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第1章第15話「神器」

「陛下、闇の神を崇拝する者達が組織を作っているとの噂が・・・・」


「ふむ」


アーデンシア王宮にて、その報告が王の下へと届いたのは

ハルトがべニア村についてから間もない頃であった


「規模は不明、推定では100を超えるとのことです。これが事実ならばしかるべき対処をするべきかと」


この世界において闇の魔法を行使する事も闇の神を信仰する事も禁忌なのである


「まだ不明な点が多い、現段階では王都の警備を強化するだけとしよう。下手に相手側を刺激してしまえば何が起こるか分らぬ。警備の強化にしても、闇の組織の事は告げるでないぞ。どこにそ奴らが潜んでいるかまだ分からぬからな」


「そのようにいたします」


報告を終えると側近である、グアニル=ロックハートはその場を後にした


そして、部屋を出ると彼はニヤリと笑った


(今のうちに対処しておけば良いものを・・・

だが、王の我々に対する認識の低さは分かった・・・

アレさえ手に入れば・・・愚王め・・・くくく・・・)


_________________________________


目的地目前でハクが袖を引っ張りハルトを止める


「人がいる・・・・」


ハクにそう言われ身を隠し、様子をうかがう


(人だ・・・それも全員が黒装束・・・)


目的地である洞窟の周りに数人の怪しい恰好をした人が複数居る


(この辺りは誰も近づかないという報告だったはず・・・)


「もう少し近づいてみよう。念のため外套を被っといてくれ、ハク」


「ん」


茂みに沿って近くに行くと徐々に会話らしきものが聞こえてきた。


【この洞窟が邪神様の遺跡だったとは、我々の目的を果たす日は近いかもしれない】


【あぁ文献通りだったようだな。人よけの呪文をかけたから村人どもは来ないはずだ】


【報告によると冒険者に依頼を出しているようだ。油断はできない誰かがここに来る前に片付けよう】


「めちゃめちゃ物騒な奴らじゃないか・・・・」


(だが邪神の遺跡・・・俺をこの世界に飛ばした奴の遺跡だ・・・)


(あそこに入れば何か手掛かりがあるかもしれない)


「ハク、奴らが洞窟に入ったら後をつけるぞ」


「わかった」


「キュウちゃんはここで待ってて」


「キュッ」


しばらくすると黒装束の男たちは洞窟に入っていったので

その後をつけるようにハルトとハクは洞窟に入る


進んでいくとゴツゴツしていた壁は平らになり

壁画のようなものが描かれ装飾された通路へと変わっていった


追放された闇の神が、その後に光の神に作られた人間によって密かに崇拝されていた証拠である


そしてその壁画の中には【狼】の形をした物もある


大まかに分かった事ではあるが、どうやら昔の人々は神々と共に生き定期的に交流を行っていたようだ

その中で心の中に闇を持ったものに闇の神が密かに接触をしていたようだ


どうやら、この遺跡もその頃に作られたみたいだ


(ならなぜ今の人類は神々と接触できないんだ・・・?)


「ハルト、あれ見て」


ハクの指の先には指輪の描かれた壁画があった


「驚いた・・・・これは・・・・」


そこには文章と絵でこう記されていた

__________________________________________


光の神が人間を創造し数千の時が流れ


人間はそれぞれ心を持ち闇の神の作り上げた魔物を倒すため成長を遂げていた


神々は彼らと接触を図るために【神器】を各人間のリーダー達に授け


農作物や建築などの知恵を貸し反映させていった


その神器は指輪の形をしており、代々リーダーとなる者に受け継がれ身に付けられていった


とある日、醜い顔をした一人の人間が生を受けた


その顔は人間が忌み嫌う魔物のようであった


周りと違うその男は闇の忌子として育てられ、そして心の中に闇を宿した


闇を宿し続け成長したその男は、人間を憎み世界で初めて同じ人間を殺す者となった


最初に殺されたのは彼の故郷のリーダー、醜い男は【神器】を盗んだ


彼は泣き、神に祈った


するとそれに呼応してか現れたのは五柱神ではなく闇の神であった


何処からともなく現れた闇の神は醜き我が子に【闇の魔法】を教え


【闇】についての教育を行った


この【闇の魔法】こそがこの狩猟文明における最初の魔法であった


魔法を知った彼は闇に心を支配され人々を殺し続け、同じ闇を宿すものを集めた


組織の規模は次第に大きくなり、被害が拡大した


その事を知った、各リーダーは【神器】を使い神々と接触をした


深刻な事態だと悟った神々は五つの力を人間に与えた


こうして【闇の魔法】に遅れ火、水、土、風、光の魔法が誕生したのである


そして、二度と闇からの接触が行われないように男持つ【神器】を除く全ての指輪は破壊された


五柱神の力を恐れた邪教徒たちは人類に紛れ


______________________________


「醜い男はこの遺跡に姿をくらませたと・・・」


ハクの件に関してもそうだが闇の魔法が優れてるのは

邪教徒の【神器】が破壊されず闇の神と密接な関係にあったからであろう


(皆それぞれが心に何か悩みを抱えているが・・・

一体何が闇となりえるのであろうか・・・)


そして、この壁画が正しいのなら


「この遺跡のなかに【神器】が・・・?」


(黒装束の奴らの目的もきっとそれのはずだ。今奴らに【神器】を渡したらいけない気がする)


(だが相手は魔物ではなく人間だ・・・やらねばやられる世界とはいえ人が殺せるのか?)


殺人という言葉に頭の中がかき回される


ぎゅ


ハクが抱きつきこちらを見て頷く


「ハルト」


「あぁ・・殺しはだめだよな・・・」


気絶をさせると決心をしたハルトは洞窟の奥へと足を進めた

先に進むと幾つか部屋がありその一室から声が聞こえた


【あったか?】


【いや、こっちではないようだ】


どうやらまだ見つけていないらしい


(ん?声が二人しか聞こえない)


「ハク、もう一人の気配ってわかる?」


「ん、奥のお部屋」


二人にバレないように奥に進み、部屋に近づき離れた一人を黙視する


(いた・・・)


どうやら遺跡に残された書物を読んで情報を集めているようだ


ハルトはベルトを外し後ろから忍び寄り首を締めあげた


【!?んんん!!ん!んんんんんんんん!!!かっはっ!】


バタ・・・


洋画のようにあっさりいくと思ったが、現実は意外と苦しんでなかなかうまくいかなかった


良い気分ではない


「だが、とりあえず一人・・・」


落ちていた布で手足を縛り、叫ばれないように口も縛る


(なんか不格好だけどこんなものか)


怪しまれる前に残りの二人も何とかしなければ

そう考えたハルトは作戦を考え二人の居た部屋へと戻った


外套を被り認識阻害をしたハクにアイコンタクトをし二人のうち一人の傍へ移動させる


ハルトは物陰に隠れ、二人が一瞬でも離れる機会を覗った


(いまだ!!)


手でサインを送り同時に仕掛ける


【な、なんだ!ぐあ!んんんんんんんん!!!?】


【うあ!ぐあああああああああああああ!!!】


ハクの方は魔法を使ったようで気絶はしたみたいだが叫び声が凄かった


三人を同じ部屋に集め再度縛りあげる、この三人の処分は村に行ってから決めるとしよう


「ハクはこいつらを見張っててくれる?その間に【神器】を探してくるから」


「ん!わかた!」


_______________________________


「さて・・・探すとは言ったものの・・・どこから・・・」


【神器】という物からして醜き男と描かれていた人物が死ぬまで身に着けていたはずだ

ならば、その男が使っていた部屋を見つけるのが近道であろう


だが見つかるのは倉庫倉庫倉庫!それらしき部屋を見つけることはできなかった


「なかなか見つからないなぁ」


そう思いながら壁にもたれると、寄り掛かった壁が崩れ落ち隠し部屋が見つかった


「け、計画通り・・・」


中に入るとベッドがあり、その上には一体の骸がり指には【神器】が付いていた


「この人が・・・」


亡くなった後、部屋を隠されている事から静かに息を引き取ったのであろう

____________________________________

誰かが部屋にやってくる


ガラン・・・


レンガが崩れてやってくる


【この人が・・・】


ニヤリ


『こいつが・・・次の・・・・』

____________________________________


ゾク!


骸がこちらを見ていた気がした


「気のせいか」


指から【神器】を外すと骸は砂となった、劣化がひどかったらしい


「これが【神器】か・・・どうやって使うんだ?」


そう思った時だった、目の前が真っ白になったのだ

気が付くと真っ白で何もない空間に立っていた


「こ、ここは・・・」


『ようこそ、相澤春人君』


『会うのは初めてだね?会えてうれしいよ』


『我々は神と呼ばれる存在だ』


『君が最後の【神器】を見つけてくれるのを心待ちにしていたよ』


『ありがとう、奴らの手に再び渡るのを防げた』


目の前に現れた五人の神と名乗る存在が順番に話した


そして最後に一人の神が現れる


『私は主神、どうやら君は闇の神によってこの世界に迷い込まされたようだね』


『何人か見てきたが一番まともな人生を歩んでいるようだ、今のところはね?』


『異世界からの迷い人は決まって闇の神の好物な人間なんだ、今後も気を付けた方がいいよ』


『今回は【神器】を見つけてくれたお礼に一番必要であろう力をあげるよ』


「力ですか・・・?」


『力というよりはきっかけかな?ふふ、そのうち分かるから楽しみにしておいて』


『じゃあ、また会えるといいね』


「え!?あ、あの・・・!」


そこは元の部屋であった、指輪に目を向けるとそれは砕け床に散らばっていた


「幻覚・・・?」


ハクのもとに戻り、三人が目を覚ますのを待ち、外に出た

キュウちゃんと合流し村に戻る


村に着くころにはすっかり朝になっていた


村長に報告すると目を丸くして捕らえた三人を見た、どうやら村の住人だったようだ

その他、落盤の危険性や魔物の危険性などの報告を終え報酬をもらった


捕らえた三人についてだが、王都に戻るついでに連れて行くことになった


___________________________________


ガタン ガタン     ガタン ガタン


帰りの馬車にて三人に目をやると何かに怯えているようだ


(そんなに捕まるのが怖いのか?)


王都に着き、衛兵に捕らえた三人を引き渡し事情を伝える


「ふむ・・・わかった上に報告しておく、すまないが身分証を見せてくれるかな?」


「あぁ」


「たしかに、ご協力感謝する!良い一日を!」


___________________________________

側近室にて

「グアニル様、ご報告です」


「どうしましたか?」


「冒険者がべニア村近郊の洞窟にて邪教徒三名を捕らえたと」


ピキッ


「ち、地下牢に入れておきなさい」


「は!では失礼します!」


ドン!!


「失敗しましたか・・・・どなたかは知りませんが許しませんよ・・・」






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