表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/77

第18話 これ以上の勘違いは勘弁して

 ポカンとした顔で、ロイドが私達を見つめる。シエルもまた、驚きに目を見開いていた。


「……こういう事だから! 貴方の入る余地は、最初からないの!」


 唇を離し、トドメとばかりにシエルを強く抱き締める。頬がだんだん熱くなっていくのが、自分でも解った。


「……そっか」


 暫しの沈黙の後。ロイドが、ポツリと呟いた。


「シエルとそういう関係だから、アンタは婚約を破棄しようとしたんだな。シエルが俺を好きだってのは、本当に俺の勘違いだったんだな」

「……そうよ」

「ゴメンな、シエル。沢山迷惑かけちまったな」


 そう言って笑ったロイドは、少し寂しそうで。その様子に、少しだけ胸が痛んだ。


「俺って、昔からこうでさ。すぐ早とちりして、周りに迷惑かけちまうの」

「ロイド様……」

「あ、シエル達の事は勿論、絶対誰にも言わないぜ。フラれたからって相手を傷付けるような、そんな女々しい男にはなりたくない」


 私達が言う前に、ロイドはキッパリと言い切る。いっそ清々しさすら感じるその姿は、前世の記憶にあるモニター越しの彼そのままだった。


「じゃあな、二人とも。俺の事は忘れてくれ」

「……待って!」


 背を向けこの場を去ろうとするロイドを、私は思わず引き止めていた。ロイドが、意外そうな顔をしてこちらを振り返る。


「え……?」

「その、シエルを貴方にあげる訳にはいかないけど……貴方と友人関係にはなれると思うの。私も、シエルも……」

「そうですわ。これからも本当のご友人として、仲良くして頂けると幸いです」


 続けてシエルもそう言うと、ロイドの目が大きく見開かれる。そしてみるみるうちに、顔に喜色が広がっていった。


「……なぁ、それって……」

「ええ、私達は友だ……」

「俺達、これからは心友って事だよな!」

「は?」


 いやいやいや。ちょっと待って。いくら何でも話が飛躍し過ぎじゃない?

 しかもあれじゃない? 「しんゆう」のニュアンスが普通と違わない?


「互いに秘密を打ち明けあった心友……! くぅーっ、ずっと憧れだったんだよな!」

「あ、あの、ロイド様……」

「あ、俺が秘密を言わないのは不公平だよな! 実は俺……十歳までおねしょしてたんだ! 絶対、誰にも言わないでくれよな!」


 「そういう問題じゃない」と激しくツッコみたい。ツッコみたいけど、ロイドがあまりにもイイ顔過ぎて何と言うべきか解らない。


「これからは心友としてよろしくな! シエル、サブリナ!」

「……ええ」

「……はい」


 私とシエルは、ロイドの浮かべた満面の笑みに、死んだ目で頷く事しか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ