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第10話 魔王軍幹部 ヴァドル

■■■

はじまりの平原▼


ギルドで緊急クエストを受けた冒険者は全員、門の外に到着していた。


いつもの平原と違いスライムなどのモンスターが全くいない。妙な静けさだ。いや、嵐の前の静けさと言ったところか。


「どこに魔王の手先がいるんだ?」


周りの冒険者たちがざわめき出す。

すると、急に森の方から強い風が吹いてきた。


その風は木々の葉を巻き込みながら小さい竜巻を作り出す。そして平原の中央で竜巻は雲散霧消するかの様に巻き込んでいた葉を四方八方へ散らす。


その中から出てきたのは、緑衣のローブを纏った骸骨。右手には杖を携えている。


「あれが、魔王の手先…!凄いオーラだ。」


1人の冒険者がそう言うと周りの冒険者が固唾を飲む。

…あれ、どう見ても俺の手先じゃ無いだろ。


そもそも仲間にしたのだってまだスライムだけだ。


「おのれ魔王め、わざわざ刺客を送ってくるとは!

俺たちがこの街を守るんだ!」


わー、なんか冒険者さんたちが盛り上がってるなー。

俺にしちゃ良い迷惑だけど。


すると平原の中央にいた骸骨が大声で喋り始めた。


「よく来たな、冒険者どもよ。我こそは魔王軍幹部の一人、ネクロマンサーの“ヴァドル”だ。」


魔王軍幹部だと?


おかしい、俺は幹部どころか仲間モンスターすら少ないんだって。どういうことだ?


「俺は魔王様からのご命令でこの辺りの森でポーションを作っていた。だが!何処ぞのクソ冒険者が森の中にある薬草だのなんだの根刮ぎ持って行くではないか!そんなに邪魔したいのか?ならば直接俺の所に来い!俺だって期日までにポーション作んないといけないんだからさ、暇じゃ無いんだよ!」


魔王軍幹部はめちゃくちゃ怒ってた。


やべっ。毎日のように森で採集クエストやってたの俺たちだ。


しかもコイツの話が嘘じゃ無いのならこの世界には俺以外の魔王がいる事になる。そんな奴に目をつけられちゃ今後の活動に支障が出てくるぞ!


「さぁかかって来い冒険者どもよ!俺を怒らせたツケは高いぞ。貴様らの命で払ってもらうわァァ!」


【はじまりの平原】に集まっていた冒険者たちが雄叫びを上げる。


「行くぞぉぉ!たかだかスケルトン如きにやられてたまるか!」


「そうだ!この街は俺たちが守る!」


「私たちの実力見せてあげる!」


パーティを組んでいる冒険者がヴァドルに突撃する。

だがヴァドルは不敵な笑みを浮かべて


「低レベルの冒険者が束になったところでこの俺に勝てるわけが無かろう。まとめて葬り去ってくれるわ!《ルートバインド》・《カースドウィンド》!」


瞬間、突撃した冒険者パーティが木の根に縛り上げられ続けざまに紫色の風で全身を斬りつけられる。


「ぬぐわああ!!」


攻撃を受けた冒険者パーティが平原に倒れふす。門に集まっていた冒険者の内プリーストが回復呪文を唱え続ける。良かった、死にはしなかったようだ。


「ふっ。ふはははははは!この程度か冒険者ども!ろくにレベル上げも出来ていないのにこの俺を怒らせるからだ!」


「そこまでだヴァドル!これ以上お前の好きにはさせない。この僕がお前を倒す!」


これまでに無いぐらいに頼れそうな声の方を振り向くとそこには黒いローブに魔法使いが被ってそうな帽子を被った少女が立っていた。というかアトリアだった。


「ちょっお前何言っちゃってんの!相手は魔王軍幹部だぞ!何処の魔王の手先かも分からないのに無謀過ぎるわ!」


「何さ、僕たちの実力を見せつけるチャンスでしょ?採集クエストでもレベル上がったんだしさ。」


コイツも他の冒険者と同じ考えかよ!


「威勢が良いなそこのウィザード!良かろう俺の魔法とお前の魔法、どちらが強いか教えてやる。」


「良いよ!僕の魔法、甘く見ないでね。」


2人が遠距離からの攻撃魔法を発動させる。しかし魔王軍幹部の魔法とただのウィザードの魔法、どちらが強いかは歴然である。


「《エレメンタルファイア》!」


「《カースドウィンド》!」


アトリアは火属性魔法エレメンタルファイアを発動させる。これはウィザードが覚える中でも初級の魔法だ。対してヴァドルは先程と同じ《カースドウィンド》を発動。


アトリアの魔法で出た火の球は《カースドウィンド》を突き抜けてヴァドルに向かう。しかしヴァドルの魔法も風の刃となってアトリアに向かう。


「痛っ!」


先に《カースドウィンド》がアトリアの身体を斬りつける。しかしアトリアの《エレメンタルファイア》もヴァドルに着弾。


「アンデッドの俺に火属性魔法が通じるものか!ってギャアアアア!」


え?ギャアアアア?


なんでそんな声が聞こえる。魔王軍幹部だろ?


よく見るとアトリアの火の球は地味に白く輝いていた。

…もしかしてあれ浄化魔法じゃね?


後ろを見るとプリーストの集団がアトリアの火の球に浄化魔法を唱え続けていた。せこすぎるわ!


アンデッドのヴァドルは火属性ではなく浄化魔法の耐性が無かったらしく大ダメージを受けた。


「ち、畜生!なんなんだお前ら!戦い方がせこいぞ!冒険者なら正々堂々と戦え!」


そうだよな。でもまぁ一対冒険者の集団の時点で正々堂々もクソも無いけど。


「流石に分が悪過ぎる!ここは一度撤退しなければ!」


「それは困る。しばらくじっとしててくれ。」


俺はすかさず弱ったヴァドルに森の中で入手したネムレ草を近づける。

ちなみに色々な草も採集クエストで手に入れている。


「なに…を」


ヴァドルが平原に倒れる。ただ眠っただけで死んではいない。


しかし他の冒険者から見れば倒した様に見えたのだろう。後ろから歓声が上がる。


「よっしゃあああ!魔王軍幹部を倒したぞ!」


こうして冒険者たちにとっての緊急クエストは終わりを迎えた。しかし俺にとってはこれからが緊急クエストだった。


他の魔王が存在しているなら何としてもコイツから情報を得なくては!

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