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第41話 最後の攻略対象登場

「うーん……」


 授業の内容を右から左へ受け流しながら、私は考える。

 あのミリアムが落ち込むなんて、きっとよっぽどの事があった筈だ。けど本人に聞いてみたところで、素直に答えてくれるとは思えない。

 ミリアムは基本的に、何かあっても全部自分で解決してしまうタイプの人間だ。言ってしまえば、他人に頼る事をしないタイプ。

 そんなミリアムが、大人しく私達に頼るとは考えにくい。そもそも頼ろうとしてるのならば、自分から悩みがあると話を切り出す筈だ。

 となれば、他の誰かから聞き出すのが一番だけど……私以上にミリアムの事に詳しい人間……。


「……あ」


 その時私は思い出した。ミリアムの事を聞くのに、最適な人物がいた事を。

 彼ならきっとミリアムに何があったか知ってるし……何より前世の私が、彼を見たいと囁いている!

 そう心に決め、私は放課後になるのをジッと待ったのだった。



「珍しいですわね。お姉様が使用人クラスに行きたいだなんて」

「ちょっとね。話をしたい人がいるのよ」


 やってきた放課後。私はシエルと共に、使用人クラスを訪れていた。

 目的の人物は、使用人クラスにいる。けれど目当ては、ミリアムの家の使用人じゃない。

 その人物とは――。


「……いたわ! マリク先生!」


 辿り着いた使用人クラス、丁度教室から出てきた人物に、私は声をかける。その人物は胡乱げな表情で、私の方を振り返った。

 青く短い髪を整髪料で固め、切れ長の銀色の瞳には同色の眼鏡がかけられている。身長は高く、ジェフリーやディアスといった高身長の生徒達に引けを取らない。

 彼の名はマリク・イネス。本来ならシエルの担任になっていた人物であり、この「成り上がりプリンセス」の最後の攻略対象であり――。


「ああ……久しいな、サブリナ嬢」

「はい、お久しぶりです」


 ――そして私の親友、ミリアム・イネスの実の兄である。その為「私」は個人的に彼を見知ってるけど、「前世の私」が彼と対面するのは初となる。

 ああ……妙にそわそわしてきた。と言うのも前世の私、ジェフリーの次に推していたのがこのマリクなのだ。

 だから今、私の心は親友の兄との再会を懐かしむ「今」の私と第二の生の推し登場に盛り上がる「前世」の私とで真っ二つになってる訳で……あああややこしい!


「最近の噂は聞いている。そちらの娘が例の使用人か?」

「はい。はじめまして、シエルと申します」

「主人より先に口を開かない。減点一だ。……サブリナ嬢、君はもっと礼儀を気にする女性だと思っていたが」


 自己紹介をしたシエルに、眉根を寄せて厳しく言い放つマリク。彼は使用人のマナー講師でもあるから、殊更使用人の礼儀には厳しいのよね……。


「彼女は使用人ですけれど、私にとっては家族のようなものですから。……それで、先生にお聞きしたい事があるのですが」

「ふむ? 何だ?」


 ひとまずシエルのフォローをし、本題に入る事にする。……あの厳しい目で見られると、二重の意味で落ち着かないわね……。


「……ミリアムの事なのですけど。彼女、最近少し様子がおかしい気がして……兄である先生なら、何かご存知ではないかと思いまして」

「……!」


 ……ん? 今、マリクの顔色が少し変わったような……?


「先生、今……」

「……私は何も知らない。仕事が残っているのでこれで失礼する」

「あ……っ」


 私が呼び止めるより早く、マリクはきびすを返して足早にその場を立ち去ってしまった。後には呼び止めようとした手を出したまま固まった私と、事の成り行きが解らない様子のシエルが残される。


「お姉様……何ですの? あの先生……」


 ……うん、シエル、貴方、もうお姉様呼びがデフォになってない?

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