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ナインテイカー  作者: キミト
第三章 『極剣』
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第二十五話  最終決戦!

 夜空を染め上げた極光が次第に細くなり、燐光となって散って行く。

 月をも貫くような光が収まった時、そこにあったのは静けさを取り戻した九式記念公園だった。

 振り切った剣を戻し、肩に担ぎながら、リエラは細く息を吐く。


「ふー、疲れた。けど、これでやっと終わり、か」

「いや、まだ終わりじゃないってリっちゃん。俺達の事忘れないでくれよ」


 独り言に、同じ口が言葉を返す。

 自分の中の藤吾の意見に、リエラは真っ白な頭を一搔きし、己が力を行使した。

 倒れていた皆の身体が一箇所に集まる。魂の抜けた肉体に治癒魔法を施してから、リエラはニーラの身体に手を当てる。


「あんまり長く魂が抜けてたらどうなるか分からないしね。さっさと戻しちゃわないと。皆、ほんとありがとう」

「……いいえ。リエラさんの力と想いあってこそ、です」


 すぅ、と触れた手を通して魂が移って行く。

 同様に、リエラは次々と皆の身体に手を当ててはその魂を戻していった。

 ほんの少し前までは分からなかった魂の戻し方も、今は感覚で分かるのだ。全ての作業は支障なく終わり、同時にリエラの姿が元に戻る。

 白かった髪は炎のように赤く。銀色の瞳もまた真っ赤に。気付けば、左手にあった紋章も消えていた。


「あぁ~。一気に身体がだるく……うぁ~」

「おいおい、ゾンビみたいな声だぞ。大丈夫か? リっちゃん」


 今度は自分自身の口で、立ち上がった藤吾が問い掛ける。

 他の皆も、意識を取り戻し続々と立ち上がっていた。全員の無事を確認し、リエラは気だるげに手を挙げる。


「大丈夫大丈夫。傷は治ってるし……全力を振り絞って、疲れてるだけ」

「それなら良いのですが……。まるで軟体生物のように蕩けているもので。心配になってしまいました」


 微笑む綾香にやはり手を挙げて返せば、鼻を鳴らした世羅が目の前にずい、と歩み出てくる。


「ん~? どうかした、クーリエ?」

「いや、別に。ただまあ、何だ。……ありがとう、とだけ言っておく」


 頬を赤らめ顔を逸らす世羅に、リエラはポカンと口を開け放つ。

 何の対してのお礼なのかと数秒考え……疲れ切った頭は、まあ良いかと考えることを放棄した。

 実際、きちんと考えた所で答えは出なかっただろう。世羅の心情の深い所までリエラは知らないし、感じられるほど親交もまだ深くない。

 ごろんとアスファルトの床に寝転がってしまうリエラに、刀を鞘に仕舞いながら世羅は嘆息。


(一応、死なずに済んだからって礼を言ってみたけど……よくよく考えれば、今回の勝利はこいつ一人の力じゃないんだよな。私の魂や心だって、勝利に貢献した訳だし。じゃあ、礼なんて要らないか)


 頬の赤味が即座に消え、肩から力が抜けていく。

 感謝して損した、と思い……いや、やっぱり感謝はするべきか、と思い直す。


(お前のおかげで、悩みが一つ消えたよ。レスト・リヴェルスタのような圧倒的な強者に、どうやって挑んだらいいのか。どうやって絶望的な敗北の恐怖を乗り越えるのか。とにかく斬れ、って師匠の教えも間違ってはいないんだろうけど……そうじゃなくて、何ていうか。私達常人でも出来るやり方を、お前の心から学べたよ)


 共に一つと成っている中で、世羅は感じ取っていた。

 リエラの心。リエラの想い。リエラの考え。彼女がレストを超えようと努力し、挑み、そしていかに立ち向かっているのかを。

 それこそ今の自分に必要なもの。欠けていたピースを言葉ではなく心で直接感じ取り、世羅は頭に刻み込む。


「後は実践出来るか、か。ま、今なら何とかなる気がするよ」

「ん? 何か言った、クーリエ?」

「別に。まだ安全になったとも限らないのに随分暢気な奴だな、って思っただけだ」

「あ~、そりゃまぁそうなんだけどね。ぶっちゃけ精も根も尽き果たして、私はこれ以上戦うのは無理だしー。もしまだ悪魔が来るようなら、全部皆に任せるわ~」

「おいおい、投げ遣りだなリっちゃん。ま、俺達はまだ余力が残ってるからそれでも良いけどよ」


 壊れた竹中んねるの残骸を涙を流し拾い集めていた藤吾が、任せなさいと胸を叩く。

 限界まで力を振り絞った世羅やリエラと違い、藤吾達四人は早期にアンマリーに魂を抜き取られた為、体力や魔力にはまだ充分な余裕があった。

 怪我も治癒魔法によって治っている今、雑魚悪魔程度ならば団体さんで来た所で問題ない。むしろ今のリエラに参戦された方が、足手纏いが出来てよっぽど迷惑だ。


「と、いう訳で。リっちゃんは大人しくそこ等で寝ときな」

「うぅ、何か雑な扱い。事実だからしょうがないけど……」

「……リエラさんは、頑張りましたから。だから、後は任せてください」

「ニーラちゃん……。ありがとー! やっぱり愛してる~」


 それまでの脱力は何処へやら。ニーラが近づいて来た途端、リエラは一気に上半身を跳ね起こし、少女をぎゅっと抱きしめる。

 恥ずかしそうに、ニーラが顔を俯けた。微笑ましい光景に、綾香と藤吾は揃って笑い、世羅は呆れ、荘厳は腕を組んで目を瞑る。

 新たな悪魔が来る気配も無い。達成感に包まれながら、六人は訪れた休息に身を任せ、


「ふ、ふふ。随分、楽しそうですね」


 微かに聞こえて来た声に、眉を顰めて振り向いた。


「……まだ息が合ったなんて驚きね。天使さん?」

「そう、ですね。私も自分で驚いています。確実に消滅したと、思ったのですが……どうやら手加減、されたようで」

「手加減、か。……かもね。無意識の内に、人間に近しい姿のあんたを殺すのを躊躇ったのかも」


 最後の一撃を思い出しながら、倒れ口だけを動かす天使に答えを返す。

 横たわるアンマリーは、誰が見ても死に体だった。いつの間にか姿は元の柔らかな女性に戻っており、背中の翼も消えている。

 既に、下半身は消滅を始めていた。人間と違い、天使は死んでも死体が残らない。儚き神力の塵となって、丸ごと消滅してしまうのだ。

 アンマリーもまた同じ。このままいけば、数分と持たずに完全消滅するだろう。そして無論、リエラ達に彼女を助けるつもりなど毛頭無い。彼女の死は確実だった。


「恨むな、とは言わないけど。化けて出たりしないでよ、そもそも襲ってきたのはそっちなんだからさ」

「ふふふ、別に恨むつもりはありません。だって……私の目的は、既に達せられているのですから」

「達せられてる? それって……っ!」


 突如、大地が激しく振動する。

 木々がしなるほど大きな地震。だがそれがただの地震ではない事を、リエラ達は鋭敏な感覚で理解した。

 即座に振り向く。地震と共に発生した、力の源――この公園の中央に立つ、銅像へ。


「あれって……メイス!?」


 そうして、目を見開いた。

 封印の要であろう巨大な銅像。その胸部に、アンマリーの持っていたメイスが突き刺さっていたのだ。


「まさか、あれのせいで封印が壊れて……!? いやでも、あの程度の破損で壊れるものなのっ!?」

「壊れませんよ、普通なら。そもそも、あの銅像はただの象徴。壊しつくした所で、封印は解けません」

「じゃあ、どうして? この振動や力の噴出は、どう考えても封印が解かれたとしか……」

「単純ですよ。あのメイスには、封印を解く為の術式が織り込まれているのです。……封印の術式は非常に強固で、私の力では解く事が出来ないものでした。そこで私達の仲間のミナリーさんに解呪の法を創ってもらい、メイスに宿してもらったのです。メイスを封印に突き刺せば、それだけで封印を壊せるように」

「そんな……。一体何時の間に」

「最後の撃ち合いの前。メイスを手放した時、籠めておいた力で軌道を変え、銅像に突き刺したんですよ。私の悲願はあくまでも、主の復活。貴女達を倒すことではありませんから」


 アンマリーにとって、主とは何者にも代え難い至高の存在だ。

 例え命の危機が迫っていようとも、敗北というプライドの崩壊が迫っていようとも。決して主の復活に勝る事は無い。

 だからメイスを手放した。武器であり盾でもあるそれを所持していた方が、僅かにでも勝率が上がると分かっていながら。自ら選び、手放したのだ。


「これで、主とその兵達が、復活します。愚かなる人類は総じて、ひれ伏し、許しを請うと、良いでしょう。少しは、慈悲を、掛けて貰える、かも、しれません、よ……」

「アンマリー、あんた……!」


 リエラが文句を言う前に。アンマリーの身体は、光と成って散り消えた。

 燐光が、風によって吹き散らされる。後には何も残らない。最後に勝ち逃げだ、という満足げな表情だけを残して、アンマリー・ロッテという存在はこの世界から消滅した。

 振動が、一層激しさを増す。立っていることすら困難なレベルに達し、遂に限界を向かえ、封印は解き放たれる。

 銅像が弾けた。嵐のように渦を巻いた力が天に向かって立ち昇り、今度は空間そのものが振動し出す。


「ど、どうすんだこれっ」

「とりあえずこの場を離れましょう! このままでは巻き込まれますっ」


 綾香の提言に従い、一同は急いで公園外へ避難した。動けないリエラは、ニーラが魔法で浮かせて無理矢理運ぶ。

 間も無く、彼女等が公園を出た瞬間。背後で立ち昇っていた力が一気に膨張し、衝撃の無い爆発を起こしたかと思うと、即座に沈静化していく。

 失敗か? と一同は揃って脚を止めた。


「な、何だ。何も起こらないぞ? 封印の解除、上手く行かなかったんじゃないか?」

「有り得ますね。封印の解除が本当に可能かどうか、直接試した訳ではないでしょうし……何処かに、不備があったのかもしれません」

「……だったら良いがな。そう、甘くは無さそうだぞ」


 険しい顔の荘厳に続いて皆振り向けば、公園の中央に、眩い光柱が突き立っている。

 でかい。周囲の木々と比較してみれば、最低二十メートルは下らない。


「なんだ、あれ。……人?」

「まさかあれが。封印されていたという、天使の主――」


 光柱は、瞬く間に人の形に変化した。

 出来の悪い粘土人形のような、のっぺりとした体躯と頭部。顔には目も鼻も口もなく、ただ光を固めて人型を作ったような、不気味な巨体がそこに居た。


「嘘だろ、本当に復活しちまったのか。どうすんだよ、あれ」

「今の俺達では、厳しいぞ。全快の状態でも勝てるかは分からんがな」

「此処は一度退いて、様子を見るべきでは――っ、皆さん、あれを!」


 焦った綾香が指差す先。公園の奥に、更なる光が現れる。

 光はやはり、人の形に変化した。驚く皆を余所に、同じ様な光が次々と公園中に現れては、人型へと変化していく。

 あまりの衝撃に誰もが動けない中、出現した光の巨人の数は五十を超えた。尚も増え続ける巨人の威容に、藤吾は立ち尽くし呆然と呟く。


「これって、アンマリーの言ってた主の兵達、って奴か?」

「多分。そうなんじゃないの? 主とやらがこんなに居るとも思えないし」

「……何か、やけに軽いなリっちゃん。今俺達、すげーピンチだぜ?」

「そういう藤吾こそ。いまいち危機感が感じられないけど?」

「いや、まあ、俺の場合はもう事態に頭が付いていかないというか。許容量をオーバーしちまってるというか」

「あ、そう。別にそのままでも良いんじゃない? 多分、心配は要らないし」

「へ? 心配要らないって、この光景を前にしてどうやったらそう思え――「おや、随分眩しい事になっているじゃないか」るの、か……は?」


 有る筈の無い声に言葉を遮られ、藤吾はゆっくりと後ろへ振り向いた。

 いや、彼だけでは無い。綾香も、ニーラも、荘厳も、世羅も。予想していたリエラ以外の誰もが振り向き、そして言葉を失った。

 何故なら。そこに、追い詰められたと聞いていた、金髪の美丈夫が居たからである。


「やあ皆、久しぶり。と言っても、数時間程度だが」

「レスト、お前っ、何で此処に!?」「師匠、無事だったんですね!」

「ああ、勿論無事だとも。それと藤吾、何故私が此処に居るかだが……決着を着けてきたからだよ。あの悪魔とね。……それにしても、リエラ」

「ん?」

「もしかして、分かっていたかい? 私が来る、と」

「あ~、まぁね」


 あっさりと、リエラは断言した。

 地面に横たわりながら、肩を竦める。


「アンマリーを倒した時にさ、分かったのよ。今の私達は強いけど、レストに届くほどじゃないな、って。そんな私達に負けるようなアンマリーに、あんたが追い詰められる訳ないじゃない。例え複数相手でもね」

「だとしても、今此処に来る理由にはならないが」

「なるでしょ、充分。あんたの事だからどーせ何か企んで、苦戦したふりをしていたんでしょうけど。本当に危険な――封印が解除されるような事態になれば、流石にとっとと片づけてこっちに来るでしょ。違う?」

「くく、大当たりだよ。行動を読まれるとは、私も未熟だな。あるいは、君の野生の勘が強力なのか」

「野生とか言うな。ってか別に勘じゃないし。私は何時もあんたを胡散臭いと思っているから、この位予想出来るってーのっ」

「酷い言い分だ、構わないけどね。ああ、それと一つ、君の意見に間違いがあったよ」

「? 間違い?」

「ああ。君は現状を『本当に危険な事態』と評したけれど。実は案外、そうでもないんだ」

「封印が解けて、あんなのが溢れ出てきてるのに?」


 今も数を増やし続けている巨人を指差す。

 だが言葉とは裏腹に、リエラの顔にも危機感は無い。


「ああ、あれは末端の神達――神兵だよ。アンマリーが主と崇める神ほどの力は無いが、全員天使よりは格上だ。当然強い」

「なのに危険じゃないって?」

「まあね。封印は数段階に分かれていて、本格的に主神が復活するのはまだ先だ。それまでに再び封印しなおせば問題ない。神兵だけならばどうとでもなるし……それに」


 一旦言葉を区切り、背後を横目で窺いながら、レストは続けた。


「此方の戦力も充分だしね。だろ? 練夜くん」

「……仔細ない」


 短く答えたのは、腰に刀を佩いた学生服姿の青年――四字練夜である。

 更に後ろには、あははーと笑いながら手を振る少女、菜々乃七海と、腰に手を当て薄い胸を張る幼女、物宮西加の姿もある。

 ナインテイカーが三人、レストも含めれば四人も居るという状況に、藤吾達が揃って目を見開いた。一方リエラは、もう何でも来やがれーとばかりに手足を投げ出し大の字になっている。

 四字が、ちらりと世羅に目を向けた。ビクンと背筋を正す彼女に近づき、一言。


「……まだ未熟だが、よくやった」


 そう呟いて、離れていく。

 驚く世羅だったが、すぐさま俯くと、密かに歓喜を露にした。あくまで師にばれないよう、こっそりとだ。

 褒められて喜ぶなんて、子供っぽくて恥ずかしい。何て考えてしまう辺り、実に子供らしい世羅だった。


「菜々乃から全て聞いたぞ、レスト」


 彼女の下を離れた四字が、冷たい声で言う。

 何時ものように感情の薄い声音の為分かり辛かったが、その声には何処か怒りの色が垣間見えた。


「あーあ、全てバレてしまったか。で? 君は私をどうするんだい?」

「……別に、何も。それより、今はあれを斬るべきだ」

「そうだねぇ。じゃあ任せて良いかい? 君に」


 言った瞬間、ぎらりと睨まれる。


「おお、怖い。けれどしょうがないだろう? 私は怪我をしている身だ。これでも、結構辛いんだよ?」


 ほら、とレストが腹の傷を見せた瞬間、別の方向で絶叫が上がった。


「ああああああああ!! し、師匠のお腹に、あ、穴が!?」

「落ち着けあやっち! 多分大丈夫だ!」


 恐慌状態の綾香を藤吾が慌てて押さえ込む。

 そちらに一度視線を向けた後、レストは七海に目線を流す。

 少女が、あははーと頭を搔いた。


「御免御免、レスっちー。レスっちならそのくらい、大丈夫かなーと思って」

「大丈夫ではないよ、流石に。まあ許してあげるさ、私から頼んだことではあるし……何より、君も罰は受けたようだし、ね」

「あはは、ほんと。ばっさりやられちゃったー」


 そう言う七海の右腕には、手の先から肩口にかけて、大きな一本筋の傷跡が刻まれていた。

 練夜の『斬』によって付けられた傷である。それなりに深いものの既に血は止まっており、一応動かすことは出来るようだった。


「容赦ないよねー、練君。かなり本気だったみたいでさ、相殺しきれなかったよぉ」

「むむむ、痛そうな傷だな。後で私のスーパー発明品で、治療してやろう!」

「ほんとっ、博士ー。お願い、かなり痛くって」


 うぅうぅと泣きまねしながら傷を押さえる七海。

 そんな彼女に縋りつかれる西加に、レストは確認を取る。


「それで博士。そっちはどうなったんです?」

「ん? ああ、あのゾンビ――ギギールなら、面倒事に巻き込まれる前にーとか言って、どっかに逃げてしまったぞ」

「そうですか。まあ、無害そうだから構わないか」

「そっちこそ、あの少女はどうしたのだ? お主を閉じ込めていたあの世界を造っていた少女は」

「彼女なら――逃がしましたよ。いや、勝手に逃げたと言うべきか。モーゲルラッハが、勝ち目が無くなった時点で逃げるよう伝えていたみたいなので。特に追う必要性も感じなかったし、放置しました」

「そうかー。まあ、お主がそう感じたのなら、そうなのかもなっ」

「ええ、そうなんです。それで、どうします? 博士。私や七海君は傷を負っている。練夜君も消耗している。元気なのは、博士だけですが」

「むむむ。そうだな、此処は私に任せておけっ! ……と、言いたい所なのだが。我がパートナー、『アルトリーナ』も今はオーバーホール中だしな。一人は大変だ。それに、研究者とは……一人で前線に立って戦う者ではないっ!」


 だろう? と何故か西加は胸を張る。

 今も神兵は増え続けておりそんな事を言っている場合ではないのだが、レストは納得したようで、


「そうですね、その通りだ。じゃあやっぱり、四人でやろうか」


 七海と四字に目で確認を取る。

 一人は無言で、一人はしょうがないなーと呟いて、頷いた。

 それぞれ自分の調子を確かめながら、横に並んで遠く聳える神を見上げる。


「世界は展開しないのか?」

「するべきではないだろう。封印は特殊性が高すぎて、世界に巻き込む訳にはいかない。かといって神兵だけ巻き込んでも、封印から湧き出てくる連中が野放しになってしまう。このまま戦って神兵を殲滅、出来た隙に封印を再構築。これが一番だろうさ」

「そうか。何にせよ、俺はただ斬る。それだけだ」

「私も同じくぶん殴る! それだけー」

「はっはっは、ならば私が周囲にバリアを張って、戦闘のフィールドを造ろう! 皆、思う存分暴れるが良い!」

「そうして貰えると助かります、博士」


 話しながら、四人は戦闘体勢を取る。


 レストは、視認出来るほどの色濃い魔力を立ち昇らせ。

 四字は、静かに鞘から刀を抜き、正眼に構え。

 七海は、どこからか取り出した包帯を右腕に巻きながら、つま先で地面を叩き。

 博士は、虚空から呼び出したロボットアームを背中に装備して。


 四者四様の準備を整え、公園へと一歩踏み出す。


「さて。それじゃあ――戦争を、終わらせようか」


 レストの呟きと共に。四人は一斉に、飛び出して行った。

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