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scene.3 告げられた真実

 



「実は……。」

 そこで一回、言葉を切る。一瞬俯いて、でもまたすぐに顔をあげて、苦しそうに、しかしそれを必死に隠すように笑顔を作る。

 愁はもう一度ゆっくりと口を開き、所々でつっかえながら言った。

「僕、病気に、なっちまったんすよ……。病名は難しくて、あんまり良く覚えてないんすけど、……もう普通に外を歩けるのは長くて四ヶ月って言われました。それから、寝たきりになって……長くても二年か三年だろうって……。それで僕、今のうちに先輩に会いたくなって、今日、ここに来たんす。」


 俺は、愁のその告白を聴いて大きな衝撃を受けた。四年も会っていない間に、そんなことになるなんて……。まだ、全然時間が解決してくれると思っていた。辛かった現実が、いつかは笑い話になるだろうと、いや、きっとなるから、そうなるまで待とうと、思っていたのに。時間は、待ってくれなかった。時間は決して、何も解決してはくれなかった。


 何時だって、現実は俺たちに対して、あまりにも残酷だった。


 あの時、……すべてを解決していれば……。あの時、俺が逃げなければ。


 俺は一人で、辛い過去を引きずっているつもりで、それでも健康に、大学にも通って、好きなことを研究して、のうのうと生きていた。愁にとっても、それが辛い過去であることには変わりないのに。そうして愁は、俺とは違って未来(いのち)の期限まで決められてしまった。

 あの時、俺は自分から問題に立ち向かわなければならなかったのに。

 俺は今まで感じたことの無い、激しい後悔に襲われた。今更何を考えたって意味は無い。それでも、考えてしまう。

 なんで、愁は……。どうして俺は……。

 目を見開き、手のひらに汗を握る。店内は涼しいはずなのに、ジットリと汗が肌を伝う。

 もう、愁のことを見れなかった。顔をあげていられなかった。少しずつ、呼吸が荒くなっていく。俺の脳内から、音は全て消えていた。


 あの時、俺は…………。

 どうすべき、だったのだろうか。






 ─────そんなことはもう、誰にもわからない。



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