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第11話 イケメンなら何をしても許されるとでも?

「……今、何と言ったのかしら」


 聞き間違いだと思いたくて、一縷の望みに賭けてそう問い返す。けど残念な事に、リオンの答えは一緒だった。


「サブリナを王妃として、シエルさんを側室としてそれぞれ迎える。そう言いました」


 くらり。何だか急に目眩がしてきたわ。

 要するにこれって、二股宣言よね? 更に言えば、私とは偽装結婚しますと言ってるようなもんよね?

 そりゃこのゲームの価値観で言えば、王妃とは別に側室を迎え入れる王も珍しくはないわよ。以前の私だったら、納得して受け入れてしまってたかもしれない。

 けど今の私には、前世の記憶がある。この世界のものとは異なる価値観を知ってしまっている。

 だから解る。この提案で本当に幸せになるのは――リオンただ一人だという事が。


「公の場には、王妃であるサブリナに出席して貰います。シエルさんには人目に付かないよう生活して貰う事になりますが、それ以外の不自由はさせませんし、可能な限り望みも聞き入れましょう」


 私の内心になど気付かずに、リオンは得意気に語り続ける。シエルの方は曖昧な笑みを浮かべるばかりで、感情が読み取れない。


「サブリナとの間に世継ぎを作らなければ、シエルさんの子を次の王に据える事も出来るでしょう。サブリナも他の男との間に子供を作る以外には特に行動の制限はしませんので、どうかお好きなように……」


 そこまでが私の限界だった。私はおもむろに、ティーカップを片手に立ち上がる。


「? サブリナ……?」


 突然立ち上がった私を、リオンが不思議そうに見つめる。そのリオンの顔面に――。


 ――バシャッ!


「っ!? 熱ぅっ!?」

「お、お姉様!?」


 私は、カップに注がれた熱々の紅茶をぶちまけてやった。


「……女を舐めるのも大概にしなさいよ、この二股ゲス野郎」

「サ、サブリナ?」


 急いでナプキンで顔を拭いたリオンが、私の顔を見て顔をひきつらせる。そうでしょうね。貴方は私が本気で怒った顔なんて、見た事がないものね。


「愛してるのは他の女だけど自由にさせてやるから結婚してくれ? ふざけないで。そんなので喜ぶのは、財産目当ての安い女だけよ。それとも何? 貴方は私をそんな女だと思ってたの?」

「そ、それは……」

「……でもね、私がそれ以上に気に入らないのは……」


 言って私は、リオンを強く睨み付ける。それを見たリオンが、軽く後ずさった。


「貴方が! 好きな女を日陰の存在で満足させようとしてる事よ!」

「……っ!」

「好きになったなら、貴方の全力で愛しなさいよ! 堂々と夫婦として振る舞えるようにしなさいよ! それもしようとしない貴方に、愛だの恋だの言う資格はないわ!」

「う……っ」

「安心して。貴方みたいな軟弱者との婚約、こっちから破棄させて貰うわ。良かったわね、枷がなくなって」

「そんな……!」


 私が叩き付けた言葉に、リオンは見た事もないような情けない顔になる。そんなリオンに、それまで黙っていたシエルがそっと近付いた。


「リオン様……」

「シ、シエルさん……」


 すがるように、リオンがシエルを見る。シエルは朗らかな、天使の笑みを浮かべて――。


「わたくし、堂々と二股をかけようとなさる殿方となんて、頼まれたって結婚したくはありませんわ、リオン様」


 そう言って軽くリオンを突き飛ばすと、くるりとリオンに背を向けたのだった。

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