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第15話 勇者の出現

【王都フラスタ】--周辺荒野


王都フラスタは他の国々に比べると非常に貿易が盛んな国だ。


といっても港は存在しない、ただ大陸の中央に位置するためキャラバンなどが良く通るのだ。


それ故に盗賊の出没も多数報告されている。被害にあったキャラバンから直接王都に通報が来るのだが、ほとんどが対応出来ていない。


そもそも、ただの盗賊ならば王都の兵士たちで十分なのだが、襲撃に来る盗賊は筋金入りの盗賊。


今まで数々の通報を受け、そのたびに王都の兵士が出動したが、以前の出動で15人の兵士が殺害されてからは、王都も手を打っていない。


「また、来たか」


キャラバンが荒野の上を馬を駆けさせて移動する。


地形の凹凸が激しいこの地では、岩が多く身を隠しやすい。


この男、『ジラト盗賊団』団長の“ジラト”が目を光らせる。目的のためなら殺人も誘拐も厭わない集団だ。


「目標を捕捉、どうしますか団長」


盗賊団の手下がジラトに襲撃を促す。


「躊躇うな、やるぞ」


ジラトの声を聞き手下たちが動き出す。岩陰を蛇のように這いながら、しかし素早く獲物に向かって進む。


だが、ジラトは次の瞬間目を疑った。キャラバンの馬車に印字されたマークに気づいたからだ。


王国から魔王討伐の為に派遣された勇者を示すマーク。


それがキャラバンの馬車に付いているのなら、それは勇者が直々に護衛していることを意味する。


「お前ら!一度退け!」


ジラトの声も虚しく、既に100メートル先の馬車に到達した手下達には何も聞こえなかった。


「おい、そこの商人。止まれ」


手下がキャラバンの馬車に乗っている商人に向かって乱暴な言葉で言いつける。


「大人しくすれば殺しはしない」


そう言うと商人は慌てた様子で荷台の中に入る。


話のわかるジジイだ。などと何も知らない手下たちは言うが、商人の目的は金目のものを盗賊に渡すことではない。


むしろその逆、荷台で休んでいる護衛の男を目覚めさせる為。


「何だ、寝ているところを襲撃するのがお前らのやり方なのか?」


商人に起こされ、荷台から降りてきた男は腰に携えていた剣を抜き放つ。


「話には聞いていたが、随分と卑怯な奴らだ。かかってこい、まとめて相手をしてやる」


男の風貌と顔を見て、ジラト盗賊団の全員が同じことを思った。


『あの商人、全く話のわかるジジイでは無かった』と。


「おい、ちょっと待て!勇者は魔王を討伐するのが目的だろうが!そのお前が俺たちを殺していいのかよ?」


手下の1人が命乞いをするかの如く悲痛に訴える、だが。


「じゃあこのまま、この馬車が襲撃されるのを黙って見てろと?私が乗っている時点で馬車を攻撃したのなら、それは私に対する攻撃と思っても構わないだろ?」


勇者の言葉の意味と重みに屈伏しながら、恐怖に打ち震える盗賊たち。


当たり前だ、今の彼らは魔物と同じ立場にあるのだから。


「私の前に立ちはだかる敵は、魔物だろうと人間だろうと容赦なく殺す。それが私の剣だ」

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