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第20話 ジラトの迷宮

モッカ山脈に到達した俺たちは、あらかじめ王都で聞いていた話を思い出した。


モッカ山脈は現在となってはジラト盗賊団のアジトの様なものになっているが、もともとは屈強な魔物が住み着く危険地帯だったらしい。


何故ジラト盗賊団が無事でいられるのかは不明とされているが、ギルドでも立ち入り禁止区域と指定されていた。


「見てみろ。少し見辛いが複数の足跡がある、それも人間のものだ」


バルクが指し示す先には確かに複数の足跡があった。


だが、それは人間のものだけでは無かった。


【魔物感知】と言うスキルが発動しているのだが、反応がある。


どれだけの大きさかは分からないが魔物の足跡がそこにはあった。



「とりあえずはこの足跡に沿って行けばいいんじゃないか?」


「そうだな。だが警戒は怠るな、ここは既に奴らの支配領域と言える。いつ襲ってきてもおかしくは無い」



バルクは急に襲われても大丈夫かもしれないが、俺たちはHPがそもそも低い。


奇襲でもされればお陀仏だ。


一応【部位再生】のスキルがあるから少しは耐えられるはずだけど。


その後、しばらくは特に変わらない景色が続いた。


しかし足跡は確実に多くなっている。


もうアジトはすぐそこまで迫ってきているようだった。



「本当に近くにあるんですか?」


「馬鹿っ、静かにしろ。バレたらどうするんだ」



先程から草むらの奥の方に人の気配を感じる。


恐らくだが草むらの向こうは洞窟だろう。


『おい今なにか言ったか?』


低めの声が辺りに響く。その声は俺たちのものではない。明らかに敵意を剥き出しにした声色だった。


『あ?何も言ってねぇよ。見張りに集中しろよ』


もう一つ男の声がする。

見張りと言う言葉から察するにジラト盗賊団の下っ端だろう。


俺はそっと草むらから顔を出して様子を伺う。


…洞窟の入り口付近に二人だけ。見張り自体はそこまで厳重ではない。


しかし見つからずに突破するとなると厳しいな。


「ねぇ、面倒くさいから倒しちゃえば早いんじゃない?」


アトリアが背後から小声で話しかけてくる。


「失敗した時のリスクを考えろ。もれなく援軍がきて全滅だ。せめてあいつらに気づかれずに中に入れればな…」


ん?いや待て。なにもそんなスニーキングな事しなくてもいいんじゃないか?


アトリアがいるだろ。


「アトリア、お前のスモッグゴーストから貰った魔導書で覚えたスキル【擬態】であいつらになれるか?」


それを聞いたアトリアは一瞬キョトンとした顔でこちらを見ていたが、しばらく経ってから思い出したかのように口を開いた。



「えーと、多分出来るよ。…イヤだけど」


「良し、じゃあ頼んだ」


「聞こえた?あんな臭そうなオッサンなんかにはなりたくないの!」



アトリアの大声に気づいたのか下っ端がざわつき始める。



『てめー今“臭そうなオッサン”って言ったか?』


『は?空耳だろ。寝ぼけんのも大概にしろよ?』



危なかった…あと少しで完全に見つかってたぞ。

そこでバルクがふとした顔で


「いい案だと思うんだがな…」

グサリ。


「アトリアのこと期待してたんですけどね…」

グサリ。


バルクとシリウスの言葉がアトリアに突き刺さる!

アトリアは観念した。


「サイカ…恨むぞぉ…」


半ば強制的に承諾させられたアトリアは【擬態】を使って少女の姿から臭そうなオッサンの姿になった。


「いいぞ完璧だ。それで仲間のフリしてあいつらを別の場所の見張りに行かせろ」


屈強そうなアトリアは無言で草むらの奥へ進んで行く。


…あれ結構怒ってるわ。どうしよう。


『おいお前ら。疲れたろう、俺が見張りを交代するぜ』


早速下っ端になりきって声をかける。


『ん?ああ悪いな。じゃあ俺たちは東の見張り塔で休む』


そう言うと下っ端たちはあっさりと東に向かってしまった。


単純過ぎないか?

こっちとっては好都合だが。


「よし行くぞ、アトリアに続け」


こうして俺たちは何とかジラト盗賊団のアジトに潜入できた。


▪️▪️▪️


洞窟内『ジラトの迷宮』▼


中に入った途端アトリアは【擬態】を使って元の少女の姿に戻った。


「もう二度とあんな姿にはならない…」


余程イヤだったのかテンションが地の底まで下がっている。どんだけピュアなんだよ。


もともとスライムなんだから良くね?


「ところでここってどの位広いんですか?」


シリウスが聞くとバルクがそれに応える。


「少し待て、スキルを使用する。【空間把握】」


バルクがスキルを使用すると辺りがポリゴンの様な見え方になり壁を透過してフロア全体を見渡せた。


どうやら【空間把握】と言うスキルは使用者以外にも効果があるようだ。


「地下…四階までか。案外広いな、それに地下一階のフロア全体が迷路のようになっている」


見てみると本当に地下深くまでフロアが続いている。


だが、地下四階だけ少し狭い作りのように見える。


「流石に生物は見えないか…」


そうなるとここから先は盗賊との戦闘になる可能性もある。危険を避けては通れない。


「極力、戦闘は控えるように。あくまで俺たちは人質を救出しに来たんだ、目的を忘れるな」


現在位置、『ジラトの迷宮 地下一階』

攻略スタート。

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