それは、そこには存在できない。
メジャー作品ではあるのだけれど、例えば「とある魔術の禁書目録」の前半の巻に於いて、『学園都市上空の静止衛星"ツリーダイアグラム"』が非常に重要な役割を持たされている。
「とある魔術の禁書目録」自体は、全巻通して面白く読ませてもらった。
だけど、この『学園都市上空の静止衛星』というのがどうにもよろしくない。
学園都市は日本に有ることになっているので、"ツリーダイアグラム"は日本の上空に有ることになる。
でもね?
例えば、『東京上空の静止衛星』ってのはあり得ないんだな。
なぜなら、特定の衛星軌道を含む平面ってのは必ず地球の中心を通るから。
恥ずかしながら、笹本祐一氏の[宇宙へのパスポート]シリーズ(既に絶版)で
「静止衛星は赤道上にしか存在できない」
という記述を目にするまで164kも気付いてませんでした。
言われてみればその通りで、確かに「地軸と垂直な軌道平面」は「赤道上にしか存在しない」。
なぜ軌道平面が必ず地球の中心を通るのかは、非常にざっくりとした説明をすると衛星ってのは「落下し続けているもの」だから。
どこへ向かって落ちているのかと言えば、これはもう地球の中心以外にはあり得ない。
進行方向に向かって十分な速度があるから、落下軌道の描く放物線のカーブが地球の外周よりも大きくなってるだけなんだね。
「とある魔術の禁書目録」において、学園都市は一応科学サイドってことになっているけれど、多分に魔術的な要素も見られるから純粋に物理的な要素以外の方法でもって学園都市上空に静止していた可能性も否定はできないのだけれども。
果たして作者やアニメのスタッフはわかっていてやったのかどうか?
ともあれ、「舞台装置の扱いには気をつけよう」というお話でした。