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プロローグ ~朝~
ジリリリリ…
目覚ましの音で俺は目を覚ました。片腕を伸ばして頭に響くその音を止めた。
今日も、いつもと変わらない朝が来た。
あぁ今日も、冴えない朝だ。爽やかな空気が、却って辛くなる。
なんでだろう、独りの時は、センチメンタルになりやすい。
俺は沈んだ心を抱えながら、もぞもぞと布団から這い出て服を着替える。そしていつものように、時間を確かめる。
7:45
カーテン越しに太陽の光しか差さない薄暗い部屋のなかで、枕元に置いたデジタル時計の数字が光る。
「はぁ……」
俺は寝室を出てすぐの台所で、昨日炊いておいたご飯と、コンビニで買ったおかずを電子レンジで温め、誰もいない食卓にそれを並べる。いつもの通り手を合わせ、独りでモソモソとそれを頬張った。
朝の支度を終え、玄関へ。
「……行ってきます。」
誰もいない部屋に、今日も虚しく響く声。
1DKのアパートの二階、一番右端にある部屋だけが俺の安寧の場所。唯一の幸せの場所にドアを閉め、鍵をかける。
さぁ、今日も仮染めの幸せが俺を包む。