6・孤児院にて 1
「あれが孤児院ですか」
「そう、ちいさいけどね、今12人の子を預かってるんだ」
そこにはこじんまりとしているが、手入れの行き届いている建物と、ちょっとした広場があった
「ただいま戻りましたよ」
「「「「「あ~神父様!おかえりなさ~い」」」」」
ドアを置けた途端、小さい子たちが群がってきた
「ああ、ただいま、今日も元気にしてたかな?」
「「「「「うん!」」」」」
やはりマクベルさんは慕われているようだ
とそこで、奥からシスター服を着た女性が奥から出てきた
「あら、神父様お帰りなさい、ところで、その子は?」
「シスターマリエル、ただいま、この子は今日から一緒に暮らすことになったアラタ君だ」
「どうも、アラタといいます、今日からお世話になることになりました、よろしくお願いします」
「あらあら、ずいぶん丁寧なあいさつね~、私はここを任せてもらっているマリエルよ、よろしくねアラタ君」
「はい、よろしくお願いします」
この人はマリエルというのか、なんかポワポワして暖かな雰囲気の人だな
「ところで、マクベルさん、ほかの子は?」
飛び出してきた子は5人しか居なかった
「ああ、10歳を超えたから、冒険者ギルドに登録して仕事をしているんだよ、まあまだ、街の手伝いとかしかできないけどね」
「ああ、なるほど頑張っているんですね」
「うん、なんでも孤児院の為に働きたいって言ってがんばってくれてるよ、おかげで何とか孤児院を続けることができて助かっているよ。」
「それはすごいですね・・・」
この世界では子供でも働く事が普通のようだ、自分も早く冒険者ギルドに登録したいな
ガチャ
その時ドアの方から男の子2人と女の子2人入ってきた
「あー!神父様もう帰ってたんだ!」
「ああ、お帰り、今日の仕事は終わったのかい?」
「おう、ばっちりだぜ!」
「もーサジったら、道掃除でばっちりもないでしょー」
「それを言いうなよ~マーリ、俺だって早く魔物退治ぐらいしたいぜ!」
「まあまあ、危ない仕事はもっと大人になってからね」
「ちぇ~」
「ところで、その子だーれ?」
「ああ、紹介するよ、今日からここ暮らすことになったアラタ君だ」
「どうも、今日からお世話になります、アラタです」
「ずいぶん固いしゃべり方するのねー、私はマーリよろしくね」
「俺はサジっていうんだ、よろしくな!」
「僕はガラよろしく」
「・・・アイリ」
なかなか個性のある子立ちみたいだ・・・
「それよりシスターお腹へったー!」
「はいはい、今用意してますからね~」
「やったー」
「ところで、マクベルさん、自分も食べていいんですか?」
「もちろん、今日から君もここの家族だからね、遠慮することないよ」
「ありがとうございます」
やはりマクベルさんは優しい人みたいだ
「ところで、マクベルさんこれで9人ですよね、後の3人は?」
「ああ、ちょっと事情があってね・・・」
その時奥から3人の子たちが奥から出てきた
「あ、神父様お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
その子達は、手を包帯で首から下げていたり、足をちょっとひきずっていたり、そして1人の女の子は両目に包帯を巻いて手を引かれて出てきた
「あ・・・この子達・・・」
「そうなんだ、この子達は親と一緒に事故に巻き込まれたりしてね、何とかこの子達は助かったんだけど後遺症が残ってしまったんだ」
「そうなんですか・・・」
まだ小さいこの子達は、怪我が残ってしまってるのですぐに出てこれなかったのか・・・
うん、いいよね、これからお世話になる事だし
「マクベルさん、いいですか・・・」
「いいって何を・・・あ、もしかして」
「ええ、自分なら治せると思います」
「でも、う~む・・」
「ここだけの内緒ということで1、あの子たちのこの先を考えるとですね・・・」
「そうだね・・・お願いするよ」
「はい!では」
早速3人の方へ歩いて行った
「こんばんわ~」
「ん~おにーちゃんだーれ?」
「うん、今日から一緒に暮らす事になったアラタっていうんだ、よろしくね」
「うん!よろしく~」
「うん、で、ちょっといいかな?」
「なーに?」
「今からおにーちゃんが君たちに手品を見せてあげるね」
「「わー手品!見たい見たい」」
「・・・私、見えない」
「いや、見れるよ」
そう言って、両目に包帯を巻いている女の子の頭にそっと手を置いた
うん、この子の目は何か木片みたいな物が奥まで刺さっていて取れなくなってるのか・・・
今度は落ち着いて・・・木片の除去、消毒、目と神経の再生、顔と瞼の傷の治療・・・・
「さあ、手品を始めるよ!それ!」
掛け声と共にゆっくり治癒魔法を流し込んでいった
女の子の体が徐々に輝きだす
「わぁ、なんだかぽかぽかする~」
「うん、もうちょっとそのままね」
「うん!」
急に治すと負担がかかるかもしれないので、ゆっくりゆっくり・・・・・・よし!
「さあ、一つ目のクライマックスだよ~、ゆっくり目をあけてごらん」
「え・・・でも・・・」
「だいじょーぶ、ほら、ね」
「うん」
包帯を付けたままゆっくり目を開けてもらう
「あ、光が見える」
「うん、じゃあそのままね」
ゆっくり包帯を外す
「わぁ~見えるようになった!すごい~」
「うん、すごいでしょこの手品」
「うん!すごい!お兄ちゃんありがと~!」
そういった後、なにかハッとした様な顔をしてじっと自分を見ている
「ん?どうしたの?」
「もしかして、おにいちゃんって天使様?」
「え?なんで??」
「うん、だってお兄ちゃんだけ光ってるの。」
「え、久しぶりに目が見えるようになったんで、まぶしいだけじゃないの?」
「ううん、他のはみんなちゃんと見えるの、光ってるのはお兄ちゃんだけ」
「え~と、みまちがえじゃなく?」
「うん、お兄ちゃんだけ!」
うん?なんだろ?魔法の影響?
「あの~マクベルさん、なにか分かります?」
「う~ん、この魔法自体が異常な魔法だからね・・・なんとも」
「そうですか・・・」
やっぱり分からないか・・・でも、この子の夢を壊すのもなんだしな・・・
とりあえず
女の子の耳元でそっと
「実はね、君たちの怪我を治すために女神さまから言われてやってきたんだ、でもこの事はないしょだよ」
「やっぱり天使様なんだ!でも、ないしょだね!」
「うん、ないしょ」
「うん!」
そう言うと、女の子はシスターの方へ走っていった
「見えるようになったよー!」
雰囲気でシスターの事わかるのかな?
他の小さな子たちは「わ~手品すごい」とか言って騒いでる
シスターは・・・ポカンとした顔で固まってる・・・
とりあえず説明は後にして、次の子たちを治してしまおう
「さあ、次の手品だよ!じゃあ君」
手を吊っていた子の頭に手を置く
「さあ、いくよ~」
この子はとりあえず、腱が切れてるだけみたいだな
ついでに怪我の後も消しておくか・・・
「はい!」
今度も子供の体が輝きだす
「さあ、包帯を外してごらん」
「うん」
恐る恐る包帯を外していく
「あ!手が動く!すごい!ありがとうお兄ちゃん!」
「うん!さあシスターに見せておいで」
「うん!」
手が動くようになった子もシスターの方へかけていった
さて、最後だね
足を引きずっていた子が期待半分不安半分の様な目でこちらを見ている
「あの、あたしの足も・・」
「うん、お兄ちゃんの手品はすごいの見てたでしょ、大丈夫!」
「じゃお願いします!」
「うん!」
早速手を頭に乗せる
う~ん、この子は一度骨折した足の骨がちょとずれて繋がってしまったみたいだな
あと、筋肉にも負担がかかってほかの場所にも影響が出てる
まず、骨を正しい位置に繋ぎなおして負担がかかっていた筋肉も癒してっと
「じゃ、いくよ~はいっ!」
体が輝きだす・・・
「うん、もういいよ、歩いてみて」
「はい」
引きずっていた足を前に出す
「わあ!普通に歩ける!すごい!」
「うん、すごいでしょこの手品」
「うん!お兄ちゃんありがとー!」
さて、ポカンとした目で見ているシスターマリエルと年長組4人には後からマクベルさんに説明と口止めをしといてもらいますか・・・