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第74話 それからどうしてどうなった

 そして、それからどうなったかと言うと。


 アリオン王国側が、逃げ出した私にそれ以上追っ手を放つ事はなかった。ヘリオス王子が提供した情報を元にリオンとジェフリーが防衛線を敷いた事で、いかに裏工作が得意なアリオン王国と言えど、簡単にこの国に手出しをする事は出来なくなっていた。

 叔父様の説得は、無事に終わったようだった。シエルと離れて暮らす事になった上、嫌っていた兄……私のお父様が、自分を庇ったせいで危うい立場に身を置く事になったのが効いたらしい。

 曰く、兄は自分の事を馬鹿にしていると、叔父様は思っていたらしい。優秀な兄の足元にも及ばない自分を、見下していると。

 けど、本当はそうじゃなかったと知って……頑なだった心が、少しずつ溶けて……。

 前世でも今世でも一人っ子の私には、きょうだいの事はよく解らない。けど、ミリアムとマリクもそうだったけど、近すぎるせいで逆に見えない事もある事はとてもよく解った気がする。

 そんな感じでアリオン王国の企みをひっくり返す準備がすっかり整ったところで、アリオン王国でクーデターが起こった。ヘリオス王子が、民衆と共に遂に蜂起したのだ。

 これまで散々周辺諸国を敵に回してきた国王軍が、援助を受けられる事はなく――。クーデターは見事に成功、玉座に着いたヘリオス王子は各国に謝罪すると共に、これからは戦いを止め友好的な関係を作っていくと宣言したのだった。



「……何か結構アッサリと、全部丸く収まっちゃったわね」


 総てが終わって、ようやく緊張も警備態勢も解けて。肩の荷が下りた私は、自宅のシエルの部屋でのんびりと一心地着いていた。


「……どうでもいいけど、もう僕と部屋で二人きりになっても動揺も警戒もしないんだね、サブリナは」

「今更でしょ? それに貴方は、嫌がる女の子を無理矢理手込めにするような、そんな下卑た人じゃないもの」

「うーん……完全に信頼されているというのも嬉しいような、残念なような……」


 貴方だって、私しかいないとは言え正体を隠す気もなくのんびりしてるんだからおあいこだと思うけど。……とは、優しい私は口にしないでおいてあげた。


「まぁ、叔父上が一ヶ月の謹慎処分で済んで良かったよ。ジェフリー達が、国王陛下に口添えしてくれたお陰だね」

「シエルの家も、しばらくは厳重な監視を置いた上でなら、お父様の謹慎が開け次第再興される事が約束されたしね」

「まさか、他ならぬ叔父上が後ろ盾になる事に名乗りを上げてくれるとは思わなかった」

「きっと、お父様も可能なら叔父様を没落させたくはなかったのよ」


 二人で紡ぐ、取り留めのない話。とてもとても、穏やかな時間。

 だから、二人とも口に出さなかった。口に、出せなかった。

 シエルがここにいるのは、シエルの家が没落したから。もしお家再興が為されれば――シエルは元の家で、元通りに暮らす事になる。

 それは、私達二人の別れを意味していた。


 シエルに、言わなくちゃいけないのに。

 私はその一言を、ずっと伝えたかったはずのたった一言を、今もまだ言えずにいる。


 結局、その日は、他愛もない話をするだけで一日が終わった。

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