死にたい、でも死ねない
ホラーって感じしませんがご了承ください。
今、俺は高層ビルの屋上にいる。恋人を失って、死のうと思ってからもう一時間も経った。ここから落ちれば死ねるのに、とてつもなく怖い。『死』が怖い訳じゃない。誰にも、悲しんでもらえないのが怖い。
―――早く飛び降りちゃいなよ。
どこからともなく聞こえる声。不思議だけど、俺の頭は疑問を感じない。
―――早く飛び降りようよ。楽に死ねるよ。死んだら楽だよ。
その声はだんだん激しくなっていく。俺は洗脳されたように柵に足をかけた。でも、やっぱり迷ってしまう。
―――早くおいでよ。
俺は、そのまま飛び降りようとしたが…怖い。
ドンッ
俺は気付いたらどんどん落ちている。声も俺の近くで聞こえる。
―――あたしと同じような気持ちを味わって。君のせいで死んだんだから。
俺は、ハッと気付いた。声の主は俺の恋人だったんだって。俺に会いに来る途中に事故にあった彼女。だから、俺を恨んでる―?俺を殺したい?ゴメン。俺たちは出会わなければよかった。会わなければ彼女は死ぬことなんてなかった。
そして俺は地面に叩きつけられた。やっと死ねるんだ。俺はそのとき静かに泣いていた。
目を開けると白い部屋。ここは?死後の世界?
―――違うよ。ここは病院だよ。
病院?何で?あんな高いところから落ちたのに生きてるのか?
―――君をあたしが助けたんだよ。
助けたって…
―――痛いでしょ。辛いでしょ?あたしも痛かったんだよ。同じ気持ち味わってっていったでしょ。
そうか、俺を殺したいじゃなくて痛めつけたいんだ。痛い思いをして苦しめってことなんだ。ゴメン。そんなことしか言えない自分がたまらなく嫌だった。落ちた時泣いたのも、自分の為なんだ。でも、もう、痛みはわかったんだ。
―――君はもう死ねないよ。
頭に響く声はすっと無くなった。
それから俺はまた死にたいという衝動にかられていた。今度は迷いなんか無かった。
ヒョイっと柵を超え、死の世界に直進―。
目覚めるとまた白い部屋。ということはまた病院。
―――言ったはずだよ。君はもう死ねないって。
俺は今も彼女に悩まされている。何故か急に死にたくなって飛び降りる。でも、俺は死ねない。俺の身体に激痛を残して、まだ生きる。