第16話 王都フラスタにて
【王都フラスタ】ーー門前広場
「やっとついた…」
馬車から降りて安堵の息をつく。俺、馬車無理だわ。
広場では王都であるが為に大きく賑わっている。
商人たちの馬車が走っていたり、噴水の周りに子供達が集まっていたり。他にも屋台みたいなのも出てるな。
「…あれ、食べたい」
アトリアが指さした方向に見えた屋台の看板には『スライムまんじゅう』と書かれていた。
…こいつ何考えてんだ?
普通自分と同じ形をしたものなんて食べたくならないだろ。
しかし、馬車での長時間の移動で空腹なのも事実だ。ならば仕方ない、と俺は財布を取り出して屋台に向かう。
「すみません、スライムまんじゅう3個下さい」
すると店主が気前良く
「あいよ、おや嬢ちゃん達可愛いね。おまけに2個追加してあげよう」
「わーい!ありがとうオジちゃん!」
ニッコリ。こんな擬音が付きそうなほど満面の笑みを浮かべたアトリアとシリウス。
パーティに加入して間もないのに早くも仲良しだな。
【はじまりのまち】でシリウスが子供達に泣かされた時に慰めていたのが決め手になったのだろうか。
まあ泣かされたと言っても完全にシリウスの自爆だが。
「それにしても兄ちゃん、アンタ良く無事に王都までたどり着いたなぁ」
店主が不思議そうに首を傾げる。
「王都の外で何かあったんですか?」
俺たちが馬車でここに来る時には何も無かったはずだが。
「いやな?最近王都の外にやたらと盗賊が現れるようになってきたんだ。商人を乗せたキャラバンを襲撃するんだとよ」
盗賊か、ゲームとかだとこういうのって結構弱いんだよなぁ。下手をすれば最初のボスよりも弱い。
けれども俺自身そんなに強い訳でもないのであまり言い過ぎるのも良くない気がする。
まあ盗賊って時点で犯罪組織なのだから言われても仕方ないのかもしれないが。
「なかでも“ジラト盗賊団”てのが厄介でな。王都の兵士を編成して出撃させたんだが、結果は全滅。今でもたまに誘拐が起きてるって話だ」
…王都の兵士が出撃して全滅って、めちゃくちゃ強いじゃねえか。
最初のボスどころじゃない、最早後半のボスレベルだろ。
というか王都に来るキャラバンに被害が出てるんだから早く対策するべきなのでは?
そりゃ出撃した兵士が全滅ってだけでヤバいのは分かるけど、国民が誘拐されてるんだから頑張ってくれよ。
「だからだよ、兄ちゃん。試行錯誤した政府はこの盗賊団の排除を最終的に冒険者に任せたんだ。ギルドに行けばクエストがあると思うぜ」
どうやら国も不利益は被りたくないらしい。
確かに冒険者にクエストとして任せれば自国の兵力は減らないし、なおかつ冒険者はいつ死んでもおかしくない連中だ。
金を積んで盗賊団が排除されるのであれば国にとっては良いことずくめだろう。
「サンキュー、オッサン。早速ギルドに行ってみることにするよ」
俺はそういうとスライムまんじゅうをニコニコしながら食べているアトリアとシリウスの手を引いて王都の冒険者ギルドに向かった。




