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青き碧の仲間たち  作者: 高階闇堂
中学生編
11/13

卒業式

あの合格発表の日から時は流れて、今日は海南中学の卒業式の日。

阿貴と秀人は青碧一本で無事に進路が決まり。

一樹は併願していた公立高校を落ちてしまい青碧に行く事になった。


それを知ったとき、

「お前、何で青碧受かっておいてそっちの方落ちるかな?」

と、呆れ半分に阿貴が言ったものだ。


だが、それに対する一樹の返答はといえば、

「お嬢と同じ学校に行けると思ったら、気が抜けたんだよ」

そのためにあの時は本気出したんだ、とも言った一樹に対し、

……寧ろそっちで本気出せよ。

と、秀人とともに言葉には出さずに突っ込んだものである。


そして卒業式本番は何事もなく無事に終って。

しかし。

海南中髄一の有名人である阿貴、一樹、秀人の三人にとってはある意味これからが本番となることに。

その理由は。

玄関口で待ち構えていた下級生に取り囲まれたからだ。


まず、秀人。

海南中のみならず近隣の高校にまでその名を知られるほど、腕っぷしで有名な男だ。

入学当時、目立っていた彼が上級生を一人叩きのめして以来、望みもしない形でその手の連中に目を付けられ、喧嘩を売られては勝ち続けてきた。

自分から仕掛けることはないが、売られた喧嘩は絶対に買う。

その積み重ねが、いつの間にか番長という肩書きを生んだわけだが、本人は正直、辟易している。

そして、現在彼を囲んでいる下級生も、そういう連中である。


対して一樹に対しては、圧倒的に女生徒が多い。

見た目だけなら三人の中でも一番顔立ちが整っており、女子受けするのも納得ではある。

が、その性格を小学校時代からよく知っている秀人や、

入学以来そのバカな振る舞いに振り回されてきた阿貴からすれば、

また違った感想が出るのも宜なるかな、ではあるが。


そして、阿貴のほうはといえば。

「先輩と同じ学校に行ったら、付き合ってください!」

「初めて見た時から好きでした」

「卒業記念に一度でいいからお願いします!(何)」

――こんな告白を受けていた。


それに対して阿貴は、ただ憮然としている。

なぜなら、こんなことを言っているのは、

全員が全員、男子生徒なのである。


小柄で童顔、女顔の三重苦(?)を背負った結果、

阿貴はいつの間にか海南のアイドルに祭り上げられていた。


(うちの連中は馬鹿ばっかりだ……)


阿貴はそう思いながら、嘆息するしかなかった。


そして。

やっと下級生から解放されたかと思えば、今度は同級生に以下同文。


そんな喧騒から解放されたのは教室を出てからすでに二時間が経過していて。

その家路にて。

「はぁ…寒い」

同級生下級生に学ランのボタンを全て奪い取られ厚手のコートの前を合わせながら。

元々寒さが苦手な阿貴が、1つため息をつく。

暦の上ではすでに春でも、ここは北国のこと、今だ身にしみる寒さはいかんともしがたく。

「そんなに寒いかぁ?…っと、寒いか。ったく、あいつら…」

秀人がぼやきながら阿貴同様に。

秀人も、一樹も状況は同じだ。

だが。

「これも有名人の宿命って奴だ。ま、いいんじゃねえの?」

3人の中で一樹だけが笑いながら言う。

ボタンを取られた相手が女の子ばかりだからだ。

「「お前はな」」

野郎どもに取られた2人が同時に突っ込む。


「まぁ…オレは、あいつらの気持ち、分かるぜ」

一樹はそう言うと、今だむくれている阿貴の背後に回りこみ、その頭越しに手を伸ばして、その華奢な身体を抱き寄せた。

「…一体何の真似だよ?」

憮然とした口調で問いかける阿貴。

それに一樹は笑いながら、

「寒いんだろ?暖めてやるよ、オレの腕の中で」

「………殺すぞ」

阿貴のこの寒空をもしのぐ冷気のこもった台詞にも一樹は平然として阿貴の耳元へ顔を寄せて、

「好きだぜ、お嬢」

と、甘く囁いた。

「…………………」

それに対する阿貴の答えは。

遠慮解釈なしのわき腹への肘鉄だった。


「本当に、お前ってバカだな」

一部始終傍観を決め込んでいた秀人が悶絶している一樹にあからさまなアホを見る目で言い放つ。

しかし、一樹は尚、

「あ…愛が…痛いぜ…お嬢」

それに対して阿貴はにべも無く、

「痛いのはお前だ、このばかずきっ!」


未だ悶絶する一樹を横目に、秀人が言い出す。

「お前…マジで寮に入るのか?」

「うん。前にも言ったろ」

阿貴は青碧を受験する時点で既に学園の寮に入ることを秀人や一樹には伝えていた。

青碧学園には、全国各地から生徒が集まるために、当然寮がある。

しかし、海南中は地元の碧市内。

寮に入らなければならないほど、家が遠いわけではない。

実際は、寮は現在の少子化の影響を受ける以前に作られたため、余り部屋も多く、申請すればほぼ確実に入れるのだが。


「でも、何でそんなにこだわってるんだ?」

一樹の当然の問いに、阿貴は少しの間があって一言。

「ちょっと…ね…」

と、だけ答えた。

「お嬢」

そこで一樹は阿貴の正面に回りこんで、言った。

「悪いことは言わねえ、やめとけよ」

「何でだよ?」

真剣な顔の、一樹の答えは。

「オレの可愛いお嬢が、男子寮になんて…飢えたオオカミの群れに餌を投げ込むような…」

「誰がお前のだ、このばかずきっ!!」

その台詞を最後まで言わせないうちに叩き込まれた正拳突きに目を白黒させる(線目なのでわからないが)一樹にさらにきつい一言を叩き込む阿貴。

そして、

(一瞬でも真面目に聞いた僕が馬鹿だった…)

心の中で思う。


「本当に、お前はアホだな」

やはり静観していた秀人が、一樹を見下ろして言う。

「まったく、こんなバカと高校まで一緒だなんて、同情するよ、秀」

「ありがとよ。この腐れ縁、どうやったら切れるんだろうな」

言いながら、二人はうっすらと感じている。

きっと、高校に入っても続くのだろう、と。


なお、至極どうでもいい話だが。

この日を迎えた校長はじめ教師陣の顔は、この三年間で見たこともなかったほど晴れ晴れと輝いていたらしい。

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