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第25話 これは断じて恋じゃない

「はぁ……今、そんな事になってるんですか……」


 一通りの説明が終わると、ヒョウタは呆けたようにそう言った。その気の抜けた表情に、ヒョウタは本当にディアスではないのだと改めて認識する。

 ヒョウタにはシエルの本当の性別以外、この四ヶ月の出来事を洗いざらい総て話した。お陰で授業はサボる事になったけど、後悔はしていない。


「つまりヒロインのシエルはサブリナさんになついてて、本来の攻略対象達はまるで眼中にないと……」

「不本意だけど、そういう事になるわ」

「そして貴女も、シエルをいじめる気はないと」

「必要がないもの。それにあんな可愛い子をいじめるなんて、ゲームの私はどうかしてるわ」


 私が断言すると、ヒョウタは深く深く息を吐く。そしてふにゃっとした、柔らかい笑顔を浮かべた。


「良かったぁ……じゃあ僕、ディアスルートに入る心配をしなくていいんだぁ……」

「ああ、貴方はリオン推しだって言ってたものね」

「それもですけど……僕にヒロインの相手役なんて荷が重いって、ずっと思ってましたから……」


 成る程。確かにヒョウタは話をする限り内気な草食系って感じで、自分から女の子にグイグイいくタイプじゃないものね……。


「でもその割には、ゲームのディアスのフリをしてるのね?」

「あ、はい。最初は真面目にしてたんですけど、元々のディアスのフリをした方が人が寄ってこないって気付いたんです。それで……」

「……随分人見知りが激しいのね……」

「はい……女の人は特に……」


 恥ずかしそうに、シュンと俯くヒョウタ。……ん? その割には私と今普通に喋ってるけど?


「……私はいいの?」

「サブリナさんは前世仲間ですから! それに、凄く話しやすいですし」

「そ、そう?」


 話しやすいなんて、そんな事初めて言われたわ。立場のせいで、近寄りがたいとなら言われた事があるけど。


「あの、サブリナさん」


 不意にヒョウタが、はにかんだ顔で私を見る。心なしかその頬は、ほんのりと赤く染まっている。


「何?」

「これからも時々、こうして会って貰えませんか、二人で。前世の話、もっと貴女としたいです」

「え……」


 こ、これって……ある意味デートのお誘い? ヒョウタって、もしかして気を許すととことん距離感が近くなるタイプなのかしら?

 でも……私も一度じっくり、ヒョウタと前世の話がしてみたいのも確か……。


「……いいわよ。それくらい」

「やった! ありがとうございます、サブリナさん!」


 了承の返事を返した私に、ヒョウタは眩しい笑顔を向けた。その無邪気な顔に、私の胸が小さく高鳴る。

 い……いや。ヒョウタとは前世友達だから。ただの!

 そんな微かなドキドキに合わせるように、授業終了の鐘が鳴り響いたのだった。

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