第2話 廃れた魔王城の復興計画
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魔王城▼
「ってて、ここは?」
あの世に来たときと同じような感覚に襲われながら俺は辺りを見回す。
「お気づきになられましたか魔王様。」
いきなり背後から声が聞こえて驚き、ゆっくりと後ろを振り向くとそこには煙が充満していた。
「今の声はどこから聞こえたんだ?」
もう一度辺りを見回すが人影は確認出来ない。そして今気づいたが、なんだかとても広い豪邸っぽい場所だった。
「私ですよ、私。目の前にいる煙です。
名をスモッグゴーストと言います。」
先程充満していた煙の中に光が発生して目の形になってこちらを見ている。
「えっと、一体ここは何処なのか聞いてもいい?」
「ここは魔王城でございます、魔王様。」
魔王城?そして魔王様?どういうことだ。俺は最弱モンスターには転生しなかったのか。
「あなた様は魔王に転生なされたのです。」
「俺が...魔王?じゃあ俺は最強ってことか!」
来てすぐにチート級の魔王に転生するとか俺SUGEEE!!
「別に最強という訳では無いですよ。レベル1ですし。」
.....俺の希望は即座に崩れた。魔王にレベルなんてあるのかよ。てか何でコイツは俺が転生して来たって知ってるんだ?
「私はもともとあの世で働いてたので
転生者の魂を感知出来るんですよ。」
「ふーん。なぁ、一つ疑問なんだけどさ。
ここって魔王城なのに君以外誰も居ないの?」
そう聞くとスモッグゴーストは悲しそうに俯きながら
「はい、先代の魔王様は既に亡く魔王城にいた魔物は全て住処に戻ってしまった為現在までこの魔王城は私一人でした。」
ずっと一人だったのか...それなのに城内のこの清潔さが保たれてるってことは相当苦労してるんだろうな。
「なので魔王様にはこの魔王城を復興して頂きたいのです。」
「復興するのは良いんだけどさ、レベル1の俺は何をすれば良いの?」
そう質問するとスモッグゴーストはどこからともなく地図を取り出して近くにあった小さなテーブルに広げ
「現在ギルドから派遣されたパーティが遠く離れた地よりこの魔王城へ向かって来ています。」
スモッグゴーストは指のような形状にした煙を【はじまりのまち】と書かれた部分に指す。
「目的は恐らく魔王城の陥落。しかしこの【はじまりのまち】から魔王城までは早くても半年かからなければ到達出来ません。」
半年か...そう言えば死神が文明レベルが違うとか言ってたな。飛行機なども無いのだろう。まぁ流石に船ぐらいはあるのだろうが。
「で、その半年の間にパーティを迎え討つ準備を整えると
…こんな所か?」
「そうでございます。その為には魔王城に新たに迎え入れる魔物を探し魔王軍を編成しなければなりません。」
魔王軍か。なんだか急にゲームみたいになってきたな!少しワクワクしてきた!
「そこで!この際魔王様にはレベル上げも兼ねて魔物を探してきてもらおうかなぁと。」
...今までいろんなゲームしてきたけど魔王がパシリみたいな扱いされるゲームはやったことないなぁ。別にいいけど。
「でもレベル上げって具体的にはどうすれば?」
「魔王様には先程の【はじまりのまち】に行ってもらい、しばらくは人間として生活して頂きます。」
嘘だろ⁉︎さっきここから早くても半年って聞いたばっかだぞ⁉︎
「その点は安心して下さい。先代魔王様が遺していった魔導書があるのでそれで転移スキルを習得出来ます。魔導書はレベルに関係なくスキルを覚えられるので便利ですよ。」
なるほど。じゃあその転移スキルで行けばいいのか。まるで《わ○マシン》だな。
「じゃあ早速覚えちゃいましょう。はいどうぞ。」
スモッグゴーストは魔導書を取り出して表紙を見せてきた。
「はい習得出来ました。
これで行きたい場所を言えば転移出来ますよ。」
広辞苑みたいな分厚さなのにこれでいいのかよ。
「えーと、じゃあ最終確認をしますね。まず魔王様は【はじまりのまち】で人間として生活し、レベル上げを行なって頂きます。そしてレベル上げの途中で使えそうな魔物がいたら連れてきて下さい。その間私は魔王城の復興準備を整えておきます。」
これから魔王城の復興の為に魔物を探してくるのか。俺がその魔物に負けちゃったらどうしよう。
「期間は半年です。
それまでにパーティを迎え討つ準備を整えましょう!」
おおー!
そう言って俺たちは気合いを入れた。
そして転移スキルを唱えている途中でスモッグゴーストが
「ところで魔王様。
人間としての名前はどうなさるので?」
「名前か、そう言えば考えてなかったな。」
うーん...あ、そうだ。もともとの名前が千里条 災禍だから
「こう名乗ろう、魔王サイカ。
人間としてはチリジョウ サイカだ!」
そう言って俺は前の人生での名前を叫んで
【はじまりのまち】へと転移した。




