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Loyal Tomboy  作者: EN
第七話「光を無くした影達の集い」
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07-09:○ブリーフィングルーム#3

第七話:「光を無くした影達の集い」

section9「ブリーフィングルーム#3」


<トゥアム共和国陸軍 首都ランベルク基地 B3-C-301>


軍事演習事前作戦会議 第一日目


あー諸君。非常に短い時間だったが、久しぶりの休暇、満足してもらえただろうか。


これまで、リトバリエジ都市周辺部に駐留した帝国軍の脅威により、長らく第三種戦闘体制での待機任務を、言い渡されてきた我がネニファイン部隊だが、ようやく昨日夕刻18:00を持って、解除される運びとなった。


これは、オクラホマ都市攻略作戦の成功により、帝国軍東方戦線が次第に縮小傾向へと傾きつつある事実が判明した為であり、諜報部からもたらされた情報によれば、帝国軍は既に、カルッツァ地方から軍を撤退させる動きを見せ始めているとの事だ。


勿論それは、カルッツァ地方を完全にもぬけの殻にしてしまう様な、大規模な撤退行動ではなく、細くなった補給線規模に対して、それ相応の軍団に部隊を再編成する意図を匂わせるものである。


カルッツァ地方、およびムルア地方における戦闘に関しては、恐らくこれまでより大分負荷が軽減されると予測されるが、それでも、まだまだ予断を許さぬ状況が続きそうだ。


また、今回の一連の動きに伴って、帝国軍リトバリエジ都市占領部隊にも、少なからず影響が出始めているようで、スーノースーシ川対岸に布陣した帝国軍占領部隊の陣形が、以前のランベルク都市侵攻を匂わせる攻撃的なものとは異なり、リトバリエジ都市周辺部の防御陣を固める様な様相へと変化しつつある。


このほど、我々ネニファイン部隊が、明るく開放的な外の世界で、伸び伸びと軍事演習が行えるようになったのは、こう言った戦況の変化があったからで、首都ランベルク都市を戦火に巻き込むと言う、最悪の事態を回避し得たこの状況は、我々にとっても大いに歓迎すべき展開と言えよう。


もっとも、それによってリトバリエジ都市奪還が、より困難なものになってしまった事も事実で、攻勢に転じたリトバリエジ都市占領軍を、スーノースーシ川河堤かてい付近で、一気に殲滅すると言う当初の目論見も、これで完全に頓挫とんざしてしまった形だ。


リトバリエジ都市は、我がトゥアム共和国にとっても、東スロベーヌ地方全体にとっても、今尚、非常に重要な経済流通都市である事に変わりは無く、我々としても、いつまでも帝国軍の手に委ねて置く事は出来ないのだが、武力を用いた無血開城がほぼ不可能である事実からも解る通り、一介の軍人でしか無い俺達には、何ら手の打ち様が無いと言うのが正直な所だ。


まあ、この小難しい問題に関して、彼是あれこれと思案を巡らせるのは、共和国政府の高官達に任せて置くとして、手足を動かす事が本業である俺達は、まず、目の前に与えられた仕事を順々に処理して行く事としよう。



それでは、少し前置きが長くなってしまったが、本題である軍事演習について話題を移そう。



本日14:00から開始される、ブラックナイツ部隊、カラムス部隊を含めた、合同軍事演習についてだが、演習会場となるランベルク北東地区山岳エリアは、元々はDQAランベルク地区大会の試合会場として用いられてきた場所だ。


お前達の中には、既にこの会場での戦闘経験がある者も居ると思うが、今回の軍事演習は、実際の試合会場より四倍近い広さの敷地面積を使用して行われる。


そして、一般的に良く知られているDQA大会の様に、複数チームが入り乱れて戦闘するような無益な事はせず、あくまで部隊同士一対一での戦術戦闘訓練に主観を置いたものとなっている。


各部隊に課せられる細かなレギュレーション、ルールについては、配布した資料に記載してある通りだが、一応念の為に、大まかな概要説明をしておこう。


今回の軍事演習は、まず本日第一日目にネニファイン部隊とブラックナイツ部隊、二日目にブラックナイツ部隊とカラムス部隊、そして、三日目にネニファイン部隊とカラムス部隊が対戦する予定となっているが、その間、手隙てすきとなった余り部隊については、ランベルク基地内において、第三種戦闘体制での待機任務が課せられる事になっている。


幾らランベルク地方の戦局が膠着状態に陥ったからとは言え、トゥアム共和国軍唯一のDQ専門部隊が、三部隊とも軍務を放棄して軍事演習に没頭する事など、許されるはずも無いからな。


よって我々は、手隙てすききとなる軍事演習二日目は、朝からランベルク基地で待機任務に当たる事になる。


軍事演習一日目から張り切りすぎて、全機体損傷持ちと言う失態だけは、出来るだけ避けるよう注意してくれ。



では次に、今回の軍事演習における大まかなルールと戦闘の仕方について説明するが、これまた一風変わった手法が取られる事になっている為、各人共に良く聞いて理解するように。


今回の軍事演習の最大の目的は、各パイロット個人個人が持つ、戦闘技術の底上げを図ると言うより、部隊と言う一個体における戦術運用、即ち、各パイロット同士の連携力の強化と、その場その場に合わせた、適切なポジショニングを学ぶ事にあり、刻々と変化する戦況の中で、如何に周囲の状況を正確に把握できるか、如何に素早く次なる行動に移れるか、そう言った高い洞察力、判断力を養う事にある。


一見して何かのゲームの様な遊び心を感じてしまうルール設定になっているが、実際の所は、非常に要所を突いた秀逸しゅういつな演習内容となっている為、決して手を抜かない様にして挑んでもらいたい。


軍事演習における勝敗の決し方は、これまでの従来方式とは大分異なり、相手機体を何機撃墜したか、相手機体に何発弾丸を命中させたかによらず、演習会場各所に設けられた各拠点エリアを、どれだけ長い時間制圧出来たかによって争われる仕組みとなっている。


勿論、相手DQを撃墜状態に陥れる事自体に、何ら意味が無いとは言わないが、それでも、戦術的に相手部隊を効果的に封じ込める事で、相手より一分でも長く拠点エリアを制圧する事が出来れば、例え相手DQを一機も撃墜できなくとも、勝利する事ができると言う仕様になっている。


演習会場となる該当エリアは、アルテナス山南側麓に広がる起伏の激しい山岳地帯であり、周囲に群生する森の深さも、パレ・ロワイヤル基地周辺部に、負けず劣らずの色濃さを誇っている。


周囲のフィールド濃度は平均20%前後に保たれており、完全にクリアとまでは行かないが、それなりの感度を持って通信、索敵が行える状況だ。


演習会場各所に点在する拠点エリアの数は全部で二十箇所。


演習会場北東部と南西部に設置された両軍の作戦本部を基点にして、その距離と制圧難易度によって、制圧ポイントに補正がかかる事になっている。


つまりは、自軍作戦本部から近い場所に存在する拠点エリアは制圧ポイントが低く、自軍作戦本部から遠い場所に存在する拠点エリアは、制圧ポイントが高く設定されていると考えれば、一番手っ取り早いだろう。


実際はその拠点エリア周域の地形的複雑性と制圧難易度によって、更に細かな計算が必要になってくるが、お前達DQパイロットは、そこまで気にする必要は無い。


また、演習会場周辺部にはニュートラルラインと言う、非戦闘地域が設けられており、このエリア内で戦闘を行う事は硬く禁じられている。


このニュートラルラインは、撃墜状態に陥ったDQが、各々の作戦本部へと帰還する為の退避経路になっており、このエリア内に進入して発砲した部隊側には、かなりのペナルティが課せられる事になっている。


勿論、ニュートラルライン進入と共にモニター前面部に、ワーニングシグナルが表示される様、機体に細工を施してはいるが、何かしらの故障で機能しない場合も考えられる為、戦闘中は常に自分が居る位置を正確に把握するよう努めてくれ。



さて、それでは次に、本日の軍事演習に参加するメンバーを発表する。


<配布資料一部内容>


<Nyifine order>

<Military exercise 1st-reg>


No.1 Attacker L-front [fror]

 a Gilva-dilon(twmalc)

 b Yanrao-jyuanwan(reverdor-2)

 c Joir-landry(twmalc)


No.2 Attacker L-CenterBottom [glant]

 a Delpark-shank(twmalc)

 b insar-poljuo(twmalc)

 c Huganne-benjaming(twmalc)


No.3 Attacker R-CenterBottom [apach]

 a Keric-vilajera(twmalc)

 b Ruwsa-shall-cognac(twmalc)

 c Frol-croce(twmalc)


No.4 Defencer R-front [carion]

 a Johadal-moze(reverdor-2)

 b Malsran-cent(twmalc)

 c Ruwacy-oscaford(twmalc)


No.5 Defencer Lastwall1 [real]

 a Rancerot-avante(talcnus-X)

 b Pegy-simon(akynan)

 c Munia-roy(akynan-e)


No.6 Defencer Lastwall2 [emigo]

 a Hasan-al-gascoin(gunbritz-T13)

 b Sacks-seroian(akynan)

 c Show-imura(akynan-e)


これは本日の軍事演習における先発隊メンバー表であり、その他に途中交代要員として、20名の予備パイロットを登録してある。


配布資料最終頁に名前が記載してある20名については、先発隊メンバー達と同様、本日の軍事演習参加者として、部隊行動を共にしてもらう。


その他のメンバーについては、軍事演習三日目に参加させる予定で、残念ながら本日の軍事演習には不参加と言う扱いになるが、演習会場各所に設置された監視カメラの映像を、ランベルク基地内のモニタールームで観戦できるようになっている為、出来るだけ味方部隊の戦い方、相手部隊の戦い方を見て、脳内訓練に励むように。


勿論、軍事演習が行われている時間中、待機組みの行動を完全に拘束するつもりは無いが、言うまでも無くそれは休暇扱いではなく、待機任務扱いである事を、決して忘れないようにしてくれ。


軍事演習三日目の先発隊メンバーについては、空き日となる明日中には決定する予定で、負傷者、体調不良者などを除き、出来る限り全員が軍事演習に参加できるよう、配慮するつもりだ。


ただ、軍事演習におけるDQパイロット交代作業、弾薬の補給作業、DQ整備作業などは、全て軍事演習時間内に流動的に行う必要があり、そう言った様々な不確定要素を考慮すると、DQパイロットの交代ローテーションを、そのまま予定通りに実行できるかどうかは定かではない。


その為、軍事演習に参加出来るトータル時間は、人によってそれぞれ異なり、場合によっては大きな差異が生じてしまう事を理解しておいてほしい。


そして、この表で示した部隊編成についても、一貫して固定化するような愚策を取らず、その場その場の局面に応じて、流動的に変更を加えて行くつもりだ。


まあ、不慣れなルールをふんだんに盛り込んだ特殊な軍事演習に対して、開始する以前から彼是あれこれと思案した所で、所詮は机上の空論を抜け出す事は出来ないだろうし、取り敢えず軍事演習初日となるブラックナイツ戦は、全体のバランスを重視したこの編成を持って望む事とした。


先発隊の編成は、六つの小隊を目的別に三つに分類した形を取り、汎用性の高いトゥマルク二機に、機動性の高いリベーダー2を加えた、フロア隊、キャリオン隊を拠点攻撃チーム、トゥマルクのみで編成したグラント隊、アパッチ隊を拠点制圧チーム、そして、アウトレンジ重装型であるアカイナン二機に、長距離支援型のタルカナス、ガンブリッツをそれぞれ加えた、レアル隊、エミーゴ隊を最終ライン防衛チームとして機能するよう配置してある。


本番ではこれに、予備機として登録したトゥマルク三機と、E型アカイナン三機を合わせた全二十四機を持って、ブラックナイツ部隊と戦闘を行う事になるが、各小隊同士の流動的入れ替えについては、トゥマルク、アカイナン同士での入れ替えのみに限定するつもりだ。


よって、リベーダー2は常に攻撃組、タルカナス、ガンブリッツは、常に防御組に固定して運用する事になる。


戦闘エリアに投入できる機体総数は十八機までと定められており、如何なる場合においても、予備機との入れ替え作業は、必ず自軍作戦本部前のスタートエリアで執り行う必要がある。


これは、撃破状態を宣告された機体、並びに何かしらの損傷を負って、自走不能状態に陥ってしまった機体についても例外ではなく、その機体が自軍作戦本部へと辿り着くまでは、新たに機体を投入する事が出来ない。


自走不能状態に陥った機体については、該当エリア周辺部をニュートラルエリア化した上で、各部隊の回収作業班が機体を回収する事になっているが、どんなに急いだ所で、大幅なタイムロスは免れないだろう。


精密機械の塊であるDQを用いた戦闘において、機体に損傷を与えないよう配慮する事は、決して容易な事ではないと理解しているが、それでも、なるべく自走不能状態にだけは陥らないよう注意してくれ。


DQパイロットの交代タイミングについては、このDQ入れ替え時に執り行う予定で、予備となる六機のDQに関しては、常に次回投入されるパイロットの機体設定に合わせた形で、交代のタイミングを待つ事になる。


勿論この時、パイロットを交代する事で、小隊長が不在となるケースも出てくると思うが、小隊同士の統合、分離、または入れ替えのケースも含めて、新たに小隊長となる人員については、作戦本部側で指名する事とする。


そして一つ、ここでお前達に前もって言っておくが、小隊長として選抜する人員は、正規軍人、非正規軍人に関わらず、無作為に指名する事とする。


これは、我がネニファイン部隊の実情として、圧倒的に少数派である正規軍人に代わり、部隊を指揮し得る人材を、お前達の中から見出したい考えがあるからであり、少々乱暴な手かもしれないが、今回は敢えてこう言った手法を用いる事にした。


場合によっては、正規軍人が非正規軍人の指揮下に入るケースもあると思われるが、私情を挟んでのイザコザを起こすような真似だけは、決してしないようにしてくれ。



それでは次に、軍事演習で使用する攻撃火器について説明する。


今回の軍事演習で使用可能な攻撃火器は、サブマシンガン、アサルトライフル、アジャスターノズルを装着したキャノン砲のみと定められており、炸裂弾を用いた兵器、ミサイル系兵器など、DQ機体に著しく損害を与えるような、破壊的兵器は完全に使用が禁止されている。


勿論、相手DQに接近しての格闘戦も基本的には禁止で、已む無いケースでの衝突事故以外は、運営本部からペナルティが課せられる場合もある為、各パイロット共に、その点に十分留意して戦闘するよう心がけてほしい。


戦闘で使用する弾丸の種類は、特殊マーカー付きペイント弾で、被弾した箇所に付着したマーカーペイントの状況に応じて、運営本部が機体損傷度合いを判断、その機能神経を遠隔操作でカットする仕組みだ。


部分的損傷を受けた機体については、そのまま継続して戦闘に参加する事が出来るが、撃墜と見做みなされた機体については、ニュートラルラインを辿って、自作戦本部脇に設置された仮設整備工場へと移動し、ペナルティ時間を消化する必要がある。


このペナルティ時間は、DQ機体に対して課せられるものと、DQパイロット個人に対して課せられるものと二種類が存在し、DQパイロットに課せられるペナルティ時間は、DQ機体に課せられるペナルティ時間の三倍となる一時間半に設定されている。


勿論、このペナルティを課せられた、DQ機体、DQパイロットについては、その設定時間を消化し切らない限り、戦闘エリアに戻る事が出来ない。


予備登録メンバーの数から見ても、全員がペナルティ時間消化状態と言う、馬鹿げた状況には陥らないと思うが、予備機が六機しかないDQに関しては、投入できる機体が頭打ちとなってしまう可能性もある為、なるべく部隊として被撃墜数を連続して発生させないよう、気を付けなければならない所だろう。


今回の軍事演習は、完全に休みなしで執り行われる八時間耐久レースであり、目先の勝利だけに固執するのではなく、その後の展開をも見据えた、有効的な部隊運用が必要となってくる。


その為、戦場で著しく劣勢に立たされた場合には、余り無理をせず、思い切って部隊を退却させる事も必要だろうし、逆に相手を一気に殲滅できそうな状況であれば、無理なゴリ押しもやぶさかではないと考えている。


戦闘エリア全体を見渡した大まかな行動指標については、作戦本部側から適宜てきぎ指示する事とするが、戦場における細かなな部隊行動については、各小隊長の判断に一任する事とする。



以上が今回の軍事演習に関わる大まかな概要説明だ。



本来であればこの後、質疑応答の時間を設けたい所なのだが、余り演習開始まで時間がないと言う事で、本日の作戦会議はこれで終了とする。


ほとんどぶっつけ本番に近い形で軍事演習に突入する事になるが、これはある意味、わざとそうした側面もある為、余り気にしないようにしてくれ。



最後に、我がネニファイン部隊は、軍事演習最終日より五日後の六月三十日には、新たな任務地であるパレ・ロワイヤル基地へと配属され、基地の防衛任務に当たる事になるが、今回の軍事演習は、それを見越した上での、非常に有益なシミュレーションとなるはずだ。


各人共に、常に本番を想定した意識を持って、この軍事演習に望むようにしてほしい。



以上だ。


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