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第65話 敵か味方か第三王子

 窓のない馬車に乗せられ、私は遠く、アリオン王国まで連れて来られた。

 アリオン王国で私は、一応賓客という立場に置かれ、貴族としての礼はきちんと尽くされた。まぁ仮にも王子の妻にしようとしているのだから、それも当然ではあるのだろう。

 ただしお手洗いやお風呂以外で与えられた部屋から出る事は出来ないし、数少ない外出も複数の見張りつき。俗に言う、軟禁という奴だ。


「まさか自分が、そんな目に遭うなんて……」


 賓客用の、絢爛豪華な部屋の中で、私は一人嘆息する。前世の物語でよくあったシチュエーションを、まさか自分が経験するとは思ってもみなかった。


「問題は、これからどうするかよね……」


 とりあえずここまでは、想定の範囲内だ。ではここから、私に何が出来るのか。


「シエルを信じて、助けを待つ事も出来るけど……」


 考えて、何となくそれは今の自分らしくないなと感じた。前世の記憶が蘇る前の私だったら、解らなかったけど……。

 今の私は、未来は自分の意志でどうとでも変えられる事を知っている。何ならこの流れ自体、本来の歴史シナリオでは有り得なかったものだ。

 なら、この国から独力で逃げるのは流石に無理だとしても……何かしら、出来る事はあるんじゃないかしら?


「それに、考えてみれば、これはチャンスなのかもしれないわ」


 アリオン王国の内情については、正直よく解っていない。近隣の国々を次々と併合し、大きくなっているというくらいだ。ゲームの方には、名前すら出て来なかった。

 今私は、そのアリオン王国の中枢にいるのだ。これはまたとない、情報収集のチャンスなのではないだろうか。


「そうよ。ただ助けを待つだけじゃなくて、私は私に出来る事をする!」


 ――コンコン。


 そう決意し拳を握り締めたところで、突然、部屋にノックの音が響き渡った。私は慌てて姿勢を正し、部屋の外に応える。


「はい、どうぞ」


 私の返事に、部屋のドアが遠慮がちに開けられる。入ってきたのは、一人の美青年だった。

 長い金髪を緩く一つに括り、切れ長の赤い瞳は憂いの色に満ちている。白を基調とした礼装は派手すぎず、上品な印象を与える。

 ……誰だろう? 少なくとも、召使いとは思えない。


「失礼致します、サブリナ様」

「あっ、はい……貴方は?」

「僕はアリオン王国第三王子、ヘリオス・ルドルフ・バーンハイムと申します。お目にかかれて光栄です、サブリナ様」

「!?」


 告げられた名前に、私は思わず、限界まで目を見開いてしまう。こ、この人が、第三王子ヘリオス!?

 な、何か全然イメージと違う。この手の流れで出てくる王族って、何て言うか、こう、残念なイメージしかなかったから。


「ああ、楽にしていて下さい。僕に気遣いは無用です」


 慌てて頭を下げる私に、ヘリオス王子は苦笑して言った。み、見た目だけじゃなくて、どうやら中身もイケメンみたい……?


「あ、ありがとうございます、殿下」

「ヘリオスとお呼び下さい。貴女は僕の妃になる人なのですから」


 私が顔を上げると、ヘリオス王子は一気に距離を詰め、私を抱き締めてきた。や、やっぱり前言撤回! ヤバいイケメンだわ、この男!

 そう思い、私が拘束から逃れようとすると。


「――国に帰りたくはありませんか? サブリナ様」


 耳元で囁くように、そうヘリオス王子が言った。

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