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第11話 今夜は宴

緊急クエストを終えた冒険者たちはギルドに帰っていった。


どうやらこの後は宴会でも開くらしい。


しかし俺はと言うと、

魔王軍幹部のヴァドルを森の中に連れ込んでいた。



「おい頼むから早く答えてくれ。

お前の主人である魔王は何処にいる?」


採集クエストで手に入れたキノコだの何だのをヴァドルの口の中に突っ込んで無理矢理答えさせる。


これじゃまるで拷問だな。やってて心苦しくなってきた。


ちなみにアトリアは隣で『ざまみろっキヒヒ』と笑っている。

ウィザードよりも魔女の方がむいてそうだなコイツ。


「か、勘弁してくれ!俺は魔王様から厚く信頼されてるんだ、こんな事で魔王様の居場所を教えては!」


俺は持っていたキノコを目に前でチラチラさせながら言う


「良いのか?まだキノコは沢山あるからなぁ。

日が暮れるまでやっても良いんだぞ?」


ヴァドルの顔が引きつる。


「分かった!教えるからキノコはやめろ!」


■■■


それからしばらくして

俺たちはヴァドルから魔王の居所を突き止めた。


しかし現段階ではまだ行くことは出来ないだろう。


大陸間の《空間転移》は尋常じゃない程の魔力を消費するのだ。


とてもじゃないが採集クエストで上がったレベルでも魔力は足りない。


ちなみに今の俺とアトリアはレベルが上がってこうなっている。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

チリジョウ サイカ

冒険者Lv5 次のレベルまであと250EXP

【使用可能スキル】 【使用可能魔法】

・空間転移



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アトリア

ウィザードLv5 次のレベルまであと300EXP

【使用可能スキル】 【使用可能魔法】

・擬態 ・エレメンタルファイア



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こんな感じだ。同じレベルなのに次のレベルまでの経験値が違うのは冒険者としてのバフだろう。


成長が早いらしいし。


アトリアは初級魔法のエレメンタルファイアをいつのまにか覚えていた。



先ほどまで拷問、もとい情報を喋ってもらってたヴァドルは逃してやった。


もちろんこの街に来ないように制限をかけた上でだが。


「ねぇ、この場合僕たちは他の魔王に目をつけられたってことになるの?マズくない?」


街に帰る途中にアトリアが心配そうに聞いてきた。


「マズイです、今までで一番ヤバい状況です。」


普通ならこういう場面の時は怯えさせないように嘘をつくのが鉄板なんだが、無理。


「ダヨネ〜、アハハハハハ…どうすんのさ。」


アトリアは帽子の影から目を覗かせる。


そんなこと俺が聞きたいよ、俺だって魔王になったばっかなんだからな?慣れてるみたいに思わないでくれ。


「とりあえず魔王城に帰る。そこからはスモッグゴーストと死神に何とか出来ないか聞いてみる。どうだ?」


「どうだって、歴史上類を見ない程の他力本願クズ野郎だね。少しは自分で考えろよ。」


そう言うお前も考えろよな。


しかし現状では帰らざるを得ない。


今の俺たちにはどうする事も出来ないのだから。


「ま、まぁ先にギルドで報酬金貰ってからにしようぜ。」


そうこうしている内に街の門まで来ていた。


外からでも分かる具合に街の中は騒がしい。


そりゃそうだ、魔王軍幹部のモンスターを討伐したんだからな。


正確には撃退だけど。


■■■

冒険者ギルド▼


酒場では多くの冒険者たちが宴会をしていた。

いつも以上に騒がしい。


「お待ちしてました、サイカさん。

緊急クエストの報酬金をお渡しいたします。」


いつものお姉さんが窓口から金を持ってくる。


「こちらが今回の緊急クエストの報酬金、

1000000ティアです!」


…はい?


「ひゃくまん?あわわわヤバいよサイカ!」


「嘘だろ…?」


いくらなんでもそれはおかしいだろ!


なんだ?俺以外の冒険者もみんな100万ティア貰ったのか?


「間違い無く100万ティア…なんですか?

後で嘘とか言われても持って行きますよ?」


「心配しないでください、本当に100万ティアです。サイカさんたちのパーティは今回の緊急クエストで大きく活躍しましたからね。特別報酬というヤツです。」


特別報酬!なんて素晴らしい響きなんだ!


これならしばらくは心身ともに

キツイ採集クエストに行かなくて済む!


「よっしゃー!今夜は俺たちも宴会に参加するぞ!」


「やった!ねぇねぇ僕お酒飲んでみたい!」


こうして俺たちは宴会に参加することになった。


いろんな冒険者たちと交友関係が深まったが、完璧に他の魔王の件について忘れていた俺たちは後で自分たちが果てしない馬鹿だったと気付く。

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