プロローグ
ー塀の高さは約2m。助走をつけて登るには少し高い。さてどうしたものか…
国立特別技術養成学園。表向きは芸能からスポーツまで幅広い分野のスペシャリストを養成する専門校。オリンピックのメダリストや国民的アイドルは揃いも揃ってここの出身だ。
入学倍率は10倍を軽く超えるため、入学するだけで一苦労なこの学園は、しかし入ってしまえば天国も同然だ。好きなことに好きなだけ熱中出来て、おまけに学費もタダ。それどころか住むところや食事まで学園が負担してくれる。つまり生徒は3年間、ただ専攻科目で結果を出すことに邁進するだけだ。
だが、一方で結果の出せない者には容赦がない。定期的に行われる試験で一定の基準を満たせなければ即退学となる。
天国か地獄か。それを決めるのは当人のみである。
そしてこの学園は、人々の知らない一面を持ち合わせている。
通称『特別科』。大きく分けて3つあり、それぞれ定員数が20名と他のどの科より狭き門だ。
1つ目が『探偵科』。浮気調査から迷宮入りした事件の解決まで、その全てを担う。倍率が他と段違いで高く、前年度は25倍との噂だ。
2つ目が『暗殺科』。隣人だろうが某国の総理大臣だろうが、依頼されれば必ず殺す。何でも試験が相当厳しいらしく、入学者がいない年もあったそうだ。
そして、3つ目。存在自体がもはや都市伝説とされており、学園の生徒ですら誰がその科を専攻しているのか知らない。入学者、倍率の全てが不明な科。
ーおっと、あまりのんびりする時間はなさそうだ。ここはやはり正面突破がよさそうだ。
急がないと入学試験に遅刻してしまう。