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アルカナ・サーガ  作者: いしか よしみ
第1章 幼少期
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錬金と魔導

 朝の日課が終わったので、昨日約束したもう一つの誕生日プレゼントの件で爺ちゃんと家の隣にある倉庫へ向かった。

 倉庫にプレゼントがあるんだろうか。

 俺の記憶が確かなら倉庫はそんなに広くなく、中は農具やじゃがいも等の保存が効く野菜、あとは使わなくなった家具や雑貨ぐらいしか無いのでプレゼントといえる物はなかったはずだ。

 そう考えていると倉庫に到着した。

 爺ちゃん連れられて、一緒に中に入った倉庫は相変わらず埃っぽかった。


 「ユウ、右奥に何もないスペースが在るのが分かるか?」


 右奥に不思議な位何もないスペースがある。

 スペースの両取りには家具が乱雑と積まれていたが、なぜかそのスペースには何も無かった。

 言われるまで、俺はスペースの存在に気が付かなかったほどだ。


 「そこには、人払いと姿隠しの結界を張っているんだよ。強力な結界だから誰も……ローザでも気にしなかったんだよ。どれ、解除するとしようか」


 爺ちゃんは呪文を唱える。

 すると霧が晴れたようにスペースの地面から地下への階段が姿を表した。

 木造の倉庫に似合わない石で出来た階段だった。


 「お前のプレゼントは、地下にある部屋すべてだ。どれ行くか、案内するぞ」


 地下に入るとドアが左右と前面にそれぞれある。


 「ここはな、わしが若い頃に使っていた研究室兼倉庫だ。左右のドアが文献や資料等の保管庫とわしが見つけてきた魔道具やガラクタを入れてる倉庫、正面のドアは研究室になってる。どれ、まずは研究室からだな」


 前面のドアを開けると大きく頑丈そうなテーブル、それと床には山の様に積み重なった本や資料があった。すべてに誇りが厚く積もっていた。


 「まぁ、大掃除が必要にはなるな。ここにあるのは好き勝手に使っても構わない。わしにとってはもう必要無い部屋だしな。もし、捨てるものがあれば、かならず燃やすかこなごなにすること。これは絶対だ、よいなユウ」

 「分かったよ、爺ちゃん。要はそのまま捨てるなって事だね」


 爺ちゃんは、頷きつつ残りの部屋を案内してくれた。

 文献や資料の保管庫に入ると、そこには壁一面に本棚が備えられていた。

 単純に千冊……いや二、三千冊はあるか。

 埃を被っている為、タイトルが見えないものもあるが、戦術書、魔術教本、魔術の考察本、歴史書、家庭菜園の本、何とか物語等の小説等いろんな本があるんだな。

 ざっと見回すと聞きなれないタイトルがあった。


 『錬金学』。


 聞きなれない学問書だな。


 「爺ちゃん、錬金学って何。あんまり聞かない学問だね」

 「錬金学か……そうだな。一般的には錬金術といい、簡単に言ってしまうと、何でも解析して、何でも作ってしまおうという思想で始まった学問だな。そして最終目標は不老不死の研究だったはずだ」


 爺ちゃんの話によると、最近では、金属加工の研究や魔道具の解析、ポーション等の薬の研究等といったそれぞれの専門に派生したようだ。

 

 「そうだ、ユウ、錬金学を学べと言わんが何かの学者を目指すのもいいな。この部屋もお前の勉強に使って貰おうと思ってプレゼントするんだしな」


 錬金術面白そうだな。

 何の研究をするかにもよるだろうが、勉強して損はないだろう。

 それにこんなに本があるんだから、色んな事が覚えられそうだ。


 「ありがとう、爺ちゃん。将来何になるか分からないけど、頑張るよ」


 他の本も見ていく。

 うん? 六冊位、妙に前に突き出ている箇所がある。

 気になり本を取ってみると、奥に一冊の本があった。

 中をめくると……


 「爺ちゃん、文字と一緒に裸の女の人が書かれてるんだけど……」

 「おっと!それはまだユウには早いな。これは処分しておこう。他にも無いか調べるからお前はもう一つの倉庫を見ておいてくれ。さあさあ」


 爺ちゃんに、素早く本を奪われ、背中を押され部屋を出された。

 仕方ないので最後になった『魔道具やガラクタの部屋』に入ってみた。

 見渡すと無造作に色んな道具が放り込んであった。ホントにガラクタだったんだろうな。

 ここは、おいおい整理していこう。

 そうして部屋を出ようとして反転した時、部屋の入口付近に凝った彫刻の金属箱があるのに気が付いた。


 「何だ、この金属箱? 鍵は……かかってないみたいだな」


 金属箱を開けると中には、拳銃タイプの銃が入っていた。

 フランツさんと一緒に整備していた銃と違う部分があり、それは銃身、シリンダー、引き金、グリップといった通常の拳銃タイプと同じ様な形状していたが、銃身とシリンダーが通常より一回り大きかった。

 そして銃身には羽を割ったようなような彫刻がされていた。


 「この彫刻は何処かで見た気がするな。何処だろ、母さんの本できたかな?」


 考えながらグリップを握るとなぜかしっくりくる。

 何故だ? 初めて触れた気がしない。

 このタイプの銃を整備しなれているからしっくりくるのかか?

 考えても答えは出なかったので、次にシリンダーに収められている弾薬も確認してみる。

 銃身やシリンダーが大きかったのは、弾薬が通常より大きかったからだったようだ。

 弾薬も通常だと弾丸部分は金属のはずだが、分からないけど何か違うものが埋め込まれてるようだ。


 「ほう、それに興味があるのか?」


 爺ちゃんが入口のドア越しに顔を出して話しかけてきた。


 「うん。なんかさ、グリップを握るとしっくり来るんだよ。初めて持った気がしないんだよね」

 「そいつは『魔導銃』と言ってな。先史文明時代に造られた銃だよ」


 先史文明時代?

 確か前に母さんが教えてくれた気がすな。

 先史文明時代は何千年も昔の文明時代の事だ。


 「先史文明とは大昔に滅んだ文明だな。その文明は高度な技術を持っていて『魔導技術』と呼ばれてる。遺跡で発見できた魔導の遺物を何とか一部部分を解析出来た結果、今の魔道具が誕生したんだ。ちなみに『魔導銃』も解析出来なかった遺物の一つで、今の銃は形を真似して作られたものだ」


 俺は、解析出来なかったと聞いて落胆してしまった。

 世界の学者が解析出来ないとは、よほど高度な文明だったんだな。


 「それじゃ、この銃は使えないの?」

 「動作の仕組みは予測されている。おそらく、弾丸ではなく魔法、もしくはそれに類似するなにかを放つ銃だそうだ。その弾薬に何かの方法で魔法を閉じ込めるんだそうだ。わしも専門家では無いから詳しく説明出来なくてすまんな」


 魔法を放つ銃『魔導銃』。

 魔法が使えない俺としてはぜひ解析して欲しかったものだな。

 いや、それなら自分も勉強して解析に力を入れてみても良いではないか。

 特に将来何になるとかの目標も無いし。


 「その『魔導銃』が気に入ったんだったら、ユウにやるぞ。もっともインテリアとして飾ったりするアンティーク物にしかならないがな」

 「爺ちゃん、貰っていいの?」


 爺ちゃんは頷き、俺の前に人差し指を立てた。


 「ただ、盗難には気をつけろ。わしは別段価値を見いだせなかったからガラク……倉庫に放り込んでいたが、発見された『魔導銃』自体の数が少ないから高値で取引されちまうからな」

 「ありがとう。盗難にも気をつけるよ」


 爺ちゃんの入念なチェックが終わり、倉庫を後にする。


 「これで三つの部屋の案内は終わりだ。学校行かない分、時間はある。いろいろ勉強するんだな。もし何か必要な物があったら、わしに手紙をよこせ。力になるぞ」


 俺は、今日『魔導銃』に興味を持つと同時に、『魔導技術』の研究をする事を新たな目標の一つにした。


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