転生したら無職で追放されたけど、実はチートだったので、とりあえず、魔王というやつをこの目で確めて来ます
俺が世界を救ったとき、そこにはもう誰一人として生きてはいなかった
虚空を埋めるのは仲間の骸と、絶望的な静寂。
この地獄に生き残っている人間は、俺を含めてちょうど百人。そして今、俺以外の九十九人は、物言わぬ肉塊へと変わった。最強の魔王を前に、残されたのは無能と蔑まれた俺一人。だが、この男にはたった一つ、命と引き換えの秘奥義があった。
――絆の銀河連斬
発動条件は、あまりに皮肉だ。自分を含めた百人分の「幸福な記憶」を燃料とし、かつ、使用者が「最後の一人」になった時のみ発動する。
最後に逝った親友の言葉に毒づきながら、俺は魔王の胸に拳を叩き込む。
「……死ねってことかよ。先に逝っといて、あとは頼んだだぁ? ふざけんなよ……そもそも、人数が丁度じゃなけりゃ、世界はいくらでも救えたんだ。お前が強すぎんだよ魔王! 俺が一人になった時点で発動済みだ! 発動と共に拘束スキルもついてんだぜ、俺のスキルのせいで一言も話せず、ピクリとも動けねぇだろ。ザマァみろ」
衝撃が走ると同時に、魔王の時間は凍りついた。奴の周囲に、仲間と焚き火を囲んだ夜の光景が、最初の『剣』として生成される。
俺はその一本目を掴み、一閃。魔王の肉体を裂く。
すぐに次の『剣』が、正確な座標で、ここだと光を放つ。間髪入れずそれを掴み、再び一撃。
三本、十本、五十本。
配置を一つでも間違えれば、この絶対拘束の陣は完成しない。焦りで震えそうになる指先を無理やりねじ伏せ、次に生成されるべき思い出の『位置』を必死に脳裏に叩き込んだ。
反対側には、皆で馬鹿笑いした祭りの記憶が新たな『剣』として浮かび上がる。
三寸右、角度は四十五度……そこだ!
斬るたびに、失われたはずの『楽しかったプラスの思い出』が、残酷なほど鮮やかな銀河の輝きを放つ『剣』となって魔王を侵食していく。
九十九の絆を、狂いなく魔王の肉体に刻み終えた。全ての『剣』が魔王を包囲し、逃れられぬ死の檻を形成する。
そして百本目の『剣』——俺自身の魂を象徴する光の刃を魔王の心臓へ突き立てた。
百の記憶が奔流となり、愛する者たちの笑顔が魔王を飲み込み、その存在を完全に消滅させた。
光が収束し、静寂が戻る。
全身から力が抜け、俺は膝をついた。心臓の鼓動が、幕を閉じるようにゆっくりと止まっていく。
視界の端で、動かなくなった仲間たちの姿が見えた。俺一人が世界を救ったところで、もう誰も笑ってくれない。
薄れゆく意識の中、俺は皮肉を込めて、独り言をこぼした。
「これで世界を救えたか。……けどよ、俺が死んじまったら、世界も終わりじゃねぇか」
彼の前には、スキルウィンドウが開かれていた。
『絆の銀河連斬』
【概要】
孤独な状況下でのみ解放される秘奥義。対象を「幸福な記憶」の檻に閉じ込め、周囲の空間に具現化した『剣』で存在そのものを断つ、単独発動型の絶技。
【発動条件】
孤高の結界:対象との戦闘空間(魔王城の玉座の間など)において、使用者が「一人」であること。
記憶の蓄積:自分を含め、合計100人分の「心から幸福だと思えるプラスの記憶」を所持していること。
【特性と効果】
停止した永遠:
条件を満たした空間では、全行程が完了するまで時間は完全に凍結される。使用者はこの**「永遠の時」**の中で、どれほど時間をかけて思い出に涙しても、確実に技を完遂することが可能。対象に回避や防御の余地はない。
銀河の生成:
使用者が対象を殴りつけることで、その衝撃を起点として、対象を包囲する空間のあらゆる座標に、仲間との思い出を核とした『剣』が生成・浮遊する。
精密連斬:
使用者は生成された『剣』を一本ずつ手に取り、正確な位置、正確な角度で対象を斬りつけなければならない。一振りのたびに温かな記憶が奔流となり、対象の存在を内部から侵食・消滅させていく。
死の条件:
「生成された100本の『剣』すべてを、使用者自身の手で使い切り、対象を斬り裂くこと」。この全行程を一人で完遂した瞬間、使用者は魂のすべてを消費し、確実に絶命する。
完




