置いて。」
(セニフ)
「うん。いいや。今日はいい。」
(サフォーク)
「おねぇちゃーん。面倒臭いからボトルで持って来てー。氷付きでねー。」
(メディアス)
「やれやれ。深酒厳禁って御触れが出ているんだけどねぇ・・・。」
(フロル)
「セニフ。あんまり無茶な飲み方するなよ。二日酔いのまま出撃して、死んじゃいましたーなんて笑い話、私は聞きたくないからな。」
(セニフ)
「うん。解ってる。大丈夫。心配しないで。そこまで馬鹿飲みしないからさ。」
勿論、彼女自身、ジャネットと一緒に飲みたい、楽しく話をしたいと言う気持ちが全く無かった訳では無い。・・・が、あの男にべったりと付いて回る彼女の姿を見るよりは、遥かにマシな光景であると、不意にそう思い付いてしまった事も事実で、彼女は再びジャネットの姿を軽くチラリと見遣ると、なるべく邪魔をしないで上げよう・・・と言う考えに、自分の思いを強く強く括り止め置いたのだった。