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第21話 真打ちは遅れてやって来る

「ご機嫌よう、皆さん。今日も健やかそうで何よりです」


 時は九月、いつも通りの朝。担任のパメラ先生が、そう言って教室を見回した。

 今日もまた、賑やかな一日が始まるのね……なんて思っていたのも束の間。


「突然ですが、今日からこのクラスに一人、新しい仲間が増えます」


 そんないつもと違う事を、先生が言い出した。同時に、私の中の前世の記憶がむくりと顔を出す。

 九月。編入生。この二つのキーワードに、該当するイベントがあった。


 この「成り上がりプリンセス」の攻略対象は全部で六人。そのうち一人は特殊な手順で隠しルートに入らないと攻略出来ないけど、それを抜かしても、シエルを好きになる可能性のある男性が五人いる事になる。

 本来ならこの九月の時点で、シエルは一人を除いて総ての攻略対象と会っている筈なのだけど、完全にゲーム外のシエルの行動のせいでそうはなっていない。何故なら使用人クラスにいないと会えない人物が、中には混じっているからだ。

 そして――本来の歴史シナリオであれば唯一ここまでにシエルと出会う事のない人物。ゲームの中では、攻略最難関。

 にもかかわらず、公式に行われた人気投票では二位のジェフリーに大差を付けてぶっちぎりの一位を獲得した男。

 その男が、九月。この学園にやってくるのだ。


「さぁ、お入りなさい」


 先生の呼びかけから一拍置いた後、教室の扉が開かれる。現れたその人物に、教室が俄かにざわめくのが解った。

 黒に紫のメッシュを入れた、少し長めの派手な髪。両耳に幾つも付けられた、シルバーのピアス。

 制服を着てはいるけれど、まるで貴族クラスの者とは思えないほど緩く着崩している。この場にいる全員、いや、この学園の全生徒と比べてさえ、彼は明らかに異質だった。


「……」


 鋭い赤い瞳が、私達を威圧するように睨み付ける。「ヒッ」という小さな悲鳴が、何人かから上がるのが聞こえた。

 そう、彼こそが――。


 公式人気投票第一位、隣国の王太子、ディアス・クロウ・フェルナンデスである。

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