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第58話 裏設定が多すぎるのも考えもの

「『成り上がりプリンセス』の詳しい設定?」


 翌日。昼休み、使用人クラスに出向くシエルを見送った私は、そのままディアスを校舎裏に呼び出した。


「ええ。バッドエンドまで全部直に見た貴方の方が、私より細かいところを知っていると思って」

「それは構わないが……一体、何について知りたいんだ?」


 その質問の答えは、昨日のうちに決めてきた。私の知りたい事は、大まかに二つ。


「まずはヒロイン――シエルの家族について。そして私の父、アドリアス公爵についてよ」

「ふむ……」


 私の返事に、ディアスが顎に手をやり記憶を探り始める。そして間もなく、躊躇いがちに口を開いた。


「……まず先に謝っておくと、その二つについて語られた場面はとても少ない。だからあまり多くの情報は俺も知らない」

「それでもいいわ。教えて」

「解った。まず……ヒロインの父はアドリアス公爵とは兄弟同士で、仲はあまり良くはない。それは知ってるな?」

「もちろんよ。だから私はゲームが始まるまで、シエルと面識がなかったんだもの」

「なら、より相手を嫌っていたのはヒロインの父の方だというのは?」

「えっ?」


 それは初耳だ。お父様がシエルの父を陥れたと言うから、てっきりお父様の方がより強く相手を嫌っていると思っていた。


「公爵がヒロインを引き取ると言い出した時も、ヒロインの父は最後まで反対していたらしい。公爵の力は借りたくないと」


 そんな話、シエルからも聞いた事がない。シエルが引き取られるまでに、そんな一悶着があったなんて……。

 ……でも、これでますます解らなくなった。ならお父様は、何でシエルの家を没落させたの?


「そしてもう一つ。アドリアス公爵はゲーム中、国の政策について反対派と揉めていたらしい」

「そう……なの?」

「ああ。今の俺も情報として得ているから間違いない」


 それも初耳だ。お父様は自分の仕事の事は、家族である私達には一切言わないから。


「……ここからは俺の推測なんだが」


 戸惑う私に、ディアスがそう言って更に声を潜める。


「アドリアス公爵が失脚しなければ、公爵は反対派を説き伏せる事に成功する。バッドエンドルートではそうなっていたからだ。逆に言えば……」

「お父様が失脚すれば、ゲームでは書かれなかったけれど、反対派が勝利する……」

「……多分な」


 ……何だか一気に、きな臭くなってきた気がする。もしかしてゲームで起こった事って、ただシエルがお家再興したってだけじゃないんじゃないの?

 ん? そういえば……。


「ディアス、貴方、前にうちで不審な輩を見たって言ってたわね」

「公爵家を訪ねた時か? ……ああ、使用人にも正式な客にも見えなかったから、よく覚えている」


 もしお父様がシエルの家を没落させた理由が、単なる兄弟間の確執でないのだとしたら。私の知らない何かが、裏で大きく動いているのだとしたら……。


(知らないといけない。このゲームの裏に隠された、本当の事を)


 そんな思いを胸に、私は、掌を強く握り込んだ。

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