番外編 トリックオアトリート!
10月31日ハロウィン。本来このイベントは目に見えない門が開き、そこから死者が現れるというものらしい。
しかし最近では単に人々がオバケのコスプレなどをして楽しむものになっている。
それは俺が元いた世界の話。この世界ではハロウィンなんてイベントは無いと思っていた。
だが、こういうものは世代を超えて、いや世界を超えて伝わるのだろうか?
何でハロウィンがこの世界にもあるんだよ。
「街がハロウィン仕様になっていやがる…」
時系列なんてものはこの番外編には無い。
これはあくまで本編ではなく番外編なのだから時系列なんて要らないだろ。そんな訳で、
【はじまりのまち】『冒険者ギルド』
いつもはこ汚い酒場も今日はハロウィンの装飾で煌びやかに見える。
クエストカウンターにいるお姉さんまでもがドラキュラなどのコスプレをしている。
なにこれ可愛いもっと流行らせようぜ。
「皆さーん、今日はハロウィンなのでイベントクエストがきてますよー!」
コスプレをしたお姉さんが大声で呼びかける。
既にクエストカウンターの周りは冒険者でいっぱいだが。
それにしてもイベントクエスト?
今までそんなの聞いたことがない。
クエスト内容はどんな感じだろうか。
俺は冒険者の集団を掻い潜って掲示板を見る。
なになに?
『はじまりの草原にて栽培されていたカボチャに死者が取り憑き、一時的だが魔物となっている。敵意はないが周辺の作物まで荒らされる為すぐに駆除してほしい』
…まさにハロウィンだな。もはやこの日の為にカボチャが栽培されていたんじゃないかと疑いたくなる。
「今回は大掛かりなクエストなので冒険者の皆さんが協力してクリアして下さいね!」
なるほど、所謂レイドというやつか。
俺もMMORPGでは良くレイドボスに参加してたものだ。
そう思うと俄然やる気が出てきた。
「報酬は酒場の料理と宿の提供です!」
ほほう、宿まで提供してくれるとは。毎日寝泊まりする場所に困っている俺には有難い話だ。
受付のお姉さんの言葉を聞いてカウンター周辺に集まっていた冒険者たちが次々と【はじまりの草原】に向かう。
俺も出遅れないうちに向かうとしよう。
【はじまりの草原】
カボチャ。見渡す限りカボチャ。
畑を荒らすカボチャ、なんか合体して人のサイズになったカボチャ、あまつさえ紅葉の生い茂る木に所々生えているカボチャ。
…最悪だ。何をどうすればこんな状況になるんだよ。
「てやー!」
筋骨隆々とした戦士が自慢の剣を振るい畑を荒らすカボチャを脳天から砕き割る。
「グギャアアアア!!」
カボチャが断末魔をあげながら飛散する。
おい何だよこのカボチャ。悲鳴まであげてるんだけど。
他にも魔法使いが空飛ぶカボチャを魔法で撃ち落としたり、人型のカボチャをパラディンが押さえつけたり。
何だかもう見てるだけでも疲れる光景だった。
「これ、俺いる?」
【はじまりのまち】『冒険者ギルド』
かくして、このイベントクエストは終わりを告げた。
冒険者が“アンデットパンプキン”の集団を撲滅したのだ。
俺も一応やるだけやったが、レベルの低い魔王でも限度がある。
50匹は倒せたと思うけどそれでも他の冒険者に比べれば少ない方だった。
途中からカボチャ共を魔王軍に引き入れようとも思ったけど、初心者冒険者の集まるこの地で既にボコボコにされているあたりから、ただの特攻肉壁になるのがオチだと思ったのでやめた。
仲間が目の前で頭からカチ割られる姿を見るのは嫌だ。
なんてそれっぽい理由を言ってみたけれど、コイツらが弱すぎるのも大きな理由だ。
「皆さん、クエストお疲れ様でした!今夜は酒場の特別料理で是非楽しんで行って下さいね!」
クエストで疲れ過ぎて忘れていたが、酒場の特別料理が食べられるんだった。
今はもう宿で寝たいくらいなんだが。
しかし折角の特別料理。食べないのは愚行だろう。
俺は席に座って特別料理を注文する。
さっきから特別料理と言っているが、実際メニューが分からないのだ。
何が出てくるか分からない。
不安を感じさせる言葉だが、同時に好奇心にも襲われる。
そしてしばらく経ってから。
「お待たせしました〜。こちら特別料理の“カボチャ尽くし”でございます!」
本日のメニュー
・カボチャのスープ
・パンプキンパイ
・カボチャコロッケ
etc……
俺はこの日を境にカボチャが嫌いになった。




