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Loyal Tomboy  作者: EN
第八話「懐かしき新転地」
159/245

08-12:○スティーブ・マウンテン・ダイビング[6]

第八話:「懐かしき新転地」

section12「スティーブ・マウンテン・ダイビング」


(ジャネット)

「はぁ・・・。ちょっと様子を見に行くだけだって言うから、許可したのに・・・。ほんと、あなたって子は・・・。セニフ。あなたちょっと、や・り・す・ぎ。単独で敵陣に突っ込んで行って、挙句の果てに近接格闘戦をおっぱじめるなんて・・・。DQA大会で、ズブの素人を相手にしている訳じゃないんだからね。少しは味方との連携とか考えて行動しなさいよ。あんなに後続を引き離して突っ込んで行ったら、助けに行きたくても、行ける訳ないじゃないの。」


(セニフ)

「ご・・・ごめんなさい・・・。」


優しげな語り口調でありながらも、何処か酷く耳の内にズキズキと突き刺さる痛々しき苦言に、シュンとした様相を浮かび上がらせながら顔をうつむけていたセニフが、弱弱しき謝罪の言葉を零した。


お互いに直接顔を付き合わせていたと言う訳ではないが、通信機越しに聞こえ来るその声色は、明らかに平静さを装う感が色濃く込め入れられたもので、もはや呆れてものも言えない・・・と言った表情で深い溜息を付くジャネットの姿が、思い巡らせずとも如実にょじつに連想されるものだった。


(ジャネット)

「あなたの戦闘スタイル、私も解っているつもりだけど、今後一切こんな無茶は禁止。いいわね。これ、ちゃんと守ってよね。」


パレ・ロワイヤル基地を出立するより以前の綺麗な外観とは打って変わり、満身創痍まんしんそうい、全身傷だらけの様相で帰還したセニフの搭乗機は、前面の右胸装甲部分が大きくベッコリとひしゃげた状態で、トゥマルクの右手マニピュレーター部も、手首から先が綺麗さっぱりと無くなっていた。


周囲の緑地地帯に視覚的同化を図る為の深緑色の塗装も、機体各部に刻み込まれた無数の傷跡部分を起点として、大きく剥げ落ちてしまっており、機体の前後左右を問わずして点在する細かな水玉模様が、相当量の被弾を許す結果となってしまった事を、良く良く示し現していた。


勿論、実質的な機能に目立った被害を被らずに済んでいた事実から、作戦初期段階におけるリタイヤと言う、情けない事態を回避し得た事だけは確かだが、極短時間の内に、新型機と言う色調を完全に失ってしまった彼女の機体は、もはや中古品風情にすら劣る、見るも無残なガラクタ(程ではないが)・・・と、言うに相応ふさわしき様相をていしていた。


(ロッコ)

「まあまあ。いいじゃないですか。セニフもこうして無事に帰って来れた訳ですし。それに、帝国軍部隊の力量も、それなりに見て取る事が出来たんですから、十分に収穫はあったと思いますよ。」


(ジャネット)

「ええと・・・。ロッコ・ミラマールって、言ったかしら?」


(ロッコ)

「はい。」


(ジャネット)

「余りこの子を甘やかす様な事は言わないで。この子ったら、直ぐ調子に乗るんだから。」


(セニフ)

「う・・・。うー。」


(ロッコ)

「大丈夫ですよ。セニフと初めて話をした時に、恐らくそうなんだろうって、もう気付いてましたから。」


(セニフ)

「ロ・・・ロッコォー。」


(ロッコ)

「あっははは。セニフ。君が優れたDQパイロットだって言う事は、今の戦い振りを見てて、僕にも直ぐに解ったけど、戦場ではもう少し、臆病なぐらいの方が丁度良いと思うよ。死に急ぐ様なリスクをどれだけ背負ったって、駄目な時は駄目なんだし、なるべく危険度の少ない方法で、作戦任務を成功させる事を考えよう。第一その方が楽だよ。」


(セニフ)

「・・・うん・・・。」


なんかいつも同じ様な事言われてる気がする・・・と、不覚にも思ってしまったセニフは、ヘルメットの耳元に内蔵されたスピーカーから聞こえ来る、ロッコの優しげな語り口調に、得も言われぬ心和む様な暖かさを感じ取りながらも、何処かばつの悪そうな表情を交えて大きく口を尖らせてしまった。


彼女は自分自身が仕出かした行為の愚かさを解っていたし、勿論、最初からそうしようと目論んで突撃を敢行した訳ではないのだが、最終的に示された結果のみに注視して言えば、何ら反論の余地無く馬鹿野郎呼ばわりされても仕方がない事だと、腹をくくっていたのだ。



いっその事、怒鳴り付けでもしてくれた方が、気が晴れるのに・・・。



ジャネットにしても、セニフを叱り付ける様な言葉を並び立てはしたが、あからさまに強い怒気を滲ませて頭ごなしに押さえつける様な真似はしなかった。


と言うのも、彼女自身、呆れた様に苦言をていして見せた方が、より効果的である事を知っていたからである。


そして、余りネチネチと引きずらないと言う点も、ポイントと言えばポイントだった。


(ジャネット)

「バーンス。北方棚台の状況はどう?追い付けそう?」


(バーンス)

「いや。この状況ではどうやったって無理だな。棚台の上は思った以上に悪路続きだ。それに、カリッツォ二機の足が異様に早い。一度仕切り直しだな。」


(ジャネット)

「そうね・・・。ごめん。挟み撃ち作戦、完全に失敗しちゃった。」


通信機越しにでも解るジャネットの溜息を聞き取り、セニフは再び、しょげ返る様に眉間にしわを寄せて、ガックリと肩を落とした。


セニフが先の戦闘において、無理矢理にでも敵陣を突破しようと試みたのは、他でもない、帝国軍部隊の背後に回り込んで、完全なる挟撃網を構築しようと画策していた為であり、たった一人で敵部隊を排除しようと試みていた訳ではない。


勿論、異様に足の速いカリッツォ二機に追いすがられ、む無く単騎での戦闘を余儀なくされてしまった訳だが、出来れば相手の攻撃を上手くいなしながら逃走回避行動を続け、北方周りのグラント隊の到着を待ちたい所だった。


しかし、彼女の思惑に反して、恐ろしい程の手際の良さを見せ付けた、帝国軍の手練れパイロット二人が全くそれを許さず、彼女は幾許いくばくもしない内に、脱兎だっとの如く退散する羽目となってしまった。


セニフと直接対峙する事になったユピーチル、ベトラッシュ、両者の思いがどうであれ、傍から見て示された結果だけをふまえれば、無謀なる突撃を敢行した挙句、体良ていよくあしらわれて返り討ちにあった・・・と、そう思われても仕方がない事であった。


(バーンス)

「ネニファイン部隊きっての暴れ馬たるセニフを相手に、全く怯む事無く攻撃的姿勢を突き崩さぬ輩達か。戦況的に不利と見るや、直ぐに後退して、立て直しを図る辺りも中々に侮れんし、これは結構骨が折れる相手かもしれないな。」


(ルワシー)

「なぁに。ちまちまとセコ臭ぇセニフの攻撃に、梃子摺てこずる様な奴等だろ?大したこたぁねぇぜ。」


(ペギィ)

「じゃあ、あんた一人で行って来なさいよ。私、ここでゆっくり観戦してるからさ。」


(ルワシー)

「なぁに言ってやがんだ。真打ちは最後に登場するってのが、筋ってもんだろうがよ。悪の手先に襲われて泣き喚くっつう役割は、てめぇみてぇな脇役がこなす仕事だぁぜ。」


(ペギィ)

「あ~ら怖いのぉ?いつもいつも偉そうな事ばっかり言っちゃってる癖にさー。見かけによらず案外臆病なのね。つまんなーい。」


(ルワシー)

「はっ。大人の演出っつうもんを露とも知らねぇ、お子様風情は黙ってなって。真打ちは真打ちらしく、演目の最終幕にババーンと登場して、美味しい所を全部かっさらって行くからかっけぇんだよ。今に見てな。白馬にまたがる格好良い王子様って奴を、存分に見してやっからよ。」


(ペギィ)

「何それ。子供向け用のテレビ番組か何かの間違いなんじゃないの?白馬にまたがる格好良い王子様なんて設定、一体いつの時代から引っ張り出してきたのか解らないけどさ。あんたみたいないかつい顔で王子様って言われても、山賊以外の何者にも見えやしないんですけど。」


(ルワシー)

「へっ。ナヨナヨした王子様ってのより、武で成る王家の末裔まつえいって設定の方が、断然格好良いだろ。」


(ペギィ)

「ブで成る王家の末裔まつえい~?・・・ぷふっ。・・・きゃっははははは!!面白い!!それって面白い!!きゃっははははは!!」


(ルワシー)

「・・・・・・何だぁ?・・・俺、何か面白れぇ事でも言ったか?」


(バーンス)

「全くそれと気付いていない、お前の馬鹿さ加減が面白いと言えば面白いが、さっきの戦闘を見ても尚、帝国軍部隊の実力に気付きもしない王子様だって言うんなら、全く笑えない話になるな。あんまり浮かれ過ぎていると、直ぐにこのステージ上から追い出される事になるぞ。」


(ルワシー)

「なぁに。虚勢を見事に張り倒すっつうのも実力の内でよ。この俺様にとってはドーピング剤みてぇなもんだ。」


(ペギィ)

「ええと、超意味不ちょういみふなんですけど。それ。」


(バーンス)

「これは一歩間違えば即座に死に至る過酷な演目だ。登場人物が王子様だろうと山賊だろうと何ら関係ない、現実世界のもよおし物だ。お前等もそろそろ本気で気合を入れてかかれよ。死ぬぞ。」


(ルワシー)

「へいへい。解ってらぁってぇよ。」


(ペギィ)

「はーい。」


やがて、バーンスはそう言って、無駄口を叩き合う二人の意識を巧みに誘導し、現実世界へと引き戻させると、悪路続きの進攻ルートに対して軽い舌打ちを撃ち付けつつ、チラリとサーチモニター上へと視線を落とした。


トゥマルクに搭載されているサーチシステムの索敵可能範囲西方ギリギリ、飛び島の様な廃墟地帯を抜けて程なくしたポイント付近で足を止めた帝国軍部隊は、その後三度に渡って敢行されたデモアキート部隊の対地攻撃を難なくやり過ごすと、今度は次なる決戦場を求めて、僅かに南側へと移動しつつある様であった。


濃密に生い茂る樹海の木々達に著しく阻害された只中では、上空からの支援活動にも限りがある・・・と言う事は理解しているが、全くそれらを苦にする様子も無く、意気揚々(いきようよう)と大地を這いずり回るその様は、まさに深緑の海底を優雅に泳ぐ獰猛なるしゃちうごめきと言った有り様である。


バーンスはふと、TRPスクリーン左手隅の方へと視線を流して、作戦開始からの経過時間をチラリと見遣ると、強襲歩兵部隊が到着する後十分程度か・・・と、独り言の様な呟きを小さく吐き零し、通信システムのモード切替作業を行った。


(バーンス)

「マルコ。帝国軍DQ部隊に対する対地攻撃はもういい。お前達は強襲歩兵部隊の降下ポイントに急行し、周辺周域の索敵警戒行動に当たってくれ。」


(マルコ)

「了解。バーンス。・・・だが、この状況を見ても解る通り、上空からの対地攻撃に大した効果は期待できんぞ。」


(バーンス)

「強襲歩兵部隊の護衛用に、こちら側から二機を後方に回す。運んで来てもらった武器弾薬も、同ポイントに投下しておいてくれ。」


(マルコ)

「了解した。べスパー。テオン。聞いての通りだ。デモアキート部隊はこれより、北側のクリフ地帯を経由して、強襲歩兵部隊降下地点へと向かう。」


(べスパー)

「了解。」


(テオン)

「了解。」


そして、西方へと後退した帝国軍DQ部隊を執拗に追い回していた、デモアキート部隊の隊長マルコ・シトレーゼに、新たなる指示を送り与え付けると、当該戦域における自軍側の配置図をつぶさに見据えながら、ネニファイン部隊専用の通信回線内へと意識を舞戻した。


(ロッコ)

「この廃墟地帯より向こう側って、どう言う地形になっているんでしょうね。見た所かなり起伏の激しい山岳地帯って感じがしますけど、背丈の高い木々達だけって言うなら、それなりに戦闘し易い場所が広がっている可能性もありますよね。」


(ジャネット)

「廃墟地帯を抜け出るなり、直ぐに南側に移動した帝国軍の動きから見ても、明らかにそこを毛嫌いしている感じがするし、防御陣を形作るには打って付けの場所かもしれないわね。」


(バーンス)

「後続部隊との距離を考えても、ギリギリのラインだしな・・・。よし。廃墟地帯を抜け出たポイント12-5から7までのラインに、防御陣を構築する事にして、一度帝国軍部隊の出方を窺う事にするか。これ以上西方奥深くに進軍しても、無用なリスクを高めるだけだ。」


(ジャネット)

「確かにそうね。あんまり後続部隊と離れると、何かあった時、直ぐに戻ってこれなくなっちゃうものね。いいわ。その線で行きましょう。」


(ルワシー)

「後方に回すっつう二機は誰にすんだ?もしかしてこの俺様に、こっから戻れって言うんじゃねぇだろうな。」


(ペギィ)

「えーっ!?この凸凹道をまた戻るの?私やーよ。そんなの。」


(ジャネット)

「歩兵部隊護衛任務の件は、フロア隊の方で引き受けるわ。バーンス達グラント隊は、北側から当該エリアに侵入して。」


(バーンス)

「そうか。解った。」


(ペギィ)

「あ~ら。お姉さま。悪いわねぇ~。」


(ジャネット)

「いいわよ別に。私自身が戻るって言ってる訳じゃないし。」


やがて、和気藹々(わきあいあい)と交わされた部隊メンバー達の会話の中で、特に目立った反対意見も無く、ネニファイン部隊のその後の活動方針が決する事となったが、最後にさらりとした口調でそう言い放ったジャネットの言葉に、セニフは「えっ?」と、多少落胆色を交えた驚きの声を発してしまった。


ジャネット自身に戻ると言う意思が無いと言う事は、言わずもがな、セニフとロッコの二人が後方に回される・・・と言う事である。


勿論、セニフ自身、最前線での過酷な戦闘を心の底から欲していた訳ではないし、戦争における合法的殺人行為を好んで求めていた訳でもないのだが、彼女は、つい先ほど自らが犯した無様なる失態を理由に、皆から仲間外れにされてしまった・・・と、不意にそう感じてしまったのだ。


(ジャネット)

「セニフ。ロッコ。あなた達二人は後方に回って、強襲歩兵部隊の護衛任務を担当して。別に降下ポイントまで戻る必要はないと思うけど、輸送機墜落地点までの進攻ルートを、全てケア出来る位置取りでね。」


(バーンス)

「まあ、今の状況なら、輸送機墜落地点周辺部に、張り付くって形でも全く問題なさそうだがな。デモアキート部隊も一緒に張り付く訳だし。」


(ジャネット)

「そうね。じゃあ、そう言う事にしましょうか。セニフ。ロッコ。お願いね。」


(ロッコ)

「解りました。」


(セニフ)

「えっと・・・。あの・・・。」


(ジャネット)

「セニフ。返事。」


(セニフ)

「う・・・・・・。はぁい・・・。」


最前線における近接戦闘を最も得意としていたセニフにとって、何らその能力を発揮し得ぬ後方へと配される事は、事実上、戦力外通告を言い渡されたも同然の事である。


本来であれば、「えーっ!?そんなぁ!」などと、あからさまに強い拒絶反応をひけらかして、駄々をねて見せたい所ではあった。


しかし、セニフ自身、ジャネットが自分に対して、反省を促しているのだと言う事を既に理解しており、全く有無を言わさずと言った様相で口調を強めたジャネットの態度に、渋々と恭順の意を示し出して見せる事しか出来なかった。


そして、何処かしょんぼりとした様相を強く滲ませながら口先を軽く尖らせ、TRPスクリーンの向こう側に映るジャネット機の後ろ姿をチラリと見遣ると、にわかに込み上げた小さな溜息を一つ吐き零す。


その後、彼女は、完全にえ切ってしまった薄ら寒い意識の中で、ただただ自分が仕出かした行為の愚かしさを省みる事しか出来なかった・・・。



(ルワシー)

「なんでぇなんでぇ。セニフ。馬鹿みてぇに大人しくなっちまったぁな。おめぇみてぇな突貫馬鹿から、勢いっつうもんを取ったら、他になんにも残りゃしねぇじゃねぇかよ。」


(セニフ)

「む・・・。」


するとそんな時、彼女の余りの意気消沈振りに、著しく感化された一人の大男が、ここぞとばかりに不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。


(ルワシー)

「どうせおめぇの頭ん中には、耳カス程度の脳みそしか詰まってねぇんだから、無理に反省なんて意味のねぇ事してんじゃねぇって。考えれば考えた分だけ、時間の無駄っつうもんだろがよ。この阿呆が。」


(セニフ)

「むむ・・・!」


それは勿論、彼女を慰める為でも、励ます為でもない、彼らしさをそのままに示し現した、他愛の無い売り言葉には違いなかった。


(ルワシー)

「糞馬鹿は糞馬鹿らしく。ムッキームッキーって、意味なく喚き散らしてりゃいいんだよ。なに一端の女みてぇにかしこまって、はぁい・・・だ。気持ち悪ぃったらありゃしねぇぜ。」


(セニフ)

「むむむ・・・!!」


しかしそれは、彼女にとって非常に反応を示しやすい言葉。


全く普段通りの彼女を持って買い付けてやるに容易な、お手頃価格の品物だった。


直後、セニフは、赤黒くびて湿気しけ込んでいた心の模様に、真っ赤に染まった憤怒の炎をしたたかに描き出す。


(セニフ)

「なんだよ!!デブルワシー!!黙って聞いてりゃ好き放題に言いやがって!!糞馬鹿はお互い様じゃないか!!この肥満豚!!この鶏馬鹿!!」


(ルワシー)

「うっほぅー。馬鹿が馬鹿って認めやがった。こりゃぁたちが悪いぜぇ。怖ぇー怖ぇー。」


(セニフ)

「うっさい!!このカス!!家畜風情の分際で、偉そうに人様の言葉口にしてんじゃないよ!!お前みたいな糞豚野郎は~~~以下省略~~~。」


(ルワシー)

「へっへー。ついさっきまで、メソメソ泣いてた糞餓鬼が、今度は逆切れて派手に癇癪かんしゃく起こしってかぁ。見っとも無ぇったらありゃしねぇな。大体おめぇはよ~~~以下省略~~~。」


ルワシー自身、別にセニフの事をおもんばかって、そう言った言葉を吐き付けていた訳ではない。


ただ単に、しょんぼりとしょげ返った彼女の事をからかって、玩具の様に程良くね繰り回してやろうと思っていただけだった。


しかしこの時、彼の浴びせかけた思い思いの言葉のやじりが、負たる感情に捕われた彼女の心を強く揺り動かす結果となり、全く普段通りの彼女らしさを蘇らせる特効薬となった事だけは間違いなかった。


お互いに突撃系DQパイロットであると言う事実を除けば、一見して何ら共通点を見いだせぬ水と油と言う様相に終始する両者だが、表層的に見て取れる一面は脇に退け置くとして、二人はある意味、いいコンビと言えばいいコンビであった。



(ジャネット)

「はぁ・・・。全く、この子ったら・・・。ロッコ。セニフをお願いね。」


(ロッコ)

「解りました。」


やがて、呆れ返る程に子供染みたののしり合いを、やんややんやと繰り広げる阿呆共二人に対し、白々しき思いを強く募らせていったジャネットは、あからさまに疲れ果てたと言う表情を如実にょじつに浮かび上がらせて溜息を付いた。


そして、もはや相手にするのも馬鹿らしいと言った様相で、TRPスクリーン左手側に映し出されていたセニフ機から視線を切り捨てると、直ぐに遥か西方森の奥深くへと意識を流し込み、軽く右足でフットペダルを踏み込む。


勿論、彼女自身、こう言った意味無き馬鹿騒ぎを、真っ先に制止しなければならない立場にある事を自覚していたが、無暗に怒鳴り散らして、強引にその場を取り収めると言ったやり方は、自分の柄じゃない・・・と恣意的しいてきな思いによってそれを取りやめると、完全に我関せずと言った、余所余所しき暗幕を頭からまとい被る事にした。


しかしこの時、素っ気なく繰り出された彼女の所作の中には、何処となく安堵した様子が色濃く交え込まれているかの様でもあり、不意に緩めた口元にも、微かに笑みが添えられている様子だった。


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