表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚に巻き込まれた料理人は、辺境で静かに暮らしたい  作者: 月代


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/13

世界を知る

王宮を出ると、そこは活気に満ちた城下町だった。


 石畳の大通りに沿って商店が軒を連ね、様々な人種──尖った耳のエルフらしき者や、小柄なドワーフらしき者もいる──が行き交っている。


 まずは自分のスキルを正確に把握しなければ。


 人気のない路地に入り、意識を集中させて『鑑定』を自分自身に向けた。


 すると、視界に透明な窓のようなものが現れた。


-----


**【朝比奈 蓮】**

**種族:** 異界人

**レベル:** 1


**<スキル>**


**【五穀豊穣】** ランク:EX(規格外)

どんな土地にどんな種や苗を植えても3時間で作物が育つ。野菜の切れ端や皮を植えても同様に成長する。育った作物には栽培者のレベルに応じた効能が付与される。レベルは作物を植えて収穫するたびに上昇する。


**【空間収納】** ランク:EX(規格外)

時間停止型の亜空間を所持。容量無制限。言葉一つで収納・取り出しが可能。通常の空間収納は容量に上限があり、内部でも時間が経過するが、このスキルにはその制約がない。


**【鑑定】** ランク:EX(規格外)

対象のあらゆる情報を詳細に把握できる。通常の鑑定魔法ではスキル名と簡易な情報しか判明しないが、このスキルは効果の詳細・隠された性質・数値情報まで完全に解析する。


**【生活魔法】** ランク:EX(規格外)

火・水・風・土の基本元素を自在に操り、生活に必要なあらゆるものを創造・操作できる。調理器具の生成、住居の建築、衣類の洗濯・乾燥、家具の製作など、生活基盤に関わるすべてを魔法で実現可能。


-----


 全部──EXランク。


 料理人の手が震えた。これが普通ではないことくらい、召喚されて数時間の俺にもわかる。


 聖女の鑑定ではスキル名しか読み取れなかった。つまり、この詳細な情報は俺の『鑑定』だからこそ見えたものだ。


 試しに、通りすがりの冒険者風の男にこっそり鑑定をかけてみた。


-----


**【ガルド】**

**種族:** 人族

**レベル:** 28

**職業:** 冒険者(Cランク)


**<スキル>**


**【剣術】** ランク:C

片手剣の基本的な技術。斬撃の威力と速度にわずかな補正。


**【身体強化】** ランク:D

身体能力を一時的に底上げする。効果は控えめ。


-----


 やはり。一般的な冒険者のスキルランクはCやDが当たり前で、Bですら珍しい部類らしい。それが全スキルEXなど──。


「……これは、隠すしかないな」


 俺は小さく呟いた。


 目立てば厄介事に巻き込まれる。それは孤児院時代に嫌というほど学んだ処世術だ。施設の外から来る大人たちの中には、善意の皮を被った悪意を持つ者もいた。自分の価値を正しく隠すことは、身を守る術でもある。


 方針は決まった。このスキルのことは誰にも言わない。できるだけ目立たず、静かに暮らしていく。


 それから俺は城下町の市場を回った。


 まず調味料だ。料理人として、これだけは妥協できない。塩、胡椒、数種類の香辛料、そしてこの世界独自の調味料をいくつか。支度金のかなりの部分を使ったが、後悔はない。


 次に、果物と野菜を買った。食べるためだけではない。果物の種、野菜のヘタや根元の部分──普通なら捨てるような端くれを、丁寧に取り分けて空間収納に仕舞っていく。


 五穀豊穣があれば、この端くれから作物が育つ。種も苗も必要ない。買った野菜を食べて、残りを植えれば、無限に食材が手に入る。


 りんごを齧りながら歩く。甘酸っぱい果汁が口に広がる。この世界のりんごは日本のものより少し小ぶりだが、味は悪くない。芯に残った種を五粒、丁寧に取り出して収納した。


 市場で情報収集も怠らなかった。商人たちとの会話から、この世界の地理がおおよそ把握できた。


 王都から東へ街道を十日ほど行くと、もう人の営みが途絶える辺境の地がある。魔物は少なく、ただ何もない荒野が広がっているだけ。肥沃でもなく、資源もなく、誰も統治していない土地。開拓する価値すらないと見なされた場所。


 俺にとっては──理想の場所だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ