G 仲間入りのタイミング【セプト】
G 仲間入りのタイミング【セプト】
――怖い。何でかわからないけど、話せない。
セプトは、メイが教室にいる他の児童から矢継ぎ早に繰り出される質問攻撃に、まったく動じることなく、にこやかに対応しているのを横目でチラチラと見ながら、そこから少しはなれた場所で、読むともなしに黙々と絵本のページをめくっている。メイは、セプトが大人しく席についているのを不思議に思いながらも、話を続けていく。
「それでね。メイとセプトは、ノスマ共和国ってところからやってきたのよ」
「へぇ。どんなところなの」
「僕、知ってる。カジノってゲームがある国だよね」
ある派手系の女子児童が興味を示し、別の真面目そうな男子児童がメイに確かめた。メイは、良い質問だとばかりに鼻を鳴らし、得意気な顔をして答える。
「そうそう。メイのパパは、賭博場を仕切ってたのよ。中では、賽っていう一個から六個までの点が打ってある小さな立方体を転がしたり、ゼロから三十六までの数字が書かれた円盤が回したり、ゼロから二十二までの札を配ったりするの。お客さんが入ってるときは入っちゃ駄目って言われてたから、どういうルールで勝ったり負けたりするのかは、よく知らないんだけどね」
――自分より遥かに大きな子もいるってのに、よく平気でお喋りできるものだな。
「へぇ。物知りね、メイちゃん」
「本当。普通は、そんなことまで知らないよ。メイちゃんのパパは、凄い人なんだね」
質問した二人が感心していると、別の地味系の女子児童が質問する。
「ねぇ、メイちゃん。どうして、今日はパパと一緒じゃなかったの」
――おいおい、そんな答え難い質問をするなよ。家庭の事情でって、先生が言ってただろうが。
メイは、人差し指を顎先に当てて小首を傾げ、小さく唸ってから答える。
「ウーン。メイも、ずっとパパと一緒に居たかったんだけど、パパに、それはいけないことだって言われたの」
「パパに言われたから、その通りにしたんだ。嫌だって言えばよかったのに」
――何にも知らないとはいえ、そう簡単に言うなよ。世の中には、大人だってどうしようもないことがあるんだぞ。
ヤンチャそうな男子児童からの質問に、メイは困ったように眉をハの字に曲げなら言う。
「わがまま言ってメイが言うことを聞かなかったら、パパはとってもとっても哀しそうな顔をするんだもの。そりゃあ、そう言われてすぐは、すっごくすっごく哀しかったわ。だけどね。泣いちゃいそうになる前に、フィアに出会って、あっ、このお姉さんと一緒なら良いかなって思ったの。メイにはフィアがいるし、グレイやセプトだっているから、パパが居なくても平気なの」
そうメイが言い切ると、四人は口々にバラバラな感想を言う。
「まぁ、メイちゃんが良いなら、私は良いんだけど」
「そうだよ。メイちゃんの気持ちが一番だ」
「そうかしら。やっぱり、パパはパパでしかないんじゃない」
「しつこいな。メイが良いって言ってるんだから、良いってことにしろよ」
――あぁ、言いたい。気持ちを吐き出して、スッキリしてしまいたい。でも、いきなり話に割り込んだら、きっと変な奴だと思われるに決まってるよなぁ。あぁ、もどかしい。