マゾヒスティック・ピュア
抱きしめてほしい。
私の事が大好きで大好きで愛おしくて可愛くて、
もう強く抱きしめずにはいられないっ、
みたいに。
ただただ私の存在を、私という塊を好いてほしい。
タイプの顔だとか胸がでかいとか、ヤれそうとか、
そんなんじゃなくて。
そんな素敵な誰かに抱きしめて欲しい。
小さい頃はただ純粋にそれを願っていた。
思春期、次から次に出会う男達が私を変えていく。
私の底をえぐっていく。6人目が泉を掘りあてる。
そこから願いの真逆を求める気持ちが溢れ出す。
願いさえ純粋さを失ったのは大人になったからなのか。
私の中で私が分離する。
願いを叶えてくれそうなのは、必要以上に下心を隠したりしながら
私を心配したり励ましてくれる優しい男達。
顔も良かったりすると、あぁ求めていた愛情っぽい、とか思う。
でも私の泉は満足しない。
私の底の私は何も感じてない。
優しい男に抱かれても、芯まで何も響かない。
体の軸をねじ曲げながら登ってくる、
あのねっとりとした快感は得られない。
返信を待つ長い毎日。
会うと囁く甘い言葉。
私で汚れを拭うかのように全ての欲望を塗りつける男。
内側から私を侵食するその気持ちのいい絶望感は
支配される幸せに恍惚となった私を泉に沈めていく。
そして私はまた連絡のない日々をもがく。
もがき疲れ、
あの時感じた幸せは幻なのだと自分に言い聞かせ始めた頃、
男達はまた私の携帯を鳴らす。
私は、
求めるものを決して与えてくれない男を求めている。
私は、
そういう男達がたまらなく好きだ。
それは刺激を欲しているのか、
一時の幸せの方が、常在の幸せに勝るのか。
そしてそれを求めているのは私の体か、心か。
あの絶望感の中で果て続けたら、私はいつか死ねるんじゃないかと考える。
好きな男に殺してもらえたら…
全てを支配してもらえたら…
私の全てを終わらせてくれたら…
そんな快感を想像し鳥肌を立てる。
私は今日も日課を繰り返す。
返信のないメッセージを開いて、幸せを予感する。