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第55話 世界を動かす悪役令嬢?

「うわぁ……随分いっちまったな、オイ」

「……」


 ロイドとディアスの二人が、目の前のリオンを呆然と見つめる。前世でリオンが推しだったディアスは特に、ショックを隠し切れないようだ。


「リオンが……あの理想の王子様だったリオンが……そんな……こんな……」

「……という訳で、貴方達にもリオンの体型を元に戻す手伝いをして欲しいのだけど」

「勿論いいぜ! リオンとは今まであんまり関わりなかったけど、サブリナ達の頼みだしな!」

「ディアス様はどうです? ……何だか心ここに在らずといったご様子ですけれど」


 事情を知らないシエルが、不思議そうにディアスの顔を覗き込む。ディアスはそれを見て漸く我に返り、慌てて口を開いた。


「あっ、それは勿論! カッコいい推しを取り戻す為なら、僕で良ければ、ハイ」

「……ディアス、何か口調違くね?」

「ど、どうやらディアスったらよっぽど動揺してるみたいね!」


 動揺しすぎてヒョウタの素が出てしまっているディアスを必死にフォローして、チラリとリオンを見遣る。リオンは感動したように瞳を潤ませ、傍らのジェフリーを振り返った。


「ジェフリー……お前……」

「……フン。どうせなら協力者は多い方がいい。コイツらなら余所に漏らす心配もないしな」

「お前、こんなに同性の友人が出来てたのですね……!」

「待て、そっちか!」


 リオンの言い草に、思わず私が吹き出してしまう。確かに前のジェフリーは、同性にとても嫌われていたものね。

 本当に、よくここまで変わったものだわ。これも正史シナリオが狂ったお陰なのかしら?


「んで? 協力するこたするけどさ、俺ら具体的に何すりゃいいんだ?」

「まずロイド、お前は顔の広さを生かしてより効果的に体重を搾る方法を集めろ。ディアス、お前の国に代謝のいい特産物があっただろう? それを大量に取り寄せてくれ。経費は俺がもつ」


 予想していたよりもずっと的確に、二人に指示を出すジェフリー。これがジェフリーの、本来の実力なのかしら。それとも性格が変わったから?


「解った! ……んでも、情報なら俺よりヨシュアに直に頼めば良くね?」

「アイツの事だ、代わりに何を要求してくるか解らんだろう」

「あー……確かに……」


 ジェフリーの言葉に納得して、ウンウンとロイドが頷く。シエルで釣ればあるいはとは思うけど……いや、やっぱり駄目。あんな変態、可能な限りシエルに近付けさせられないわ。


「……変わったな、ジェフリー」


 その時、私と同じ事を思ったのか、ディアスがポツリと呟いた。


「そうよね。ゲームのジェフリーからは考えられないわ」

「全くだ」


 こっそりディアスに近付いて小声で告げると、ディアスは可笑しそうに笑った。そして私にとって、意外な言葉を口にする。


「これもきっと、サブリナのお陰だな」

「え?」


 反射的に、ディアスの顔を見返す。……どうして私? 攻略対象に影響を与えるのは、ヒロインのシエルの役割じゃないの?


「お前はシエルが自分にべったりになった事で、本来の歴史シナリオが変わったんだと言ってたな。だが、それは違うと俺は思う。……きっと切欠はお前だ、サブリナ」

「私……?」

「お前が前世の記憶を得て変わった事で、皆が変わった。俺自身も。……僕は、そう思います」


 最後は素の口調でそう言って、ディアスが照れ臭そうに笑う。……私が変わったから、皆が変わった……?

 だって私はただの悪役令嬢で、運命を決めるのはシエルの筈で……でも、それはゲームの知識として言ってるだけだわ。

 だって、私はミリアムとマリクの運命を変えたじゃない。そりゃあ、シエルにも手伝って貰ったりしたけど。


(……もしかして、私とシエルが本当に結ばれるような未来も……?)

「ちょっと、ディアス様! お姉様に近すぎです!」


 そんな考えが脳裏をよぎった時、私とディアスが一緒にいる事に気付いたシエルが非難の声を上げた。ディアスはビクリと体を震わせ、即座に私と距離を取る。


「ディアス様、貴方は決闘で負けたんですから! あまりお姉様に馴れ馴れしくしないで下さい!」

「わ……悪かった」

「お姉様、ディアス様に何かされたりしませんでしたか?」

「大丈夫よ、大袈裟ね」

「もう、お姉様はもっとご自分の魅力を自覚して下さい!」


 可愛らしく頬を膨らませ私に向き直るシエルを見て、今考えた事は、まだ胸の内に閉まっておく事にした。

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