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第40話 ミリアムの悩み事

「さ、お姉様、わたくしの愛の籠もった紅茶をどうぞ♪」


 ある日の昼休み。久々にシエルを交え、私達は賑やかに昼食を摂っていた。


「……いつも思うけど、普通の紅茶と何が違うの、それ」

「わたくしの愛がある分美味しくなります♪」

「や、そういうのはいいから」

「本当ですのに……」

「シエル俺にも! 俺にも愛プリーズ!」

「残念ですが、お姉様以外の方の分は売り切れです」

「ガーン!」

「……懲りんな、お前も……」


 私に重すぎる愛を注ぐシエル、調子に乗ってはシエルに冷たくあしらわれるロイド、それに呆れた視線を視線を送るジェフリー。それに羨ましげな視線を送るディアスも加わって、これが私にとっての日常。

 この日常がどんなに尊いか、あれだけバタバタした後だから強く実感出来る。うん、平和な日常、サイコー!


「……お姉様、何だか今日は妙に嬉しそうじゃありません?」


 そんな風に平和のありがたさを噛み締めていると、いつの間にかこっちに視線を向けていたシエルにそう言われた。……いけない、顔に出てたかしら。


「もしかしてお姉様……久々に私がいるので嬉しいと思って下さってます?」

「……そうね」

「もう、つれない。でもそんなお姉様が……って、え!?」


 いつもの戯言にたまには好意的に応えてあげると、シエルが目を見開いて驚いた。え、ち、ちょっと驚きすぎじゃない?


「どうしたサブリナ、何か悪いものでも食べたのか!?」

「俺、普段サブリナがシエルの言う事流してんの、そういうプレイだとばっかり思ってた!」

「貴方達、揃いも揃って失礼ね!?」


 更にジェフリーとロイドからもそう言われ、心外過ぎて逆にムカついてくる。ちょっと、そこまでシエルに塩対応した記憶はないんだけど!?


「もう、ミリアム、貴女からも何か言って……」


 何とか味方を得ようと、私は傍らのミリアムを振り返る。けれど……。


「……」

「……ミリアム?」


 ミリアムは心ここに在らずといった様子で、ぼうっとティーカップを眺めていた。いつからそうしていたのか、ティーカップの紅茶からは既に湯気が消えている。


「ミリアム? ……どうしたの?」

「……え?」


 軽く肩を揺すると、そこでミリアムは漸く私を認識したようだった。顔を上げ、まだ焦点の定まりきってない瞳を、急いで私に向ける。


「ご、ごめんなさい。何の話だったかしら?」

「い、いえ……大した用事じゃないから大丈夫よ」

「……そう……」


 私がそう言うと、ミリアムは再び俯き、自分の世界に没頭してしまう。私も、シエル達も、その様子に呆然となる。


(ミリアム……一体何があったの?)


 いつもの日常は、まだ戻ってきていない。私はこの時強く、そう実感したのだった。

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