表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/31

第8話 ウィザードその名はアトリア

前回、スライムが女の子になった。


「おお、凄い!僕人間になったー!」


うん。見た目は確かに可愛いよ。けどね、お前ってメスだったの?


「なかなか可愛らしい姿ですねー。魔王様もそう思いません?」


スモッグゴーストがニヤニヤしながら問いかけてくる。


「可愛いと言えば可愛いが、お前メスだったのか?」


俺がそう言うと、スライムがこちらを見て

「スライムには性別が無いんだよ。分裂して増えるからね。てかメスって言うな。」


スライムがこちらを睨みつけている。

魔王は恐怖のあまり硬直した!


「ま、まぁそれはともかくとして。

これで【はじまりのまち】に戻る準備は出来たな。」


「そうだね。僕は準備するものは無いし。」


よし、あんまり長居してもレベルは上がらないしな。


「じゃあ行ってくる。

スモッグゴーストは引き続き城の復興作業を進めておいてくれ。」


スモッグゴーストはビシッと敬礼するかの様に姿勢を正して頷く。


「了解です魔王様。

魔王様も軍の編成モンスターを頑張って探してきて下さい!」


「うん、じゃあ行ってくる。」

「行ってきまーす!」


俺たちはスモッグゴーストに手を振ってスキルを使う。


「《空間転移》【はじまりのまち】」


■■■

はじまりのまち▼


一日ぶりに戻ってきた。街の中は変わらず騒がしい。


「へぇ、ここが【はじまりのまち】か〜。」


スライムが街の中を見渡して感嘆している。

モンスターだから街の中には入ったことが無かったのか。


「おい、スライム。ギルドに行くぞ。まだクエストの報告が出来てないんだ。」


そう、俺はまだ昨日受けたクエストの報告をしていない。まぁ隣にいるコイツの討伐クエストだったんだが。


「りょーかーい。」


討伐対象の本人がワクワクしながら言う。

なんだか複雑な気持ちだなぁ。


ともかく俺たちはギルドに行った。


■■■

冒険者ギルド▼


「さてと、クエストの報告するか。」


何気に今回が初めてのクエスト報告なので少し緊張する。いつも通りに3つある窓口の内『クエスト報酬金譲渡窓口』に向かう。


「あ、サイカさん。お待ちしてましたよ。

無事でなによりです。クエストの報告ですね?」


いつものお姉さんがカウンターの掃除をしている。

本当に全部の窓口一人でやってるんだ…


「はい、お願いします。」


でも報告って具体的にはどうするんだ?


「ではまず冒険者カードの提示をお願いします。そこにクエストで受けた討伐モンスターの数が載っているので、確認しますね。」


なんだ意外に簡単だな。っておい、ちょっと待て。討伐モンスターの数?俺はスライムを倒した訳じゃないからカウントされてないんじゃないか?


「はい、どうぞ。」


俺は恐る恐るカードを提示する。


このクエストクリア出来なかったら今日の分の宿代も稼げないぞ!


「…はい、大丈夫ですね。

それではクエストの報酬金をお渡しします。」


え?本当に良かったの?

だって俺スライム倒してないけど。むしろ隣にいるし。


「こちらが報酬金の15000ティアです。それにしても凄いですね。スライムを撃退するなんて。正直なところまだ冒険者になったばかりなので無理だと思ってました。」


俺はもちろん15000ティアという大金にも驚いたが、それよりもお姉さんの言葉の方が気になった。


「えっと、確かクエストって討伐が目的でしたよね?なんで撃退でクリアになるんですか?」


クリアしたいのは山々だが、理由が分からないまま金を受け取るのはなんか嫌だ。


「ギルドとしては街に害が無ければ問題ないので、撃退でもこのレベルのクエストであればクリア扱いにしてるんですよ。」


クリア出来たのは良かったが、雑過ぎないかこのギルド。


こうして俺は初のクエストクリアで金を稼いだ。

「あ、すみません。ついでに冒険者の登録もしたいんですけど。」


今回登録するのは隣にいるスライムのだ。モンスターと言ってもこれから行動を共にするんだ。冒険者の登録ぐらいはしておこう。


「はい、お隣の方のですね?あらまぁ随分と可愛らしいですね。」


スライムは俺以外の人間に話しかけられた事が無いので少々戸惑っている。まぁ俺は人間じゃないけど。


「あ、えと、その、ありがとうございます。」


スライムの今の姿は身長が低いので年齢的にも幼く見えるのだろう。お姉さんが優しく笑いかける。


「えー、では登録しますのでお名前を教えて下さい。」


マズイ!スライムには人間としての名前を考えていなかった!馬鹿正直にスライムと名乗っても後で騒がれる。ええとぉぉ、これだ!


「僕の名前はスライm...」

「アトリアです!アトリア!」


俺は咄嗟に星の名前で一番好きなアトリアの名を叫んだ。

ちなみにアトリアは恒星の一種でオレンジ色に輝く巨星だ。


「アトリアさんですねー。

はい、お好きなジョブを選んで下さい。」


どうやらフルネームじゃなくて良いらしい。

焦った。間一髪だったな。


「僕は、そうだなぁ。ウィザードかな!」


お姉さんから基本ジョブの説明書きを受け取ってすぐにアトリアはジョブを決めた。


ウィザード?俺ですらなれなかったのにモンスターのお前がなれるわけ無いだろう。


「はい、では適正検査を行います。《開眼》」


俺の時と同じようにお姉さんの瞳が赤く染まり、

アトリアの適正検査を始める。


数分と待たずに適正検査は終わり、俺は衝撃を受ける。


「適正検査の結果、ウィザードになれますよ。」


コイツ俺よりも頭良かったのかよ。


「やった!魔王…じゃなかった。

サイカ、僕ウィザードになれるよ!」


「へ、へぇ〜良かったね。」


何だ、何なんだこの圧倒的な劣等感は⁉︎


「では、ウィザードとして登録します。

こちらが冒険者カードですね、どうぞ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アトリア

ウィザードLv1 次のレベルまであと15EXP

【使用可能スキル】 【使用可能魔法】

・擬態



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こうしてアトリア(スライム)は俺よりも良いジョブである

“ウィザード”になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ