第3話 冒険者チリジョウ サイカ
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はじまりのまち▼
俺は魔導書を読んで手に入れたスキル《転移呪文》を唱えて【はじまりのまち】に転移した。
「眩しい、ここがスモッグゴーストの言ってた場所か。見渡す限り人でいっぱいだな。」
商店街や武器屋、防具屋などもあり全体的に街は賑わっていた。
「ここに来たのはいいけどレベル上げってつまりはモンスターを倒すんだよな。」
魔王がモンスター倒すって良いのか?ていうか俺は魔物を探してこないといけないんだけど。
「でもレベル上げする前にまずはギルドに行かないといけないのか。」
俺は転移する前にあらかじめスモッグゴーストから受け取っていた手紙を取り出した。
『魔王様へ
【はじまりのまち】に到着したらまずはギルドに向かって下さい。レベル上げをする為にはステータスを解放しないとモンスターを倒しても経験値はもらえません。ギルドはその手続きをしてくれるはずです。魔王様の見た目は完璧にただの人間なのでバレることは無いでしょう。登録時のお金はこの手紙の中にあるのでそれを使って下さい。ジョブなどはお好きに決めて頂いて構いません。
スモッグゴーストより』
細かく書いてくれてるなぁ。ホント働き者だよあのスモッグゴースト。
そんなことを思いながら俺はギルドの看板を見つけたので建物の中に入る。見た目は木造建築で以外とデカイ。
「こんちは〜。」
入り口の扉を開けると酒や料理の匂いが漂ってきた。何か宴会でもしているのだろうか?
「えっと、手続きをする場所はあそこか。」
ギルド内には扉を開けてすぐに大きなカウンターがあった。上の方には『冒険者手続き窓口』、『クエスト報酬金譲渡窓口』、『クエスト承認窓口』と書かれた3つの看板がある。
俺はその内『冒険者手続き窓口』と書かれたカウンターに向かう。
「あの、すみません。
冒険者の手続きをお願いします。」
するとカウンターにいたお姉さんが
「冒険者の登録ですねー、ではまず登録料をお支払いください。」
「はい、どうぞ。」
俺はスモッグゴーストの手紙に入っていたお金を取り出してお姉さんに渡した。ちなみにこの世界での通貨はもちろん『円』では無い。どうやら『ティア』と呼ぶらしい。1ティア1円換算なので計算は楽でありがたい。
「はい、1000ティア確かに。お名前をお伺いしても?」
「チリジョウ サイカです」
「はい、ありがとうございます。
では早速ジョブを決めて頂きます。最初の内は基本ジョブの5つから選んでくださいね。」
そう言われ渡された紙を見ると基本ジョブと呼ばれる5つの説明書きがあった。
・戦士
【高い攻撃力を有し主に前衛で戦う基本職。上級職に狂戦士と魔法戦士がある。】
・プリースト
【回復呪文を使いパーティの傷を癒す基本職。ウィザードとは違い攻撃魔法は使えないがアンデッドを浄化出来る。上級職にアポストルがある。】
・ウィザード
【攻撃呪文を使い後衛で戦う基本職。回復呪文は使えないが支援魔法でパーティメンバーを強化する。上級職にウィッチと魔法戦士がある。】
・騎士
【高い防御力を有し主に前衛で戦う基本職。上級職に聖騎士がある。】
・冒険者
【特に秀でた能力は無く前衛でも後衛でもいい。この職に上級職は無いが、一定レベルに到達すると全ての職につくことができる。成長性がほかの職より高い。】
一通り見たが俺的にはウィザードとか良いかもな。
魔法使いたいし!
「じゃあウィザードでお願いします。」
そう言うとお姉さんは
「では、適正検査しますね【開眼】。」
スキルを発動したのかお姉さんの瞳が紅く染まった。てかそのスキルどういう効果なんだ?
適正検査が終わったのかお姉さんは俺の顔を見て申し訳なさそうにしていた。
なに、どうしたの。不安そうな顔しないで怖い。
「すみません。
もともとの知能が足りていないらしくウィザードになるのは難しそうです...」
マジかよ。これって転生前にろくに勉強しなかったからか?最悪だ。
「冒険者なんかどうですかね?
他の職と比べると特異性はありませんがレベルが上がりやすいですよ。」
冒険者か、まぁ良いか。レベル上がりやすいなら。てか全然悔しく無いしな。ウィザードとか?なれなかったぐらいで、俺のメインジョブ魔王だから!ここで決めるジョブだってただの副業みたいな感じだし?全っ然悔しく無いから!
「冒険者でお願いします...」
そう言うとお姉さんは
「冒険者は“誰でもなれる”職なんで適正検査はしません。...あ、ごめんなさい。ほらっ登録カードが出来ましたよ!どうぞ!」
そう言われて手渡されたカードを受け取るとそこには
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チリジョウ サイカ
冒険者 Lv1 次のレベルまであと10EXP
【使用可能スキル】 【使用可能魔法】
・空間転移
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と書かれていた。
こうして俺は“誰でもなれる”冒険者になったのだった。




