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第34話 使用人は情報通

 それから。宣言通り、シエルは以前のようには私に付きっきりではなくなった。

 まず使用人クラスに足を運ぶ事が増えた。最初は反発もあったみたいだけど、そこは見た目と愛想のいいシエル。あっという間に使用人の友達も増えたみたい。

 そしてジェフリー達にも、実家の状況を正直に打ち明けた。反応は驚いたり逆に納得したりと様々だったけど、全員がシエルのお家再興に手を貸す事を快く了承してくれた。

 そうそう……ディアスは正式に、私達の友人になった。今はヒョウタらしさとディアスらしさ、その中間といった感じに落ち着いている。

 総てが、順調に進んでいる。……そう、思ってたんだけど……。



「どうしたの、サブリナ。顔が不細工になってるわよ」


 ある日の放課後。椅子に座ったままの私を見下ろしたミリアムが、そう言って不審な目を向けた。


「不細工とは何よ、不細工とは」

「見たままを言っただけだけど」


 わざとらしくむくれてみるけど、ミリアムの反応は容赦無い。本当に、歯に衣着せない友人だ事!


「……ちょっと、悩んでる事があるのよ」

「悩み?」

「最近、シエルに避けられてる気がするの」

「シエルが、貴女を? ……うぅん」


 私の言葉に、ミリアムは少し考え込む。それから、小さく同意の頷きを返した。


「……そうね。言われてみればここ最近、あなたと一緒の時間が極端に減ってるわ」

「やっぱり……」


 自分以外の人間に肯定された事で、尚更気分が重くなる。私、シエルに対して何かしたかしら……。


「シエルと言えば、もう一つ」


 私が悩んでいると、ミリアムが何かを思い出すように顎に手を遣った。


「何?」

「最近の彼女が一緒にいるの、オーズ伯爵家の使用人が多い気がするわ。ほら、あの使用人の中では一際目立つ」

「え?」


 オーズ伯爵家の使用人。それを聞いて、私の脳裏を一気に記憶が駆け抜ける。それは久しぶりの、前世の――正史ゲームの記憶。

 基本的に攻略対象は貴族の子息のこの「成り上がりプリンセス」だけど、一人だけ、使用人の立場の攻略対象がいる。それがオーズ伯爵家の使用人、ヨシュアだ。

 ヨシュアは情報通で、現在誰の好感度が一番高いかを教えてくれるお助けキャラ。普通にプレイしていればただそれだけのキャラなんだけど、「一人以上の攻略対象のルートに入れる状態でわざとルートに入らない」という条件を満たして私の婚約破棄イベントを迎える事で攻略可能になる、いわゆる隠し攻略対象だ。

 その正体はオーズ伯爵の本物の息子。使用人と立場を入れ替え、庶民の立場で処世術を学んでいたというのが真相だ。

 そのヨシュアとシエルが、急速に距離を縮めている。普通に考えれば、情報通のヨシュアから色々な情報を手に入れる為だけど……。


(何故かしら……嫌な予感がする……)


 縋るように見上げた窓の向こうの空には、暗雲が垂れ込め始めていた。

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