5・衝撃の事実
とりあえず、教会の方へ帰ってきた
「さて、君は一体何者なんだい?」
神父さんが今までとは違う真剣な顔で聞いてきた
「あ、いや、一般人?」
「ふう、まあいろいろあるみたいだね、じゃあとりあえず私から自己紹介をさせてもらうね、
自分の名前はマクベル・シャロービュエ、ここの神父をさせてもらってるよ
あと、2人シスターもいるけど、それはまた後で。」
「あ、はい、マクベルさん?って呼んでいいんでしょうか?何か貴族様っぽいんですが・・」
「あ~いいよいいよ、貴族と言っても辺境の男爵の3男坊だしね、もう家も出てるから気軽に呼んで構わないよ。」
「では、マクベルさんと呼ばせてもらいます、よろしくおねがいします」
「ん、よろしく、で君の名前もおしえてもらえるかな?」
「あ、はい、自分の名前はアラタと言います、歳は12歳?です」
「うん、アラタ君というんだね、ところでこの街にはどうしてきたんだい?」
「え~と、どうしてと言うか気が付いたらここに居たというか・・・」
「う~ん、何か事情があるみたいだね・・・
じゃあ、君は何処から来たのかな?その髪と目の色は見たことないんだけど」
「へ?黒い髪と目って珍しいんですか?」
「え?黒?その透き通るような真っ白な髪と深い銀色も目が?」
「はい??白と銀??今そんな色になってるんですか?」
「・・・変わった事言う子だね、うんそうだよ」
おそるおそる前髪をつまんで見てみる
あ、白い・・・
目の色も変わっているっぽいな・・・
「ああ、いえ鏡を見た事が無かったもので(こちらに来てから)・・・」
「周りの人は何も言わなかったのかい?」
「1人暮らしをしていたので(高校卒業してから)なにも」
「う~ん、何か大変な暮らしをしてたみたいだね・・・
じゃあ、話は戻るけど、どこから来たのかな?」
「いちおう日本?から。」
「ニホン?聞いたことないな、どこにあるんだい?」
「え~と、東の果ての小さな国なんですけど・・・」
やっぱり、こちらには日本は無いみたいだ・・・
「東の果てと言うと、あの山脈と砂漠の果てかい?そんなところから一人で?」
「ええ、まあ、1人で来たというか飛ばされたというか・・・」
「う~ん、何か話せない事情があるみたいだね・・・
まあ、悪意があってこの街に来たと言う訳でもなさそうだね」
「悪意なんてとんでもない、ただ普通に暮らせればと」
「そうか~普通の暮らしをしたいんだね、ならなんでここに泊まらせてほしいなんて?」
「はい、お金を稼ごうと冒険者ギルドに行ったら12歳ではだめだと・・・それから宿も子供だけじゃ泊まらせてもらえなかったので、行く当てもなく・・・」
「あ~確かに、子供一人じゃしかたないね、君を街に放り出してもまた何かありそうだし、とりあえず今日から裏の孤児院に泊まるといいよ。」
「え、孤児院なんてあるんですか?」
「うん、こんな小さな街でも、やっぱり親と死に別れたりしてどうしようもない子が出てしまうんだよね、なので小さいながら孤児院を運営させてもらってるよ」
「はあ、すごいんですね、マクベルさんて」
「なに、聖職者としてはこんなこと当たり前だよ、本当はもっと大きな孤児院を経営したいんだけどね、今はちょっとね」
うん、マクベルさんってなかなか立派な人みたいだ
なぜ貴族で田舎の神父なんてやってるのかとか色々聞きたいこともあるけど今は聞かないでおこう
「さあ、こっちだよ」
一度教会を出て裏に回るようだ
「あれ、この建物は?」
教会の隣にこじんまりとした建物が隣接していた
「ああ、それは診療所として使ってる建物だよ、と言っても今日はシスターエリスが出ているので開けていないんだけどね」
「ああ、だからゴンゾウさんは教会の方へ飛び込んできたんですね」
「うん、本来ならもっと人数をそろえて治療に当たらないといけないんだけどね、ただでさえ少ない治癒魔法の使い手が、こんな田舎の街に何人も用意出来なくてね、まあ一人いるだけでも助かってはいるんですが」
「え、治癒魔法が使える人って少ないんですか?」
「ああ、そうだね、基本魔法が使える人は100人に1人ぐらいで、その内治癒魔法が使えるのが100人に1人ぐらいかな」
「ああ、と言うことは1万人に1人は使えるわけですね、そんなにすくないわけじゃ・・・」
「それでね、アラタ君」
マクベルさんがぐいと迫ってきた
「はい・・」
「治癒魔法が使えるといっても、せいぜい擦り傷や打ち身を治すぐらいが普通なんだ、君が使った大怪我を治すような治癒魔法が使える人はほんの一握り、私の知る限り王都に2人しか居ないんだよ」
「え、そうなるとこの国に2人しか居ないということですか・・・」
「そう、しかもその2人でも大怪我を治す時は何時間、いやひどい時は何日もかけて治療すると聞いたよ」
「・・・じゃあ自分の使った治癒魔法って」
「うん、異常だね。まさに神の御業というほどにね」
「えぇ!そんなに凄かったんですかあれ!」
「うん、凄すぎた、あの力があれば国が左右されるぐらいに」
「じゃあ、あの事が知れ渡ると・・・」
「まず王都が動くだろうね、他の国が知ると戦争になるかも知れない」
思った以上に大騒ぎになってしまいそうだ・・・
あの時マクベルさんが居て本当に良かった。
「・・・全力で隠しましょう」
「そうした方がいいね、私も協力するよ」
「ありがとうございます・・・」
初っ端から波乱万丈な人生になることは、とりあえず避けられそうだ。
一般市民である自分にはそんな生活耐えられそうも無いからな・・
「さあ、あそこが孤児院だよ」
教会の敷地をぐるっと回って裏の方へ行くと孤児院が見えてきた。